ちっぽけなわたしが犬を呼ぶ | 4コマ漫画「アメリカは今日もアレだった」

4コマ漫画「アメリカは今日もアレだった」

アメリカ暮らし漫画と昔の日本での愛犬物語です。

「ピピー!!」
 坂道の、ちょうど真ん中あたりで、わたしはピピを呼びました。

 

でも、なんの返事もありません。

台地の斜面を見あげると、それは巨大なくろい壁となり、わたしの視界をふさいでそびえていました。 
わたしは突然、自分がそのくろい壁の底を這う、ちっぽけな虫に思えました。
そして、そのおおきな壁の上端からのぞくその先は、もっともっと果てしなく、くろい、くろい闇の夜空なのでした。

 


さらさらさらさらっ

くろい壁とは反対側の、下の旧道路を、ジョギングするらしい人影がよぎりました。


そして、そのあとすぐ
ちゃらちゃらちゃらっ
ちいさな爪音が、すばやくつづいたのです。

「ちびっ!!」
 わたしはまた、呼びました。

 

しーん。

「ふいっ!!」
 わたしは、へたくそな口笛を吹きました。
でも、あせっているので息が浅く、ぜんぜん遠くまで響かないのです。

「ピピッ!!」
 いっしょうけんめい、耳をすまします。

 

しいん。