今回の参加者
A→o
鈴虫
時間
30分
テーマ
『終末』『忘れられし』『非日常』
タイトル
終末、荒野疾走す
その日、世界に終末が訪れ日常と非日常が逆転した。
人類は平穏だった日常を取り戻すべく、少数精鋭を集め、フェニックス計画を遂行した。
そして今数百年の時が流れた―――
荒野を一台のバイクが疾走する。
大量の砂煙とエンジンの爆音を響かせながら走行する姿は暴れ馬の様だった。
―――いやぁぁぁぁぁとまってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
訂正。暴れ馬だった。
「あぁ、姉さんまたやってるのか」
僕は見慣れた光景にため息を一つこぼす。
今あの暴れ馬にまたがり悲鳴を上げてるのは僕の姉で、この荒廃した世界には珍しいエンジニアの一人だ。
「姉さーん。どうせブレーキ壊れてるんでしょー。早く飛び降りたほうがいいよー」
そう大声で叫ぶと姉さんは聞こえていたのかどうかは定かではないが、爆走するバイクが跳ねたと同時に宙を舞った。
くるくると一回転・二回転・三回転を決め、華麗に地面に落下した。
「大丈夫姉さん?べちょって音が聞こえた気がしたけど」
「………だ、だいじょ~ぶ~」
「流石姉さん、頑丈だけが取り柄!」
「ふぇ~酷いよー。姉さんこれでも世界に数人しかいないエンジニアの一人なんだよぉ」
そんなこと言う前に、そのひっくり返って自分の股から顔を出している態勢をどうにかしてから言ってもらいたいものだ。まったくもって説得力ゼロである。
しかしながら姉さんの言っていることは本当で、エンジニアとはこの荒廃した世界で旧文明の機械を発掘・復元を生業としている数少ない人たちの総評だった。
「姉さんは忘れられた日常を取り戻すべく日々研鑽を惜しまないエリート―――」
丸まった体に反動をつけ立ち上がり「―――なのだ!」キメ顔でそう言った。
「で、姉さんあのバイクは?あっちの方で爆発炎上&飛散しているあの残骸はどうしたの?」
「え、嘘ぉ! あ・あ・あ…私のエンハンス号がぁあああ」
「名前つけてたんだ…」
「ぅー。昨日鉄くず売りのおっちゃんが持って来たんだよ。………高かったのに」
地面にのの字を書く姉さん。絶望する僕。
「買った! 買ったの!? え、え? 今月ギリギリって言ったよね!」
「だってぇ………治せると思ったんだもん」
「あああああ―――」
こんな日常もう嫌だ。数百年前に立ち上がった救世主たちはどうしたんだ。非日常に生まれ、偉人が言う日常を知らない僕は空想となって語られる非日常を切望する。
いったい日常とは何なのか?それは………
「ねぇ、私お腹すいちゃった」
「………今日のご飯はラットスコーピオンの炒め物です」
「またそれー。私そのご飯嫌いなんだよね。苦くて、硬くて、ねちょねちょしてて…」
「誰のせいでこの献立になったと思っているの? え? お金なくて小麦買えないんだよ?」
それは………この姉さんが少しでも真面になれば叶うのではないだろうかと僕は考えるのだった。
