一月、十七日。
まだ朝が来ない、暗い夜明け前のことです。
ふとんの中で、わたしはかすかな揺れを感じました。
その揺れは
ぐらぐらぐらぐら ぐらぐらぐらぐら ぐらぐらぐらぐら・・
いつ終わるのだろう?
と思うくらい、とても奇妙に長かったのです。
わたしは再び眠りに落ち、いつもの時間に起きて、階段を降りました。
すると、居間のテレビが阪神の地震を告げていました。
阪神というのは、大阪や神戸のあたりで、うちからは何百キロも離れたところです。
その夜、テレビは燃えさかる神戸の街を映し出していました。
地震では、倒れてくる家具や潰れる家も恐いですが、ガス管や電線が壊れたり、ストーブが倒れたりして起きる火事も怖ろしいのです。
神戸の街は潰れ、燃える家々で火の海になっていました。
「ちょんちゃん、たいへんよ・・」
床に座り込んでテレビを見ていたわたしは、すぐ左どなりでおすわりしているピピに話しかけました。
ピピは、困ったような目をして、テレビから顔をそむけています。
わたしはその時、ピピのあたたかい頭やからだが無事に自分のすぐそばにあることをたしかめ、こんなふうに思いました。
わたしたちは、ここに、こうして平和にいる。
夕ごはんを食べて、ストーブのそばで、あたたかく並んでいる。
よかった。
わたしたちは、幸運だ・・・・。