小学5年生の冬、白いタイツを穿かされて、伯母の家に
行ったことを書いた。白いタイツは従姉の亜紀ちゃんの

少し古い新品のお下がりだったことも書いているとおり。

 

伯母の住まいの高層マンションは港区にあって、当時の
私の家と比較すると、都心のとてもお洒落な場所だった。

母は私に、『よそ行き』を着せた。比較的きれいな服で、

白いタイツもここが使い時だと判断したのだろうと思う。

薄いタイツは足元が冷えたが、あまり気にならなかった。

 

 

実は、今回書きたいのは、屋上で出会った少女 のことだ。

半世紀以上前のことなのに少女の印象は強く残っている。

ベルベットの紺色ワンピースドレス。エンジの色タイツ。

そして、ポニーテールにまとめた長い髪。上品な感じだ。

できることなら時間を巻き戻してもう一度会ってみたい。

 

もちろん小学生の私がその少女に話しかけることなどは

なかったし、十数メートル離れた位置から見ているだけ
だったけれども、高層ビルから見る珍しい都会の景色に

負けないくらいインパクトがあって少女を盗み見ていた。

同じ学年かな、背はぼくより大きいな、どんな声だろう。
などなど、健全な少年の私は想像をたくましくしていた。

 

ポニーテールの髪型は当時の流行りだったのだろうか?

長い髪を後ろで1本にまとめて馬の尻尾のように垂らす。

それが似合う人とそうではない人がいるのだろうけれど

彼女にはとても似合って、清楚な印象を醸し出していた。

そして、紺色の服に合わせたタイツ。少し厚地だった。

同級生には、ああいうエンジ色のタイツを穿いた少女は

いなかったから、よけい鮮烈な印象を残しているようだ。

 

帰宅してしばらくの間、その少女のことを空想していた。

もしも親しくなれたとしたらどんな話をしたのだろうか?

学校のこと?自分の親のこと?それとも、遊びや運動の
ことも話したのかな。遠い、見果てぬ過去の憧れだった。

 

 

 

 

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