草原では、中学生くらいの女の子としばいぬにも会いました。
このしばいぬの家は、わたしの家から海の草原へ行く時に、古い道路を通っても、海岸道路を通っても、必ず顔を合わせることになる三角地にあります。
その三角の、先っぽの上に置かれた犬小屋に、鎖でつながれたしばいぬは、わたしたちが通りかかるといつでもうるさくしつこく、まるできちがいのように怒って吠えたてるのです。
あれだけ友好的なピピも、このしばいぬだけは、無視してさっさと通りすぎます。
わたしはしばいぬの大騒ぎをどうしても我慢できず、いらいらして顔をしかめてしまうのに、ピピのほうが、ずっと大人で悟ったような表情なのでした。
このしばいぬをつれ、中学生の女の子は時々草原へ散歩に出かけるようでした。
でも、草原で出会ってあいさつしても、女の子は細く白い顔をおくびょうにこわばらせ、ただ、まごつきました。
以前、引きづなから放れているピピを目にして怖がられたことがあったので、わたしは遠くにしばいぬと女の子の姿が見えたら、すぐにピピをつなぐようにしています。
それでも、女の子は草原の入り口をちょっと歩いただけで、あたふたと引き返してしまうのでした。
もしかしたら、しばいぬは、この女の子の気持ちや性格を敏感に受け取って、忠実に家族を守ろうと、けんめいに吠えているのかもしれませんね。