広島紀行(1)-⑩「〜ブルターニュの光と風〜広島県立美術館

【〜ブルターニュの光と風〜広島県立美術館】

コンクリート打ち放しの建物に入ると、中は光と開放感に満ちた空間が広がっていました。
中央部にある受付を済ませ、斜め右方向に目をやると、高さ10mはあるでしょうか?
2階部分にまで及ぶガラス張りの壁。

そのガラス張りの向こうには美しく手入れされた庭園がありました。





まるで、この風景自体が芸術家による作品のよう。

勿論、
美術館側はそれを意識して、この建造物、この庭を造ったのでしょうが、
もうここにいるだけでヒーリング、癒されます。



この日のように
雨に濡れた庭も風情があり、
『こんな美しい庭を眺めながらお茶でも出来たら最高だな』
などと思っていると、
その願いを叶えるかのごとく、左手にカフェが。

ただ、
あまり時間に余裕がなかった為、
目指すは特別展示室!
とばかりに3階に上がりました。



エスカレーターで上がる間中もこの美しい庭園に釘付けです。

さて、
この期間の展示物として、
「ブルターニュの光と風展」がやっておりました。



ブルターニュ。

それは、
フランス🇫🇷のとある地方で、フランスを星型⭐️に見立てると、丁度左側に突き出た部分、
地図でいうなら、イギリス側に突き出た半島を指します。

画家達を惹きつけた土地らしく、幾人もの画家がここを目指し、その風景や人々を題材に筆を取ったのだとか。

ところで、
最近の美術館、博物館は、かつて考えられなかったことだけれど、写真がOKの場合が結構な頻度であります。

私も子供も気に入った作品を前にスマホでパチリと写真に収めます。

ブルターニュ地方の自然や人々の暮らし等様々な作品が画家達の手によって描かれていましたが、
特に、私の印象に残った作品として3作品ご紹介致しましょう。

まずは、
「パンマールの聖母」。(1896年、リュシアン・レヴィ=デュルメール)

聖母マリアとイエスキリスト、この題材と構図は多くの画家が描いていますが、
これは他の作品と大きく異なっています。
まず聖母は、
よくあるマリア様のようなベールを被っているわけではなく、地方の伝統的な黒い民族衣装をまとっています。
そして、聖母子共に真正面を向いていて、顔も目線も観る者と目が合うこと。

目が合う、
ということで、
何かこちらの心の中を見透かされるような気持ちにもなります。

更に特徴的なのが、
この絵を取り囲む黒みの強い木の額縁。
存在感のある彫刻が施され、このような額縁も珍しくあります。

次に
「 さようなら、ゴーギャン」
(1906年、ポール・セリュジェ)。

この作品は、
これからタヒチへ旅立つ、師であり友人であるゴーギャンとの別れのシーンを描いたもの。
牧歌的な作風の中に、
その時代、その場所、その瞬間にタイムスリップして、2人の画家の別れ際を垣間見せて貰ったような、人生のストーリーを感じました。


最後に、
私を一番釘付けにした作品と言えば、
「さらば!」
(1892年、アルフレッド・ギュ)。

タイトルも衝撃的ですが、私はこの絵の前で暫し動けなくなりました。

ブルターニュ半島の海は、
漁に出た舟が時に転覆し、命を取られることもあるのだとか。

転覆した小舟にしがみつく
父と若い息子。
息子が今まさに息を引き取る瞬間、
父親は、ぐったりして青白くなった息子に最後の接吻をします。

荒波の中、生死の瞬間を描くこの作品は、気迫に満ちて、圧巻としか言いようがありません。

この作品を観られただけでもここに来て良かった、と思いました。




「ブルターニュの光と風」展は、2024年6月2日迄です。


広島県立美術館