「それにしても運がわるい」
お医者は、言いました。
これは八月の子宮蓄膿症にうちつづく、ピピの災難のことなのです。
欲張りなピピ。
ピピは、病気という病気に、ぜんぶ手をつけてみるつもりなのでしょうか?
ピピはまるで、そのたっぷりした顔のカバンに
せっせ せっせ せっせ!!
と病気を詰めこんででもいるようです・・・
でも、これはピピのせいではありません。
ピピは元気に生まれ、あかるい性質でちゃんと育ちました。
そのピピの強さに甘え、きつい薬の注射を打ち、副作用で病気にさせ、ピピから子宮をとりあげたのは、わたしです。
その手術のあと、すぐにピピを水場の山へつれていって遊ばせたのは、わたしの母です。
今年の暑い暑い厳しい夏も、水場の山に特別なダニがいるのも、ピピのせいでは、けっしてないのです。
月曜日の夕方、わたしはピピを外へつれだしました。
病院へいく前に、おしっこをさせておかなければなりません。
ピピは気持ちだけはしゃぐのか、いそいそと道を進んでいきます。
「・・・ピピきー。早くおしっこをして、病院へいこう」
わたしが止めようとしても、ピピは
どんどん どんどん
家から遠くへ歩いていきます。
でも、そのうち急に道の真ん中でからだを投げ出し、じっと横たわってしまいました。
しばらくすると、ピピは立ち上がって進みます。
そしてまた、とつぜん横になります。
学校帰りの女子中学生たちが、自転車に乗って通りすぎます。
わたしは横たわったピピのそばで、心細く突っ立っています。
あたりはだんだん、灰色に暗くなっていきます・・
とうとう、わたしはむりやりピピの方向を変えて、車に乗せ、病院へ向かいました。