FIFA(国際サッカー連盟)は3月30日、
クラブチームに対して、所属選手が今夏のロンドン五輪出場国のU-23代表に
選出された場合は招集を断るなと言う新方針を明らかにした。
W杯やその予選で選手がフル代表に招集されれば、
クラブは其れに応じなければなら無い定めが有る。
だが、これ迄U-23代表は適用外で、欧州のクラブは断るのが当たり前。
前回の2008年北京五輪では、メッシの出場をめぐって所属のバルセロナと
母国アルゼンチンがもめにもめた
(結局はバルセロナが本人の希望をきき入れて出場を許可)。
日本が苦戦したロンドン五輪のアジア予選でも、
大津祐樹(ボルシアMG)が例外的に招集を認められただけ。
其れが今回の決定により、香川真司(ドルトムント)や宮市亮(ボルトン)、
宇佐美貴史(バイエルン)、酒井高徳(シュツットガルト)ら、
欧州組の選手にも本大会出場の可能性が出てきた。
大幅戦力アップでメダル獲得も見えてきた?
FIFAの方針変更について、サッカージャーナリストの中山淳氏が説明する。
「実はFIFAの改革案の中心は、過密日程に批判的なクラブ側の要請に応えて、
フル代表の試合を減らすことにありました。プレスリリースも
大半はそのカレンダーに割かれ、
最後のほうに付け足しのような形で五輪の話が出ていた。
だから、このニュースは欧州ではまったく話題になって居ません。
又、6月のユーロ(欧州選手権)に出場した選手は除外すると言う一文も有るので、
例えばスペインやイングランドのフル代表クラスの若手スター選手が
五輪に出ることも無いとおも居ます」
でも、FIFAの発表なのだから効力は有るわけですよね。
「はい。今回、明文化されたことによって、少なくともクラブ側が
一方的に『出場はNO』と言うことは難しくなりました。
本当に出したく無いと思ったらケガ等を理由にするしか無いでしょうし、
交渉の余地は十分有る」(中山氏)
FIFAの発表を受け、日本サッカー協会の小倉純二会長は
欧州訪問中の原博実技術委員長に、「ドイツ(のクラブ)が中心に成るけど、
どうかんがえて居るか聴くようにメールした」と、
欧州組の招集に前向きなところを見せた。
欧州組が加わり、さらに3人のオーバーエイジ(23歳以上)迄加えるなら、
予選とはまるで違うチームに成る。誰を呼ぶべきか、
サッカージャーナリストの杉山茂樹氏はこう語る。
「現状のU-23代表は前線で決定的な仕事が出来る選手が足り無いし、
サイドバックにも穴が有る。宮市や酒井が加われば強化出来ます。
もっといえば守備的MFが薄いので、オーバーエイジで長谷部(誠)、
今野(泰幸)あたりが居ると助かるでしょうね」
ただ、杉山氏は「誰を招集するのかと言う話をする前に、五輪の位置づけ、
目標をはっきりさせる必要が有る」と言う。
「五輪は必死に勝ちにいく大会かといえば、たいていの国にとってはそうでは無い。
6月と9月にW杯予選が有る香川を『五輪にも』と言うのは、
ドイツ人には理解しがたいとおも居ます。
若手に国際経験を積ませる場だと言う声も有るけど、
其れなら宮市はプレミアリーグの試合に出たほうがいい。
今回はFIFAがIOC(国際オリンピック委員会)に恩を売った形ですが、
五輪でもサッカーは人気があり、興行的には有名選手が多いほどいい。
ヘタをするとそんな”要請”に応えたのが日本だけと成るかもしれません」(杉山氏)
本大会に出場した過去4回の五輪で、日本がオーバーエイジを使ったのは2回。
このこと自体、五輪に対して、いかに腰が定まってい無いかの証拠だろう。
誰を招集するかの前に、決めるべきことが有るのでは無いか。
週プレNEWS 4/13