第八章 六月・黄金の時間
六月一日、白い橋の下の広場でのことです。
わたしとピピは通行止めの柵をすりぬけて進み、途中まではきれいに舗装されているけれどそのあとは尖った小石がごろごろころがる場所を、ぶらぶら歩いていました。
ここをもっと進むと、コンクリートの区画。
そしてその向こうは、もう海なのです。
海を右側に見ながら、橋を支える恐竜のような脚もとへ行くと、陰になった暗い地面に、排水溝のふたの白いセメントがならんでいます。
そこを渡り、恐竜のおなかを見上げながらくぐりぬけたら、先にはもっと広やかな空き地がひろがっていました。
その空き地で、わたしたちは小さなオレンジいろのヒトデを見つけたのです。
「・・釣りのひとが引き上げて、ここに捨てたみたいだね・・」
ヒトデは長いあいだ太陽にさらされ、からからに干上がっていました。
ピピが、そのヒトデにそっと鼻をちかづけます。
くんくん、くん・・・・
と思うと
「とうぜん」
というふうに、あっという間に口にくわえました。
(あっ!?)
「むしゃむしゃむしゃむしゃ!!」
(あっ?!! ああっ・・!!!)
ピピのその、あまりにも自然で素早く、なめらかにして豪快な動き。
わたしはもはや間に合わない制止の言葉さえ発せられず、ピピの上下に動くうしろ頭を、ただただ呆然と見つめていたのです。