南インド紀② トラウマ克服物語Inムンバイ空港 | 世界一周行ってきます!と果たして言う事ができるのだろうか
五年前。


深夜、インドのデリーにある国際空港に降り立ったぼくは、予約していたホテルへ向かうため、タクシーを捕まえた。


これで、空港に巣食う、危険極まりない、イヌや、ぼったくりタクシーや、怪しげな儲け話を持ちかけてくるインド人から逃れ、安全の確保ができた。



 
はずだった。



走っていると突然、タクシーの運転手が、ホテルの場所が分からないと言い出した。

そして、怪しげな旅行会社に連れていかれる、若き僕。


一時間後…


無理矢理に、超高額ツアー(アグラまでタクシーで四万円)に申し込まされていたのだった。



絵に描いたような、旅行会社詐欺(インドでは、カレーの次にポピュラー)にまんまとやられた恥ずべき過去だ。



しかし…





あれから、ぼくは世界各地を旅し、

成長した。



あの頃の自分とは違うのである。




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1日目(続き)

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タイで乗り継ぎ、最初の目的地に到着した。

インド中部の街、ムンバイ。



外はすっかり夜の帳が下りていた。




(五年前と一緒か…)


例のごとく、空港で予約をしていたホテルまで行くタクシーをつかまえなければならない。


今となっては、なんの変哲もない、初級ミッションである。




しかし…


ここで大きな誤算があったのだ。


アライバルビザを入手するため(日本人だけ空港でビザが取れるという謎システム)、窓口へいくと…


すでにひとりの日本人が、そこにいたのである。






に、日本人…






声をかけるべきか…どうか…




遠い異国の地は心細い。


ここで、同じ境遇の日本人と仲良くなり、楽しいムンバイライフを送るのも手だ。


気軽に声をかけることができるのが、マイナー海外のいいところでもある。




しかし一方、優雅にひとりの時間を過ごしたい気持ちもある。



この旅のスタンスを決める、運命の分かれ道だった。





と、逡巡していると、複数の声が聞こえてきた。


どうやら日本語だ。



(ごめん、待たして〜)




駆け寄る、日本人数人。


どうやらグループで来ていたようなのだった。



さらによくみると、みな大学生くらいで、卒業旅行の雰囲気を醸し出していた(卒業旅行でインドとは、これ如何に…)。



まあ、現代的感覚で端的にいうと、リア充?みたいな?



なにせ、遠目に見ても、キャピキャピしていた(古典的表現)のだ。





り、リア充コワイ…




すっかり日本モードにもどったぼくは、目の端で彼らを追いながら、少し後ろを歩いてついて行った。



33のおっさんが、キラキラ大学生リア充集団は無理だわー。



無理だわー。




さすがに無理だわー。




って思っていたら、リア充軍団はいつの間にか、消えていた。




取り残された僕は、ふと、周りを見渡すと、すでに空港の外。



無数の到着した人を待つインド人の、ギロッとした瞳が、僕のことを見ていたのだった。




すると、案の定…




『名前はなんですか』



と、イントネーションが独特なインド英語が聞こえた。

振り向くと、いかにも怪しげな小太りのインド人が、しかも笑顔で立っていた。



『わたしの名前はサッティリア。公式のプリペイドタクシーを管理しています。』



と、聞いてもいないのに、首にかけていた身分証を示すと…



『タクシーこっちだよ。』

と言う。





はい、詐欺〜




100パーセント詐欺〜





経験済み〜




過去から学ぶ、賢人の僕は…

しかし、なぜかこの怪しげなサッティリア氏について行ってしまったのだった。


今となっては、

リア充ジャパニーズを見失ってうろたえたからか?

風邪で頭が朦朧としていたからか?

分からないが、何はともあれ気がつけば、空港の立体駐車場にいた。



当然、そこにはタクシーを待つ人はひとっこひとりいないのだが、プリペイドタクシーだと主張する謎のバンに乗せられたのだった。




なにかおかしいと気づいたのは、サッティリア氏がやたら闇両替を勧めてきた時。



確かに、提示されたのは高レートだったのだが、いや、ちょっとまって、公式のタクシー手配師が、闇両替を勧めちゃダメでしょ!?



ひとつ疑問に思うと、他も気になってきた。




そもそもいま僕が乗ってるの、タクシーじゃなくて、バンだし。


乗客、僕ひとりだし。



挙げ句の果てには、闇両替しないと、タクシー代が安くならないぞ、と言ってきたし。



ぼくは、すかさず荷物を持つと、タクシー…もとい、バンから降りると、逃げた。



逃げに逃げた。



後ろからサッティリア氏の声が聞こえたが、振り返らずに。



さながら、過去の自分の呪縛から解き放たれようとするように…






ワンブロックほど進むと、大きな文字で『プリペイドタクシー』と書かれた小屋が見えてきた。


そこには、数人のお客さんがすでに並んでいた。


窓口で行き先を告げると、番号が渡され、その番号と同じナンバープレートのタクシーを見つけて声をかけるだけで終わり。


正しい方は、なんともシステマチックだった。




と、なんやかんや、ギリギリで、過去の失敗から学びつつ、ホテルに着いたのだった。



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まだ、1日目なのに、どっと疲れた。