マフラー引きとマフラー釣り | 4コマ漫画「アメリカは今日もアレだった」

4コマ漫画「アメリカは今日もアレだった」

アメリカ暮らし漫画と昔の日本での愛犬物語です。

 このような幾多の困難と努力のあと、わたしはようやく、マフラーの端っこをピピにつかまえさせます。
すると、ピピはいそいでマフラーを

がっぷり!!

口の奥までくわえなおし、「つぎなるたたかい」に備えます。


さあ、こんどは引っ張りあいです。

ピピは、四本の足を地面にくいこませるように

ぐいっ!! ぐいっ!!  

と後ずさります。

 

でも、体重が重いわたしはぜーんぜん、岩のように動きません。

それどころか、この大岩は、逆に、徐々に、冷酷に、マフラーをたぐり寄せていくのです。
高さ、重さ、力。
ちいさなピピは、圧倒的に不利なのです!!


それでも、ピピはがんばります。
だけども、わたしは非情な手を止めません。

ピピは少しずつ前足が浮き、斜めの縦長になっていきます。
その、斜めの縦長の、いちばん上のほうにある二つの目は、それぞれが四分の一くらいに小さくなります。

目をすぼめ、視覚を捨てるぶん、ピピは四肢と体幹

全力で、マフラー奪還にかかるのです。


 それでも、わたしは文字どおり動じません。
それどころか、マフラーごと、ピピを引きずりはじめます。

ずずずずっ・・ 

 

少しでも引きずられまいと抵抗するピピの、後ろ足の指が、いっぱいにひろがります。
ずずずずずっ ずずずずずっ

地面に、ピピの爪と肉球が「あきらめない犬」の栄誉を刻印します。
ピピは、がっぷりとマフラーをくわえたまま、「ぜったいに、はなさない」のです。

 

そこでわたしは
「ううーーーーっ」
 ピピに、うなってみせます。
「うぐーーーっ」
 ピピも、うなります。

とっても、おもしろいのです!!

 

 

 さて・・・・

食いついたら最後、雷が鳴るまで離さないらしいこの「すっぽん犬」を、どうするか。

わたしは、今度は慎重に、この斜め縦長のすっぽんが少しずつ垂直になるよう、持ち上げていきます。
それで、ピピは、今はすっぽんというか、魚のように釣りあがってきましたよ。

 

首も、からだも、今は今は魚というか鶴みたいに伸びて、さっきまで釣り上がり阻止のためギュッとにぎりしめていた後ろ指も地面の上で伸びて、つま先立ちになります。
この「ツルイヌつまさきだち」時点で、ピピはようやく、マフラーに突きたてた歯をはずしにかかるのでした。