また一曲、名曲が誕生しました・・・。
■魅力的なミュージックビデオ
ネギッコ関連の楽曲ではMVにハズレ無し!が私の持論でしたが、この楽曲のMVも大変素晴らしい仕上がりとなっていました。
場末の昭和感たっぷりなロケーションはノスタルジーに溢れていて、とても曲調と合っています。色褪せたフィルムのような質感も、また「懐かしさ」を感じさせる要因なのでしょう。昼間の行楽地であるはずなのに他に誰も人がいないという演出は、非現実的な感覚さえも味あわせてくれます。とても想像力を掻き立てられます。
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人類が死に絶えて早数年。
一人だけ生き残ったKaedeは店先の三輪車に載せた大きなゴリラの縫いぐるみだけを相棒に、これまで通りの生活を繰り返しながら、いつか現れるであろう誰かを待ち今日も平凡な一日を過ごしていた。店先で朝日を浴びながら読書をし、ラムネを飲んだ後は店内の清掃を済ませる。その後は日が暮れるまで湖の景色を見ながら只ボンヤリするだけ。
これが彼女の1日の行動の全てであった。他に何も望んではいない。いつかきっと。どこかの誰かが彼女の前に現れ「ただいま」という言葉を投げかけてくれる事だけを只ひたすらに信じて・・・。
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なんて妄想をしてしまいました。絶対そんな設定じゃないです(笑)。
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物憂げな表情でボンヤリと湖を眺めるKaedeさんはとても絵になります。
湖をバックに横を向いて何かを見つめるシーンは逆光で暗く映っているにも関わらず、その表情の美しさにドキッとさせられました。何と言うか、絵が詩的なんです。色々と想像力を刺激され、観ている人の感情に深く刻まれる感覚。とでも言いましょうか。
だから、何度見ても飽きないのだと思います。飽きないどころか毎回魅せられてしまう。何度見ても「すごく良い!」という感想しか出てきません。
私、大好きです。このMV。
■ミュージックビデオのロケ地
MVのロケ地ですが、開始2ショット目の静止画で映し出される建物の『SHINKO BOAT』という名前で簡単に検索できました。
相模湖にあるボート乗り場を舞台にしたMVのようです。『SHINKO BOAT』をネットで調べると正式には『振興ボート』となっていて、つづりも『SHINKOU BOAT』となっていますが場所はココで間違いありません。
ストリートビューで確認するとMVに出てきた『SHINKO BOAT』の建物も簡単に見つかりました。オープニングで映し出される数々の雰囲気ある景色も、相模湖ボート乗り場前の街並みでした。残念ながらストリートビューでは提灯はぶら下がっていませんでしたが・・・。
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Kaedeさんが椅子に座わりラムネを飲んでいた店先も確認できました。MVでは結構大きな店構えに見えますが、ストリートビューで確認するとかなり小じんまりとした店舗のようです。店内のボールゲームのシーンは、このお店での撮影ではないかも知れません。
MVのロケ地巡りが楽しみになってきました。今行けば、MVの世界観そのままの景色が広がっています。あのノスタルジー感満載な感覚を直接体験することができるのです。いずれこの世界観は崩れます。行きたい時に行くが「吉」です。
私は予定が合えば早い時期に行ってみたいです。行って何をする訳でもありませんが、その場でピンボールゲームをするも良し、遊覧船に揺られボンヤリするのも良し。多分、現地で写真を撮りまくるだけでしょうけど(笑)。でも、それが楽しいんです。ロケ地ハンターのサガという奴です。我ながら相当な変わり者ですね(笑)。
でも、案外人気場所になってたりするかも。ジャケ写にも映っているKaedeさんの座っていたピンボール機なんて競争率が高かったりするかも知れません。
■意外性を感じた作家陣
最初にMVを見た時、意味も分からず泣きそうになりました。
トライセラトップスと言うと、デビュー当時に「渋谷で人気に火が付いた」と話題になっていた事は良く憶えています。後は、いくつかのヒット曲を知っている程度なのですが、格好いいロックバンドというイメージはありました。
最近の話題だと確か女優の上野樹里さんと結婚した方というイメージが強く、音楽よりもそういう芸能ニュース的な印象が強く残っていました。
そのトライセラトップスの和田さんが『ただいまの魔法』の作詞・作曲・編曲をしている、というのは大変な驚きでした。まさかこれ程のナイーブなポップソングを書く人だったなんて・・・と。今更ですが、才能の奥深さには改めて感服致しました。
この楽曲であればネギッコのプロデューサーであるコニー氏の作品だと言われても全く違和感感じないと思いました。それ程意外でした。
とにかく驚きました。
■「せつない」系ポップソング
「せつない」感じは私の好きな音楽の要素でもあります。これまでにも「せつない」というキーワードでブログを書いた事もありました。
その「せつない」感じをココまで感じさせる楽曲というのも相当珍しいと思います。曲の構成は凝っていますが、アレンジが朴訥としているのであまり驚きはありません。むしろ要所要所で気持ちを盛り上げる為の仕掛けとして、しっかり機能している印象を受けます。時折入ってくるコーラスやハーモニーも効果的で、聴いていてとても胸が締め付けられます。聴いている人の感情をフルに刺激してくるような、そんな感覚を味わうことができます。
歌詞はKaedeさん視点で書かれているようで、とても説得力がありました。Kaedeさんが書いた詩と言われても納得しちゃう人が多いのではないでしょうか?(私だけ?)。
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MVを見ながら曲を聴いていると、歌詞が読みたいと思うようになりました。そう思っていると、YOUTUBEのコメント欄に歌詞を書き込んでくれた方がいて、以降はもっぱら歌詞を追いながら楽曲を聴くようになりました。この聴き方って以前記事に書いた『CECIL』と同じなんですよね。『CECIL』も歌詞の魅力に引き付けられて楽曲を聴くときは歌詞を追いながら聴くようになっていました。
『ただいまの魔法』も歌詞を追いながら聴くと、より一層魅力の増す気がします。気持ちの切実さがKaedeさんの歌声を通して耳から届くだけでなく、文章を通しても目から刺激される感じです。
ただ、曲の雰囲気を決定づけているのはKaedeさんの歌声で間違いないと思います。トライセラトップスの和田さんは最初から歌声を活かす事を考え楽曲制作を行ったのでしょうか?。もちろん、最初からKaedeさんへの楽曲提供と分かっているので歌声を気にするのは当然ですが、でもこれ程までに歌声メインで制作されたとしか思えない楽曲を聴いてしまうと、その制作過程がとても気になります。
私にとって『ただいまの魔法』は「せつない」系ポップソングの名曲という位置づけです。今のところ今年度ナンバーワンは間違いなく、もしかすると人生のTOP10曲に入れちゃうかも知れない程の存在になっています。
■聞き惚れたKaedeさんの歌声
そのKaedeさんの歌声ですが、とても曲調にマッチして素晴らしかった。
これまでもネギッコに関しては私は歌声が好きだと公言していましたが、それは個性があってその個性が活かされていることに大きな魅力を感じていたからでした。そういう意味ではKaedeさんの歌声は、どちらかと言うと縁の下の力持ち的なイメージがありました。勝手なイメージで申し訳ありません・・・。
しかし『ただいまの魔法』を聴き、Kaedeさんの歌声のイメージは完全に変わりました。気張らず力まない歌い方はウィスパー系ヴォーカルにも通ずる「気だるい」印象を受けますが、Kaedeさんの歌声にはもっと芯を感じます。そして、憂いに通じる艶っぽさを感じます。この艶っぽさが思いのほか気持ちの強さを聴き手に訴えかける大きな要因のように思います。
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もし、この楽曲をネギッコの他の二人が歌ったらどうなっただろう?。なんて想像します。
NAOさんの歌声はフワフワした浮遊感ある楽曲に合うイメージです。MEGUさんの歌声はもっとガーリーチックで元気一杯な楽曲に良く合うイメージで、二人ともこの『ただいまの魔法』の曲調とはイメージが少し異なります(個人的な感想です)。二人の歌声がこの楽曲のメロディーを奏でていれば、聴いた印象は随分と異なっていたのではないか?と思うのです。
『ただいまの魔法』はKaedeさんの歌声だからこそ完成された感をヒシヒシと感じます。
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特に惹かれる箇所は曲中に一か所だけ現れるファルセットです。
曲構成ともリンクしますが間奏を過ぎ曲が終盤にかかった頃、Kaedeさんは初めて語尾をファルセットで引っ張ります。遠慮がちな物静かな(?)ファルセットですが、曲後半に入り気持ちを盛り上げた先に唐突に現れたファルセットは更に気持ちの強さ(?)もしくは想いの強さ(?)を見事に昇華させた瞬間のように思えます。
ハレとケではないですが、溜めに溜めたからこそ生まれるカタルシス。ひとつの曲の中で溢れる感情の起伏が、このファルセットによって決定打のように胸に響き渡る。これは、やはりプロデュースの賜物でしょうか?。緻密な設計だとすればひれ伏すしかありません。
生誕祭では直接Kaedeさんの歌声に触れることができます。何とも羨ましい限りですね。
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聴けば聴くほどキセキの一曲だと思うようになりました。
ネギッコに関しては何回か記事に書いたのですが、時間が経つにつれて「私ごときが分かったような事を書いて良いのだろうか?」と思うようになり、もっと熱量の高いファンの方にお任せしたほうが良い。その方が間違いないだろう、と考えていました。なので、意識的にネギッコの記事は取り上げないでいました。
しかし、何故かネットでは『ただいまの魔法』の感想等があまりあがっていないように思えたので、少しでも感謝の気持ちを表したく感じた事を記事にしてみました。
こんな事言うと生意気だと怒られそうですが、まるで私の為に楽曲を制作してくれたみたいに思います。それくらい感動してしまいました。
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音楽って不思議なんですよね。生き物みたいに感じる事があります。
時代もそうだろうし制作に関わる人もそうだろうし。その時の精神状態や色々な環境など、そういった偶然が重なり合い何かの奇跡が偶然起きている、としか思えないことがあります。ハッキリした理由なんてわかりません。説明なんて漠然としか出来ません。でも、そうとしか思えない、何かとてつもない大きな力を感じる事がたまにあるのです。
その奇跡が、この『ただいまの魔法』にも起きたのではないか。個人的な勝手な妄想ですが、そのような事をつい考えてしまいます。そのオーラを『ただいまの魔法』に感じてしまいます。
私は『ただいまの魔法』を一生の宝物にしたい。それ程素晴らしい楽曲だと思っています。
(終わり)