ローリング・ストーンズの新譜に寄せて


ストーンズの18年ぶりの新譜「Hackney Diamonds(ハックニー・ダイアモンズ)」、到着前に全曲YouTubeで聴くことができたので、その感想と復習を書いてみる。


まず歴史を振り返ってみると、ストーンズはギタリストとベーシストのメンバー交代によって以下のように4期に分かれると個人的に考えている。


ちなみに6人目のストーンズと言われたピアノのイアン・スチュワートや同じくピアノで貢献したニッキー・ホプキンズ、サックスのボビー・キーズらも1、2期の主要メンバーだ。



●1期 ブライアン・ジョーンズ時代

1962年より8年間


『ザ・ローリング・ストーンズ / イングランズ・ニューエスト・ヒット・メーカーズ』(1964年)

『12×5』(1964年)

『ザ・ローリング・ストーンズ No.2 / ザ・ローリング・ストーンズ・ナウ!』(1965年)

『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』(1965年)

『ディッセンバーズ・チルドレン』(1965年)

『アフターマス』(1966年)

『ビトウィーン・ザ・バトンズ』(1967年)

『サタニック・マジェスティーズ』(1967年)

『ベガーズ・バンケット』(1968年)


●2期 ミック・テイラー時代

1969年より6年間


『レット・イット・ブリード』(1969年)

『スティッキー・フィンガーズ』(1971年)

『メイン・ストリートのならず者』(1972年)

『山羊の頭のスープ』(1973年)

『イッツ・オンリー・ロックン・ロール』(1974年)


●3期 ロン・ウッド時代

1975年より現在まで(48年間)


『ブラック・アンド・ブルー』(1976年)

『女たち』(1978年)

『エモーショナル・レスキュー』(1980年)

『刺青の男』(1981年)

『アンダーカヴァー』(1983年)

『ダーティ・ワーク』(1986年)

『スティール・ホイールズ』(1989年)


●4期 ダリル・ジョーンズ時代

1994年より現在まで(29年間)


『ヴードゥー・ラウンジ』(1994年)

『ブリッジズ・トゥ・バビロン』(1997年)

『ア・ビガー・バン』(2005年)

『ブルー&ロンサム』(2016年)企画盤

『ハックニー・ダイアモンズ』(2023年)


さて、ハックニー・ダイアモンズではドラムは主にスティーブ・ジョーダンが叩いているが、亡くなったチャーリー・ワッツもアルバムの後半で2曲、最後の録音を残した。嬉しいことに内1曲「Live by the Sword」のベースはビル・ワイマンが復活している。オリジナルのリズム隊の最後のプレイだ。


ちなみに新譜が届いたので確認したら、本作のベースはダリル・ジョーンズではなく、プロデューサーでもある33歳のAndrew Wattでした。ロンとキースもベースを弾いているので、どの曲が誰かを考えるのも楽しい。というわけで、ダリル期も終わったのでしょうかね?


さて、1981年の「Tattoo You」の収録曲「Start Me Up」はストーンズとしてメジャーなヒット曲となったが、ハックニー・ダイアモンズでシングルカットされた「Angry」はその路線にあるのだろう。2023年秋の日本のテレビドラマ「うちの弁護士は手がかかる」のテーマ曲にも採用されている。


ハックニー・ダイアモンズの前半(アナログ盤のA面?)は3、4期の流れである「Angry」のようなメジャー路線、後半(B面?)は1、2期の頃の昔のストーンズを知る人向けに構成されていると推察している。


惜しむらくはミック・テイラーが不参加だったことだ。ストーンズのライブではゲストで登場しているので、絶縁状態ではないのだから、もしかしてストーンズ最後になるかもしれない本盤で弾いて欲しかった。


また全12曲のラストがMuddy Waters の「Rolling Stone Blues」。最後に原点とも言える曲か、感慨深い。ストーンズは元々イギリスのブルースバンドであった。つまり当時はイギリス人がアメリカ黒人の音楽をコピーして演奏していたわけだ。これはストーンズに限らないが、ビートルズもクラプトンもツェッペリンもプログレも、、、ネイティブな音楽ではなく、ハイブリッドな音楽だからこそ、ブリティッシュ・インベイジョンは、ワールドワイドに展開できたのではないかと思っている。


ちなみにタイトルの「Hackney Diamonds」はロンドンの貧困地区で生まれ育ったスターたちという意味だと思っている。