30分小説?いいえ駄文です。 -2ページ目

30分小説?いいえ駄文です。

『テーマに沿って、決められた時間で小説を書く』をルールにして、更新します。
たぶんおそらくきっと駄文量産になりますが、よろしければ閲覧ください。
テーマに沿えばジャンルは不問なので、2次創作を含みますご注意ください。

今回の参加者

A→o
有人零畝
鈴虫

 

時間
30分

 

テーマ

『犯罪者』『黄金』『アルパカ』

 

タイトル
黄金郷


「なあ爺さん、この先で本当に大丈夫なんだろうな!?」
 男は前を歩いているはずの人影に向かって声を張り上げる。すると、靄の中から小柄な影が徐々に男の方へと近づいてきて、ついにはくっきりと目視できるところまで姿を現す。
「わしが信用できないか。なら今すぐ引き返すがよかろう。集落までなら送ってやらんこともないぞ」
 低く静かに、それでいて頭の中にまで染み渡るような声で、目の前の老人は男に言う。アルパカの毛で編まれた民族衣装を身にまとったその老人は、小柄ながらがっしりした体格に身のこなしからか年齢を感じさせない。顔に刻まれた皺だけが生きてきた時間を感じさせる。
「すまない。そうじゃない、そうじゃないさ。文明とはかけ離れた場所を延々と歩いていたから、少し不安になっただけなんだ」
 男は老人に軽く謝罪の意を示し、ガイドとしての仕事を促す。それに対して老人は特に意に介する様子もなく、無言で靄の中へと進んでいった。

 南米ペルーの山中。標高は既に4000メートルを超え、これでもまだ全然低いという。そんな中を現地人を雇って歩く男は、ただマチュピチュを訪れて帰るだけの観光客とは違った。表向き学者として訪れ、所謂『インカの黄金』を探すトレジャーハンターであり、大金が要りようになった脛に傷持つ身であった。
 ガイドとして雇った老人は、普段はアルパカを飼育しながら副業として地元のガイドをして生計をたてているということだった。

 集落を出てから早二時間。道らしきものもない薄靄のかかった山中を迷うことなく進むガイドに、男はついていくのがやっとであった。これだけの標高の高さにまだ体が慣れきっていない男にとっては、普段の何倍もの疲労を感じる行程であった。
「あと、どれくらい、だ……」
 息も絶え絶えに何度目かの問いを口にしたところで、男は靴底から伝わる感覚が急に変わったことに気づいた。
 それまでの山道とは全く違う、滑らかな石の感触。
「ここじゃ」
 徐々に晴れてきた靄の先には、舗装されていたであろう石畳に山中に埋もれた石の柱、そして何かが彫られているような模様の石碑と思しきものが見えてきた。老人は石碑の傍に立ちそれをわずかに見上げていた。
 男は気力を振り絞って石碑のもとに辿り着くと、これはと老人に尋ねる。
「この石碑に描かれた絵はある重要な場所を指し示すものだと聞いておる、次のような言い伝えと共にな」
『神の黄金を狙う罪深きものより守るため、黄金をかの地に眠らせる。神と番人に認められし者にのみ道は示される』
 淡々と語る老人の言葉に黄金という単語を聞き取った瞬間、男の目に活力が戻る。石碑に噛り付くようにその模様に手を這わせながら、次々に湧き出る疑問を老人にぶつける。
「かの地とは一体どこのことなんだ。それに、番人とはいったい……?」
 興奮気味にまくしたてる男が老人の方へ顔を向けた瞬間。男の喉元を灼熱の感触と共に痛みが走り、息ができなくなった。
 何が、と声に出したつもりが、ただゴボゴボと喉と口から血を噴き出しながら男は倒れ、しばらく痙攣したのち動かなくなった。
「場所はここではないどこか。番人とはわしのこと。そしておぬしは認められなかった。黄金を口にした時のおぬしの目は欲深き犯罪者のそれじゃったからの」
 冷たく静かに、淡々と物言わぬ男を見下ろしながら告げる老人の右手には、血濡れの短剣が一振り握られていた。

今回の参加者
A→o
有人零畝
鈴虫

 

時間
30分

 

テーマ

『転校』『筋肉』『腐敗する』

 

タイトル

田中バイオハザード

「「「やめてこっちに来ないで!!」駄目だ吐きそうだ!!」糞野郎が全部お前のせいだからな」
クラスは阿鼻叫喚の渦に飲まれていた。
 女子生徒の甲高い叫ぶ声が蔓延し男子の怒声や罵声が空間を満たしゲーゲー吐いてる者までいた。
「そんな…僕は悪気があったわけじゃないんだ。気が付いたらこんなになってたんだ」
 当事者である田中は腐敗臭を放っている右手を差し出すと、より一層周りの反応が膨らんだ。
「田中ぁ!お前もう死ねよ。もしくは転校して二度と現れるな」
「大げさだよ僕だって生きてるんだから、そんな酷いこと言うなよ」
「酷いのはお前だ。そのなんだ…腐ったその手……開くんじゃねぇ!」
「僕は…僕はあああああああああ」
 田中は机の中から腐った筋肉質の肉の塊を取り出し地面に叩きつけた。
 それは、春に新入生歓迎メニューの給食で出たチキンで、今はセミの鳴く真夏の出来事だった。

今回の参加者
A→o
有人零畝
鈴虫

 

時間
30分

 

テーマ

『転校』『筋肉』『腐敗する』

 

タイトル

終わりの始まり

 少年は学校の屋上で寝転び空を仰いでいた。夏の日差しが身体を焼くがほんの少し心地いい。
 頬には痣、唇の端が切れたのだろうか血が滲んでいる。
(どこの学校でも転校初日はこんなんばっかりだな……)
 少年自身に非は……恐らく無かった。
 只々転校してきて、普通の他愛のない、差し障りのない挨拶をしただけだ。それでも変哲のない日常に飽きてきていた所謂不良たちにしてみれば新しい玩具が転がり込んできたといったところだろう。
「やり返してもいいんだけどな」
 口の中でそう呟いた。
 喧嘩を吹っ掛けてきたのは向こうなのだからそれくらいは許されそうなものだが、どうしてもあの光景がフラッシュバックしてダブる。
 それにただサンドバッグになっていれば飽きてすぐに別のことを探すだろうという計算もあった。
 そろそろ戻ろう。そう思い上半身を起こすと同時に屋上の扉が音を立てて開いて、その先に恐らく同級生が俯向いていた。格好から察すると女子生徒のようだ。
「えっと、どうしたの」
 そう聞いても反応がない。反応がないどころか俯向いたままフラフラと少年に向かって歩いてくる。
 その歩き方も足に怪我をしているように片足を引きずっていた。
 まさか………………
 少年がその歩き方に思い当たったその刹那。
 不意に顔を上げた女子生徒が少年の首筋に喰らいつこうと飛びかかる。
 それを避けると勢いのままに転落防止用のフェンスに激突し倒れた。だがゆらり、と不気味な立ち上がり方をすると皮膚が腐敗して筋肉がむき出しになった顔と、白濁して光がない瞳を少年に向けて咆哮した。
「オオオオオオオォォォォォォォォ!!」
 捕まえそこねた獲物へ不満とも取れる同い年の少女がとても出せるはずのない声を上げ、今度こそ捉えようと曲がるはずの無い方に向いた足首を物ともせずに駆け出した。
 伸ばした爪が少年に掛かる瞬間、少女は真横から何かに吹き飛ばされコンクリートの上を転がり、少年の眼前を風が吹き抜けていった。そのほんの一瞬だがそれを目が合い、風の正体を察する。
 少女が転がっていった方では何発かの爆竹が弾ける様な音がした後に肉を切り、骨を断つ音がした。そして風は少年へ向き直りこう言った。
 迎えに来た。と。

今回の参加者
A→o
有人零畝
鈴虫

 

時間
30分

 

テーマ

『転校』『筋肉』『腐敗する』

 

タイトル

転校

「突然ですが。クラスメートの佐々木君が転校することとなりました」
――えぇーー
 と僕を含めたクラスメイト達が驚嘆の叫びをあげた。
 佐々木君はいつも明るいムードメーカーで、同性にはもちろん異性にも親しまれていた良い奴だったためか、他に転校していったクラスメートたちの時との反応はだいぶ違っていたし、僕とも親しい友達だった。
「佐々木君も急な引っ越しで、お友達の皆さんに挨拶ができなかったと悔しんでおられました」
 しかしこれで何度目の突然の『お引越し』だろうか?
 先月にも一人急な転校をしたクラスメートが居たし、今年に入ってからの転校者は既に5人を上回っている。
「皆さんお静かに、悲しんだり驚いたりする気持ちはわかりますが、今は授業を始める時間です」
 先生の言葉は非情に聞こえたが、先生も仕事をしなければならないのだから仕方ないことだ。
 騒いでいたクラスメートもそれを察してか、シンと静まり返ったのだった。

 先生の授業が終わり、休み時間に入ると佐々木君の話でクラスはいっぱいだった。
 クラスメートの中には何の疑いもなく短絡的に何処の地区に転校したのかとか笑いながら談笑する者も居たが、僕を含めて一部の友達は不吉な陰謀を疑い始めていたのだった。
――曰く、転校と称される人体実験が行われている。
――曰く、神隠しにあった人間は転校と称され報告される。
――曰く………etc
 囁かれるのは噂の域を超えないものばかりだったが、その中で一つ真実味を帯びたものがあった。
――曰く、謎の病原菌に侵され死亡した者は転校と称され処分される。
 この学校のスポンサーは有名な製薬会社で校舎も元々は病院なのは本当の事だ。そのせいか病気にまつわる噂なりは多いのだが、僕たちがこの噂を本当の事と捉えるのは訳があったのだ。
 それは、転校する一週間前に遡る。
 親友であった僕は佐々木君の異変に気が付いていたのだった。
 それは、筋肉痛が酷いと話していたり、給食の時に頻繁に箸を落とすようになったり、何もない道端で転ぶようになったり、体から嗅いだことのある妙な異臭がしたりという考えれば当たり前の理由がいくらでも浮かんでくるような事象ばかりだったが、それが一定期間にまとまって複数おきれば、あの噂も信じたくなるものだ。
 それに最大の理由は、体育の着替えの際に見た関節部の赤黒く変色した肌の色だった。
 ふざけてその変色した部分を触った僕だったが、妙な感触がしたことを覚えている。匂いもあの異臭が手に残っていた。
 明らかに体に何らかの異常が見られ、そして今日の転校だ。これは学校側が仕掛けた陰謀か政府がからんだ新種の感染病もしくはウイルス兵器の類による隠さなきゃいけないこのだと。
――佐々木からメールが来たぜ!!
 クラスメートが声を上げた。
 疑っていた皆は安堵の表情を浮かべ口々に「なんだ」や「無事だったんじゃん」とか言った。
「ほんとうかよ、どんな内容だ、元気にしてるのか」
 僕も今まで悶々と考えていた幼稚な仮説はすべて間違いだたと思った。

 今になって思う。あの時来たメールは学校側が僕たち疑う生徒を騙すために仕組んだものだったのではないかと。
 体が痛い。佐々木君と同じく赤黒い染みが僕の関節にも現れて………ああそうか
「思い出したぞ…この匂いは」
――肉が腐敗したとき嗅いだ匂いだ。

今回の参加者
A→o
有人零畝
鈴虫

 

時間
30分

 

テーマ

『転校』『筋肉』『腐敗する』

 

タイトル

新入生への演説

 新入生諸君、初めまして。まずは入学おめでとう。今日から高校生としての新生活が始まるわけだが、君たちは今どういう思いを抱いてこの場にいるだろうか。新しい環境に対する期待と不安、両方があることだと思う。
 特に昨今は、腐敗する教育現場というイメージが目に付きやすい時代だ。相次ぐ教師の不祥事であったり、生徒間のトラブルで転校せざるを得なくなったり、あるいは自殺に及んでしまった生徒の話など、悲しい事件が数多く報道されている。それらを目にしていれば、自分に降りかかるかもしれない事として不安に思う者もいるだろう。
 だが、私はこれらの不安すべてを、教師と生徒両方の努力によって克服できると信じている。そこで、君たちがこれから高校生活を送るうえであらゆる不安に立ち向かうためのアドバイスを一つ、私からしたいと思う。
 不安に立ち向かうためには、勇気が必要だと考えられる。では勇気はどうしたら持てるだろうか。それは、健全な精神の発露ではないだろうか。
 では健全な精神はどうやったら養えるのか。私は、健全な精神は健康で頑強な肉体によって養えると考えている。
 つまり、全身の筋肉を徹底的に鍛えることで、同時に健全な精神を育むことができるのではないだろうか。肉体が健康なら、精神状態も健康を維持しやすい。筋肉トレーニングは目に見える形で成果が出やすいので自己肯定感も得られやすい。なにより肉体が貧弱なら病気などで生活に不安を感じやすいが、肉体が健康ならばそんな不安とは無縁なのだ。
 それに互いに肉体を鍛える者同士となれば、自ずと互いに認め合う関係になれると私は確信している。そういう信頼関係を築けたならば、とても素晴らしいことではないでしょうか。
 長くなってしまいましたが、私の言いたいことをまとめると以下のようになります。皆で筋肉を鍛えましょう。ビバ筋肉!
 それでは皆さんが善き筋肉ライフ……ではなく、高校生活を送れるよう、祈っております。ご清聴ありがとうございました。

 

 

今回の参加者
A→o
有人零畝
鈴虫

 

時間
30分

 

テーマ

『雨宿り』『物質』『教会』

 

タイトル
 異端審問官

 少女が目を醒ましたときには、辺りにはまだ燃え続ける炎と焼け落ちた建物の残骸。そして焦げて嫌な臭いを放つ塊があった。
 ただ奇妙なのは炎上が始まったのはこの建物――教会――で少女が倒れている祭壇そば。なのに少女のまわり、人が二人立てるぐらいの空間だけ焦げることも灰が降ることもなく綺麗なままで残っていた。
 立ち上がり踏み出そうとした時、何かに躓き咄嗟に地面に手をついたがその床は濡れていたらしく踏ん張りが効かず強かに全身をその中に放り込む格好になった。
 どうやら床を濡らしたのはヌメヌメとしたものだったらしい。一体何なのかと見ると手のひらいっぱい赤いのもがべったりと付いていて自身の身体へ視線を落とすと洋服の左半身と両膝から下染め上げていた。
 そして躓いたものへ視線を送ると、まず目が合った。
 四つの瞳。それぞれ生の光は無く、ただ仄暗い空を湛え曇天へ向けて交わることのない視線を放つ。
 少女はその顔に覚えがあった。そして何が起こったのかを思い出した。
「いやあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 男がその村へ到着したのは今にも雨が振りそうな黒雲が空を満たしそうな頃だった。
 懐から折りたたまれた羊皮紙を取り出すとその内容を改める。
 『能力者発見の知らせ有り。件の村へ赴き対象の保護または…………』
「殲滅せよ……か」
 正直な所、男はこの任務に乗り気ではなかった。
 異能を持つ人間を保護の名のもと掻き集めて組織に有益な能力であれば聖者認定し、使えないと判断されれば悪魔の使いとして裁判の後に処刑する。
 だが殆どの場合、能力を暴走させて手に負えないことが多く、その場で処理することが多いこんな仕事に嫌気がさしていた。
 保護されて聖人認定された異能者も使い道は反乱分子の殺害に利用されたり、信仰を得るための客寄せに使われる。そして少しでも為政者の意にそぐわない事をすれば…………
 だがやーめた、と簡単に辞められる仕事ではなく、辞意を少しでも見せれば消されるのは明白だった。
 しかしおかしかった。村と言っても人っ子一人見当たらない。時間にすれば昼少し前で仕事から戻り昼食を取る喧騒が聞こえきそうなものだ。
 ――――――ぁぁ…………
 何処からか声のようなものが聞こえ反射的に走り出していた。
 村の一番大きい通りを進むと眼前に崩れ落ちたがまだ炎が見える教会が見えた。恐らく声もそこからだろうと当たりをつけ更に走る速度を上げる。
 男が教会に着く頃には雨が落ち始め、炎を消したがまだ完全消火には至らないようで燻り煙を出している。その中へ躊躇うこと無く飛び込むと少女が一人死体にしがみつき涙を流していた。
 周りを見回すと恐らくこの村の村人だろう焦げた死体が数十体転がっていた。
 少女は血に塗れているが、焼け落ちたここに居て血には塗れているが怪我が無いところを見ると異能者であることが容易に想像できる。
 その少女を守ろうとして死んだ神父とシスターを見るに、異能に恐れ慄いた村人が暴発したと受け取れる。
 そして落ち着く先は異能の暴走。
 その結果がこの有様。
「なあ、君」
 男が言葉をかけると驚いた少女が祭壇の影へ逃げて少しだけ顔を出して男を睨む。
「あー、そう警戒しなくていい。俺は君を保護しにきたんだ」
 そう言い両手を上げながら近づく。が、男はいつでも発砲できるように袖の中に銃を仕込んでいた。
 近づいて尚力を暴走させるなら処理するための手段。これまで何人もの異能者を始末してきた手段だった。
 どれだけ優秀な防衛手段を持ち合わせていようと至近距離、でなければ銃口を密着させて弾丸を放たれればひとたまりもない。
 ゆっくりと少女に近づく。そして神父とシスターの側まで来た時二人の見開いた瞳を閉じ、十字を切る。その行動に安心したのか少女が身を大きく乗り出した時。焼けて折れた天井の梁が少女目掛け落ちる。
 巻き上げられた灰で視界が奪われる。それが晴れると少女は膝を抱え丸まっていた。
 梁は少女に触れられもせず宙に浮いている。いや違う。何かの上に乗っていた。
「立てるか?」
 男が声をかけると少女は恐る恐る立ち上がる。その拍子に乗っていた梁は十字架の前に落ちた。その瞬間ガラスが砕ける様な音も一緒に響いた。
 少女を安全であろう焦げていない場所までこさせて落ちた梁を調べると灰色と黒が混ざった粒と橙色の塊が散らばっていた。
「熱っ」
 橙色の塊を手に取ると非常に熱く、落とすとたちまち火に変わって猛り始めた。もう一つの方は煙だったらしくこちらは戻ると消えていく。
 するとやっと雨がまとまって降り出し残った炎を治め始める。
 少女の方を見ると雨粒は当たること無く避けるように落ち、小石を落とした様な音を発していた。
 恐らくありとあらゆる物質を自在に固形化出来る力なのだろう。
「さあ、行こう」
 少女は男の差し出した手に自分の手をおずおずと乗せる。男はゆっくりと手を握る。それに答えるよう小さな手はほんの少しだけ力を込めて握り返してきた。
「そう言えば名前は?」
 答えようともがいているのだろう何度も口を開き言葉を発しようとするが声が出なかった。
「ああ、無理に答えなくていい。でも呼びにくいから……」
 男は少し考えると思いついたという顔で言う。
「雨宿りに便利な能力だから、アマリってのはどうだ」
 しばらく雨が落ちる音だけが響く。あまりにも適当な事を言ったからかと思い始めた頃少女は手を強く握り頷く。
「俺はそうだな…………マクスウェルとでも覚えといてくれ」
 男はホッとした様にそう言った。

今回の参加者
A→o
有人零畝
鈴虫

 

時間
30分

 

テーマ

『雨宿り』『物質』『教会』

 

タイトル
行商人の災難Ⅱ 雨降りの町part2
(2017/09/06投稿の雨降りの町の続きになります)

 僕は今、突然の雷雨を避けるために雨宿りするために作られた洋館のロビーにいた。
 商売をするために各国を転々と渡り歩いている僕だったが、命の危険すら感じるここまでの雨は初めての経験だった。
「ありがたい。ロビーが広いから運んできた荷物の状態をチェックできそうだ」
 雨濡れや湿気などで傷んでいないか積んできた売り物の状態を確認していると、一人の男が階段を下りてきて声をかけてきた。
「あんさんも、商売の方かい? こんな大雨でお互いに災難でしたな」
「ということは貴方も何か商売で立ち寄ったんですか?」
 変な訛りの階段から降りてきた男――彼はロンソと名乗った。はニヤリと笑い自分の商品を自慢するかのように見せつけてきたのだった。
「これが俺売っている商品の一つや。どうだ凄いだろう」
 彼の手の中にはグネグネと動く野球ボールくらいの大きさの気味の悪い物体がこちらを単眼で睨みつけていた。
「………えっと。だいぶ個性的なものを売っているのですね」
「これはな、技術が進歩した国で開発されたロボットなんやで。素人には生物にしか見えんけどプログラムで動かせるすごいやつなんやで」
 なるほど、物体ではなく物質だったのか。それにしても面妖な動きをするものだ。
「僕はいろんな国の特産品を売りまわっています。今回の雨で食品のほとんどが駄目になってしまって………無事なのはこの絶対領域の周りに張るロープ(レプリカ)などの民芸品くらいしか売れそうなものはないですね」
「なんやその絶対領域って、それにそんなもの売れるのかい」
 あなたの商品に言われたくないですねとは口が裂けても言えなかった。
「荷物のチェックも終わったんやったら、風邪ひく前にここの管理人さんから部屋の鍵をもらってシャワーでも浴びるといいんじゃないか」
「それはありがたいですね。はてその管理人さんはどちらに?」
 周りを見渡すと広いロビーの片隅に鍵を管理する場所は見つけたが肝心の管理人の姿はなかった。
「個々の管理人はシスターさんでな、さっき教会のほうに行くのを見かけたは」
「そうでしたか。色々とありがとうございます。僕はそちらのほうに行ってみます。それでは」
 ロンソに別れを告げ僕は協会のほうへと向かった。
 それにしてもだいぶ大きな洋館だ、あの広さのロビーに教会まであり部屋も数十あるらしい。
 ひんやりとした廊下を抜け、十字架の掲げられた扉を開くと祭壇の前に祈りをささげているシスターの姿が目に入った。
 声のかけずらい雰囲気だったのだが、向こうが僕の気配に気づき振り返った。
「あらあら。また新しい迷える子羊がいらしたのね。大変だっただしょう、少しお待ちになって今部屋の鍵をお渡しいたしますわ」
「お祈りの邪魔してしまってすいません、ありがとうございます。またということは今何人ほどこの館に滞在しているのですか?」
「そうですね。あなたを含めて五人ほど今日はこちらに雨宿りをしに来ていますわ」
 五人か――豪雨の日が予め予言され告知されているこの国で、よりにもよってこの日に訪れてしまう間抜けがそんなにもいるのか僕然り。ということはまだ見てない人が三人。丁度ここは教会だからあんまり面倒なことになりませんようにと僕も神様に祈ってから部屋に向かおうかな。
 そう思って、僕は手を合わせた。

 まぁ悪い予感というものは当たるもので、至極当然が如く一悶着あったがそれはまた次の機会で。

 

今回の参加者
A→o
有人零畝
鈴虫

 

時間
30分

 

テーマ

『雨宿り』『物質』『教会』

 

タイトル
シスターさん

「それではごゆっくり」
 そうかけられた言葉に対し男が愛想笑いと共に扉を閉め、軽い溜息とともに改めて案内された部屋を見ると、より一層げんなりとした気分になった。
 少し歩くだけでミシミシと音を立てる床板、うっすらと汚れが残ったままの窓ガラスに埃がかかったままの棚が見えれば、大した手入れもされていないことがすぐにわかってしまう。シーツだけが洗い立ての白さを主張しているのが唯一の救いか。普段外から人が入ってこない山村に一軒だけの宿とはいえ、これはあんまりではないか。――もっとも、床を軋ませているのはなにも建物の状態が悪いだけではないのだが。
「どうかしましたか」
 床を軋ませている張本人が両手で抱えていた荷物を部屋の隅に慎重に置くと、男に向き直り何かあったのかと聞いてくる。
 それはシスターの服を着た女性だった。どこからどう見てもそれ以外の何者にも見えないそれの正体。彼女とその生みの親の言葉によればアンドロイドだという。その重量と荷物の重さを勘案すれば、床が軋むのもやむを得ない事だろう。
 とそこまでぼんやりと男が思い出していたところで、「何か問題でも」とシスターがもう一度尋ねてくる。
「なんでもない」
 そう言って手をパタパタと振り、男はベッドに腰掛ける。
「それにしても面倒だな、お前の体も」
 男のその言葉が、シスターには何のことか理解できずに器用に首をかしげる。
「お前の動力のことだよ。アンドロイドとかSFの世界の産物だと思っていたが、使われているのは電気自動車と同じバッテリーだって?」
「原理が同じというだけで性能は似て非なるものですが」
 シスターのやや不満げな訂正に男は、だとしてもと続ける。
「自分を動かすためのバッテリーの代えを自分で運ぶなんて」
「確かに非効率ですね。ですが必要なことです。ここでは必要な電力を得られないので」
 確かになと、寂れたド田舎の村の様子を思い出し男は頷く。
「ドクターはこの点の改良案として、小型核融合炉の搭載を検討したそうですが断念したようです」
 小型化の技術がまだないとか万一破損したときに有害物質の飛散を抑える装置の問題などをシスターが語るのを、男はやや引きつった顔をして聞いていた。
「まあ、専門的な話は一旦置いておこう」
 シスターの話を止めた男は、わざとらしく咳ばらいをした後に続ける。
「丘の上にある教会の件だ」
「様子を見に行くとしか聞いてませんが、他に何か?」
「それだけだ、何もなければそれで終わり」
 それで終わりだと楽でいいんだがと呟く男に、困惑気味に首を傾げるシスター。
「とりあえずは明日の昼過ぎに教会に行く。何もなければ夕方までにここに帰ってくる。以上だ」
「明日の天気は午後から雨とのことですが」
「なら教会で雨宿りか。一晩ぐらい泊めてくれるだろ」
 他に決めることも特に無いなと男が言えば、
「では省電力のため、先に休ませてもらいます」
 とシスターが言うな否や、ベッドを軋ませながら横たわり「スリープモードへ移行」との言葉と共にその動きを完全に止めてしまった。
 ご丁寧に目を閉じて、その姿だけを見ればまるで人間。寝息は聞こえず呼吸のために胸が上下することもないが。
 シスターを見てそんなことを考えていた男だが、ここでふと気付く。狭い部屋にベッドは一つ。運よく毛布は椅子の上。
「俺が床で寝るのか……」
 それを想像して男は再びげんなりした。

今回の参加者
A→o
有人零畝
鈴虫

 

時間
30分

 

テーマ

『魔人』『ナイフ』『赤』

 

タイトル

力の代償

 カンカンカンカンカンカン…………
 ビルに備え付けられた非常階段を鳴らして影が一つ駆け上がっていく。
 青年と呼ぶには幼く、服装のそれは少女だが彼は少年だった。
 その容姿は少女に間違えられやすく、学校でもその姿からいじめにあっていた。だが今はその身なりを利用して下半身のことしか考えていない馬鹿な男を釣り、その手に握られたナイフにその血を吸わせていた。
 初めは罪悪感と倫理とに胸が締め付けられて胃がキリキリと傷んだが二回、三回と繰り返すうちに刃がルビーのような赤に染まってくのを見て不安は自身に変わりこの行動が自身を変えてくれるものだと確信するようになった。
 今日もまた下心を隠しもしない男を釣りに街へ出たがそんな男たちと違う目つきの男が気になった。
 知らず知らずと視線を送っているとそれに気がついたのか男は少年に歩み寄る。
「なあ、君」
「なんか用? あぁ、そっか。本番ナシの手だけで三、口でなら四、本番なら八、朝までなら時価。部屋代はそっち持ちだよ」
 何か違うと思ったが所詮はこんな所に来るやつ。他の連中と一緒か。そう思いいつもの値段交渉を始めてみる。しかし。
「そのナイフは手にあまるもんだ」
 返ってきた言葉に少年はドキリとした。そして続く言葉に更に動揺せざるをえなかった。
「その輝きからすると五、六人は食わせたな? どんな理由があるかわからないが悪いことは言わないさっさと捨てるか、俺に預けな。処分しといてやる」
「何いってんの? 理由がわかんないなら口出しすんな!」
 動揺は怒りに変わっていた。
 理由もわからいくせに簡単に捨てろと言った男にこみ上げてきたままに言葉を放った。それでも男はしつこく言う。
「そのナイフを捨てろ」と。
 埒が明かないと少年は駆け出した。
 後ろからは男がずっと見ている。どこに行っても見つけ出せると言わんばかりに。

 非常階段を駆け上がり屋上にたどり着くと室外機の影に隠したバックから一冊の本を取り出し付箋を挟んでおいたページを開く。
 それに従い人が一人立てる位の円と五芒星を描く。そこに星の頂点が逆になるように上に立つとおもむろに服を脱ぎ上半身を晒す。
 ほんのりと筋肉がついてはいたがどうしても華奢に見えてしまう。
 深呼吸を一つするとナイフの刃を出し左の手のひらに当てて皮膚を切る。その傷口からじわり、と血が滲み出て刃を伝い持ち手に達する。
 すると刃の輝きが一層に増し真紅に染まった。それに合わせて五芒星も輝き出した。
 輝きをホッとしたように少年は見ていた。喰わせる数が少ないんじゃないかと思っていたが本のとおりならば成功に間違いはない。そしてこうしてゆっくりと輝きを見ている暇もないこともわかっていた。野次馬やさっきの男がこの輝きを見て来るかもしてないからだ。
 少年はナイフを逆手に持ち両手でしっかりと握ると躊躇うこと無く胸の真ん中めがけ突き出す。
 切先が皮膚を破り、肉を裂き、骨を砕いて心臓に触れた瞬間、手応えがが消えてずぶずぶと胸の中へ収まってく。
 ナイフが影も形もなくなると輝きが消え失せ、室外機の音だけが響く。

「遅かったか」
 少年に声を掛けた男がビルの屋上にたどり着くと息を切らしながら言う。傍らには場違いにも程がある小学生程度の少年が居る。
「ねぇ、アレ食べていい?」
 そう聞く少年を無視して半裸の少年へ歩み寄ると半裸の少年は気怠そうな瞳を寄越した。その口は微かに笑みを浮かべている。刹那。
 男の体は大きく吹き飛ばされコンクリートの床に背中から倒れる。
「チョット手を振るっただけでコレかぁ…………いいねぇ」
 笑みは相手を卑下する笑みに変わり、痛みに呻く男に歩きだす。男の側まで歩み寄ると屈み頭を掴んで強引に上体を起こして自分の顔の前に男の顔を引き寄せた。
「追ってこなければこうならずに済んだのに……不運だったって思いなよ」
 少年は五指に力を込める。その下では男が痛みに絶叫している。
「ハハハ…………アハハハハハハハハハ! 」
 ブシッ!
 何かが破裂し砕ける厭な音がした。
 男の身体がゆっくりとコンクリートに倒れた。男は無事だった。反対に悶え始めたのは少年の方だった。
「何で!? 何で僕の腕が!? 僕は魔人になったはずなのに!」
 腕の破裂が切掛けで同じような破裂が身体中で起き始めた。そうして悶えるうちに少年は動かなくなり肉体が胸の中心へ向けて折れ曲がり捻れて圧縮されていく。そして残ったのはナイフだけになった。
 男は痛む身体を何とか起こしてナイフをを拾い上げると屋上の出入り口に隠れていた少年へ投げた。
「食っていいぞ」
 そう言われると少年は顔だけを異形の者へと変えナイフを丸呑みにした。
「だから捨てろと言ったんだ」
 男は苦い顔をしてそう言うと残った本とバックを拾い上げ階段を降りていった。

今回の参加者
A→o
有人零畝
鈴虫

 

時間
30分

 

テーマ

『魔人』『ナイフ』『赤』

 

タイトル

奇妙な町の事件簿Ⅳ 殺したがりのナイフ

 私の住むこの街では今、奇怪な連続刺殺事件が続いている。
 それは犯行時刻・犯行現場・殺害動機・被害者の特徴など全てがどの事件とも整合性がなく、犯人と思われ検挙された人物達も全員が一切の共通点を持たないものだった。
 私は警察官という職業上なおさらにこの異変に頭を悩ませていたのだった。
「警部、また被害者が出ました。今度は一人暮らしの老人です」
「そうか。これで何度目だったか……。一体いつになれば解決できるのか」
「僕にもわかりません。ただ唯一の共通点は現場から凶器が無くなっている事だけですから」
 私は部下の報告を聞きながら唯一の手掛かりと言える消失する凶器について思案してみる。
 凶器は被害者の傷跡から見て刃渡り三センチほどのナイフの様だと鑑識からの報告が上がっているうえに目撃者の証言もある。確実にそのナイフで犯行を行っているはずなのだが現場でナイフが見つからないのだ。しかも次の犯行にも同じナイフが使われていると推測され、このことが連続的犯行を示しているのだった。
 考えても結論が出なさそうなので、私は自分のデスクから腰を上げ現場に向かうことにした。
「運転はお前がしてくれ」
 部下にそう告げ先に警察署の外に出る。風は生ぬるく嫌なものを感じた。いつからだっただろうかこの街の風は何か得体のしれない不気味なものに変わったしまったのは。
 部下が車を回してくれている間に煙草に火をつけ紫煙を吐き出す。この煙と同じくこの不快極まる空気も消えてくれればいいのにと私は思った。
――
「魔人のナイフ?」
 犯行現場を調査していた私のもとに意味不明な言葉が届いていた。
 それは突然現れた黒髪の女性が発した言葉だった。
「そうです。手にした者が殺人衝動にかられ心で憎む相手を殺す……。そんなナイフですわ」
「信じられん。仮にそんなナイフが存在しているとしてだ、どうしてあなたはそれが凶器だとおもわれているのかな」
「それは……それは私が売ったものだからですわ」
「ふざけるな!こんな与太話聞いている暇などないのだ。それにここは現場だ一般人が入っていい場所ではない」
「わかりましたわ。でも事件を解決する気があるのならばこのメモの書いてあるところに急いで向かってみるといいわ。次の被害者が出る前に…ね」
そう言い残して女は足し去っていった。
「警部。あの女捕まえなくてよかったんですかね」
「………。いや、今はいい。それよりもこのメモの場所に急いで向かうぞ」
「え?信じるんですかあの女の言葉を?」
「私はただこの事件を早急に解決したいだけだよ。早く車を回せ」
 私の第六感が告げていたのだ、あの女の言ってることは本当なのだと。
――
 メモに書いてあった建物の外についたとき、劈くような叫びが聞こえた。
「しまった。間に合わなかったか。いや、まだだ。まだ間に合うはずだ」
 私は建物の階段を駆け上がると、少し開けたエントランスに目が血走っりナイフを持った男と赤ん坊をベビーカーに乗せた母親が居た。
 母親は叫び声を上げながら我が子を守るようにベビーカーにもたれ掛かかり動いてはいなかった。
 それもそのはず男のナイフは既に血で真っ赤に染まっていたのだった。
「動くな!その子に指一本触れてみろ、お前の眉間に穴が開くぞ」
「ふひ…ひひひひ。もう俺の仕事は終わった。次の復讐者は誰かな」
 男は手にしたナイフをポイとベビーカーの方へ放った。ナイフはくるくると弧を描き赤ん坊のほうに吸い寄せられていく。そしてぽとりと赤ん坊の顔の横に落ちた。
 私はほっと一息を下ろし犯罪者の男に目を向けると、今まで狂気に目をぎらつかせていた男はガクリとその場に膝をつき、まるで糸の切れた操り人形のように放心していた。
「け…警部。これで終わったんですかね」
「そうだと私も信じたい。犯行に使われたナイフも回収できそう…」
 赤ん坊がそのナイフを小さな手で握りしめているのが見えた。
 そしてカラカラと狂気に目を光らせた赤ん坊のベビーカーが、放心する男のもとに転がって行っていた。
「な、なんだと! 赤ん坊がナイフを持っているじゃあないか! 早くそのナイフを早く赤ん坊から取り上げるんだ!!」
 そう言い放ち私は弾かれた矢の様に赤ん坊のほうへ駆ける。部下も私の声に呼応し駆け寄った。
―――ブスリ
 赤ん坊のナイフは男のもとには届かなかったが、代わりに私の胸に深く深く突き刺さっていた。
 痛みに意識を失いそうになるなか、駆け寄る部下と赤ん坊の悲痛の叫びが聞こえた来たのだった。
――
「警部さん、体長はいかがですか?」
「ふん。そんなことはどうでもいい、あの後あのナイフはどうなったんだ」
「ナイフですか?仕事熱心ですわね。あの後ナイフは消えてしまいました」
「消えた?それはいったいどういうことだ?」
「あのナイフが本来の目的とは違う要素に使われてしまったから。憎い敵以外の者を傷つけたから、ナイフは自己矛盾し自ら塵になってしまわれたのですわ」
「言っている意味は一切わからないが、もうこれで事件は終わったのか」
「ええ。この連続刺殺事件はこれで終わり。警部さん、安心して休むといいわ」
「そうか。よかった」
 私はここで意識を手放した。安心したからなのか傷口が傷んだせいかはわからないが、今は気絶してもいいような気がしたのだ。