けれど、ある雨の日のことです。
ピピはわたしと出かけました。
わたしは傘をさしていますが、ピピは手ぶらです。
どしゃぶりではないけれど、手加減せず休みなく、雨はふりつづけます。
わたしたちは、家の脇を流れる水路ぞいの細道を通り、海岸道路へあがりました。
(ぱしぱしぱしぱし ぱしぱしぱしぱし)
雨は、速い音符のようにふりつづけます。
わたしは、前を行くピピの、小さなまるい背中をあやぶみながら進みました。
黒い、みじかい毛の背中に、つめたい水がふりかかっています。
水はしみこみ、ピピのせなかも、顔も耳も、したたかに濡れつづけているでしょう。
10メートルもすすんだところで、ピピのスピードが、急にのろくなりました。
「ちょんちゃん、帰る?」
わたしの声を合図にしたように、わたしたちは、ぴたりとその場に止まりました。
ピピは数瞬間、考えたようです。
そして
(くるり!!)
と反転すると、すたすた家へ向かいました。
この時から、ピピは雨の日に暴れるのをやめました。
寝箱にはいり、ひたすらねむりつづける方針に変えたのです。