小栗旬、星野源のダブル主演
映画「罪の声」を観てまいりました。
公開初日である2020年10月30日、朝9:30の初回上映。
シアター側がひとつおきに席をあけて座席販売をしていたことと
平日の朝一番ということもあってか
それほど観客は多くない状態でした。
原作は、塩田武士さんの「罪の声」。
35年前の犯罪をモチーフにしたフィクションということですが
昭和をご存知の方であれば
「食品メーカー」
「毒入りお菓子」
そして
「キツネ目の男」
このキーワードで
「あ、あの事件・・・」
と、ピンと来られるのではないでしょうか。
あくまで《モチーフ》なので、事件そのものの名称などは直接的には出てきません。
ですが、あの事件は本当はこうだったのではないか、と、思わせるようなリアリティー溢れるストーリーで、142分があっという間でした。
まず、この話の鍵となる「カセットテープ」がストーリーに登場するシーンが余りにも自然で
そこから始まる謎解きに一気に引き込まれて行きました。
主人公は2人
京都でテーラーを営む曽根(星野源さん)と
大阪の新聞記者である阿久津(小栗さん)
曽根は、偶然見つけたカセットテープに、幼い頃の自分の声で脅迫文が吹き込まれていることを知り愕然とします。
一方の阿久津は、ちょっとやる気の見られない文化部の記者で
新聞社内の未解決事件を追う特別企画のために召集され、やる気の見られないまま特別班に参加します。
この2人がそれぞれの立場で、はからずも同じ事件を調べていくことになるのですが
いろいろな点が線になっていき
それが交差した瞬間から
加速度的に物語が進んでいきます。
曽根と阿久津が拾い集めた、事件に関するピース。
観ているこちら側は、勝手にそれを当て嵌めて
事件の真相が、想像以上に過酷で重いものであることを、2人より先に予測してしまいます。
そして、やはり曽根に至っては当事者です。
誰にも苦悩を言えないまま、でも本当の事が知りたくて色々な人に話を聞いていく様子が
終始苦しみの中での行動なので、こちらも胸が痛くなりました。
そしてたどり着いた小料理屋で
板長(橋本じゅんさん)が話を渋るのを
「あの事件の声は子供の頃の私なんです。本当のことがわからないままだと、私は頭がおかしくなりそうなんです!」
と、思わず声をあらげてしまうシーン。
曽根が初めて、自分が抱えているものを他人に吐き出してしまった場面でした。
まずそこで、ガンっと頭を殴られたようなショックを感じました。
一緒に「真実」を探している気になっていましたが
曽根は、これから自分自身がどうやって生きていけば良いのかわからない状態になっていることに
改めて気づかされます。
もう1人の主人公・阿久津。
曽根とは違う側面から事件の真相をたどっていきます。
始めは、この過去の未解決事件を追うことに意味があるのか、と先輩記者に冗談めかしく言う阿久津でしたが
色々な人の証言を集めていくうちに、声を使われた3人の子供たちの存在に行き着き、現在はどうしているのかと疑問に思います。
そして真実を明らかにしたい、という思いに突き動かされ
取材を重ね、とうとう曽根のテーラーを訪ねることとなります。
ここで観客は「やっと2人が出逢った」と、これからストーリーがどんどん進んでいき、謎も明らかになると期待しますが
追うものと、追われるもの
友好的な出会いではないのは明らかです。
阿久津が「真実を明らかにすることに意義があります」
と、取材申込を受け入れてもらおうとすると
曽根は「どんな意義ですか!子供の将来はどうなるんですか!」
と憤ります。
それでも、会話は少ないながらも
阿久津は、事件に巻き込まれた曽根の気持ちを考え
曽根は、真摯に事件に向き合おうとする阿久津に対して、少しずつ警戒心を解いていき
2人で次々と真実を探していく様子が、ロードムービーのようでした。
ただ、明らかになっていく真実は残酷で、どうしようもなくて
曽根が1人で色々調べていった時に出会った、声を使われた少女の友人(高田聖子さん)が登場した辺りから、涙を拭うことができませんでした。
そして、やっと探し当てたもう1人の声を使われた子供(宇野祥平さん)が、一点を見続けていたシーンは
その視線の先にあるものがわかったとき、嗚咽を止めるのに必死でした。
曽根は大人になるまで、自分の声を使われていたことを知らなかったけど
他の2人は後になってから知ったものの、声を使われたことによってどん底の子供時代を過ごさなければならなかったという事実。
聡一郎(宇野さん)が、曽根に
「あなたはどんな人生だったんですか?」
と問いかける場面。
曽根は言葉に詰まります。
同じ犯罪に、同じように利用されたのに
余りにも異なる人生を送ったことに、思わず後ろめたさを感じたのでしょうか。
でも、阿久津は曽根に
「あなたが罪の意識を持つべきではない。」
と励まし
「本当の犯人を引きずり出しましょう」
と、単身イギリスへ行きます。
阿久津は、記者として事件を追っていたけれど、最後は人間・阿久津として動いているようでした。
曽根と阿久津が初めて顔を合わせたときに、曽根が投げ掛けた
「真実を明らかにすることに意義があるのか」
という問いに、咄嗟に答えられなかったけれど
イギリスへ行って、真犯人とも言える曽根の叔父(宇崎竜童さん)へ、事件後の子供たちの人生を聞かせること。
それが答えになったのではないでしょうか。
「罪の声」
大人の都合によって、人生を狂わされた子供たちの悲痛な声。
観終わってから、しばらく座席から立ち上がれない映画は「シンドラーのリスト」以来でした。
事件を解明していくミステリーの部分もさることながら
それに関わる人間の愚かさや、アイデンティティという名を借りた傲慢さ
一方で家族を思う気持ちなどが入り雑じり
「ヒューマンミステリー」の看板に負けない、素晴らしい作品だったと思います。
そして最後は
犯罪に使われた子供の声が、母の「娘の声が聞きたい」という願いをかなえてあげるものに昇華されたのが、救いでした。
原作の塩田さんが、映画公開に先駆けて行われた「完成報告会」で
「自分の思い描いていたものが、映像になった。」
と絶賛していました。
こんなに嬉しい誉め言葉はないですね。
それにコロナ前の製作の為、海外ロケも充分にできたようで
イギリス・ヨークの美しい風景など堪能できました。
もう一度観たいのですが、なかなか時間がとれないので
小説は絶対読もうと思います。
主役のお二人はもちろんですが
脇を固める方達が、本当に素晴らしかった。
そして豪華。
とりわけ
高田聖子さんと、宇野祥平さん、篠原ゆき子さん、原菜乃華さん
印象に残りました。
それと、橋本じゅんさん。
この方がいなければ、ストーリーが進まない重要な役どころです。
小栗くんは、ややもするとただ話を回すだけのストーリーテラー的な役になりそうなところを
阿久津という人物に息を吹き込み
阿久津だったから、曽根は闇に落ちることなく
前を向いていこう、と思えたのではないのでしょうか。
主題歌「振り子」by Uru
映画の特別映像と共にお楽しみください。
映画を観る前と見た後では、心の沁み方が全然違いました。
是非とも、たくさんの方に観ていただきたい映画だと思います。
小栗くんへ
今年初めての作品が観られて、本当に嬉しかったです。
ありがとうございました。
では、また。