初夏の暑い日、ピピはわざわざ日向に寝そべり、気持ちよさそうにじりじりと焦げていました。
今年もめでたく「やきいもふうビーグル」になったピピの、あつあつほくほくの体を、わたしはなでます。
ピピは横腹を見せ、静かに寝ています。
というわけで、ここでピピのお肌を見てみましょうか。
横腹の、毛の流れの逆方向に、とてもゆっくりとなでていきますよ。
はい、ピピの皮膚はまっしろです。
それは、あおく透けているようにさえ見えます。
こんなに毎日、日差しの下を歩いたり、寝ころんだりしているのに、ピピの肌は、びっしりと生えた二重のコートに守られて、透明なほどに白いのです。
そして、このうつくしい、傷のないしろさは、その犬が健康だという印なのです。
ピピの健康を確認したら、次に、わたしは片方の手のひらで、丸いお椀をつくります。
そのお椀を、まぶたを閉じているピピの目の上に、ぽん、とかぶせます。
そして
ぱっ。
お椀をどけます。
ぽん、ぱっ。
ぽん、ぱっ。
ぽん、ぱっ・・
ピピは、じっと目を閉じたままです。
・・・ピピは今、まぶたの裏に、わたしたち人間のように、黒とあざやかな赤のくりかえしを見ているのでしょうか。
犬の目には、この世界の色はよく見えない、といわれます。
でも、ほんとうはどんなふうによく見えず、どんなふうに、わたしたちと違って見えているのでしょうか。