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この豊田湖の豊かなる水を、
黒ずんだ巨大なコンクリート壁で遮るのが、木屋川ダムである。
木屋川は、このダムから落ちる水を源流として、
小さな流れを集めながら豊田町、菊川町、下関市の小月を経て、
周防灘にその旅水を吐き出す。
全長、約二十五キロの州沢氏お気に入りの川である。
以前この川を、州沢氏を含めて、クラブの数名でカヌーで下ったことがある。
木屋川ダムから数百メートル下流の国道沿いに、
ぽつんと一軒の酒屋がある。
この酒屋の自動販売機でビールを補給した。
右に数十メートル進むと、カヌーを降ろすのに、ちょうど良い場所がある。
我々は道端の茂みに車を乗りあげ、ここから川下りをスタートしたのである。
この川を何度も下ったことのある州沢氏が、先頭を行く。
その後を数名が連なり、私は後ろから二番目をキープしながら下って行った。
最後尾を会長の登本氏が全員の安全を確認しながら、ゆっくりと漕ぎ出した。
私は、カヌーを始めてすでに一年以上は経っていたのだが、
乗った回数が少ない為、カヌー理論は一人前以上でも、
技術的には全く未熟であった。
いつも川下りの時は、ゴール迄に数度、沈(転覆すること)するのが恒例であった。
また、この期待に添えないと、
かえって同行のメンバーから白い眼で見られていたのだ。
それゆえに、レスキューの手間をなるべく省き、
速やかに救助体制の行動が取れる様に
最後尾のレスキュー隊に気を遣って、
いつも後ろから二番目を保持する、
自称、心優しき男なのである。
