広島紀行(1)-⑨「リアルカープ坊やと百年百貨店」


【リアルカープ坊やと百年百貨店】

毎度のことながら、
慣れない土地というのはこうも右左わからないものかと思うわけです。

何故なら、前もって調べていても、いざ動くとなると皆目(かいもく)見当がつかない。

こんな時、役に立つのが、
「自分内大阪のおばちゃん」。

大阪で暮らした経験を自分でそう呼んでいるのですが、わからないことがある時、目ぼしい相手を見つけては、尋ねる。

スマホの地図アプリがあったところで、あえてGPSを作動させていないこともあり、こんな時、人に勝るものはないんですね。

それに、現地の人と接することで、その土地の人の気質等を探るきっかけとなり、➕アルファの体験というおまけも付いてきます。

元来、東日本出身のかもめ母さん。
知らない人に気軽に声掛けなどできないタイプだったけれど、
困った時、助けが欲しい時、アウェイの地ではそんなこと言っている場合じゃない!

まして、アウェイの土地で子育てしていく、って一筋縄じゃいかないものがあります。

こんな時に、大阪暮らしで身に付けた、
知らない人にでも気軽に声掛けする
「自分内大阪のおばちゃん」は、まるで暗闇の中のトンネルに一筋の光を見出すかのような役目を果たしてくれ、すこぶる役に立つのです。

さてさて、
今回の目的地は美術館。

雨降る広島駅に到着したところで、やっぱりさっぱりわからない。

バスに乗っても、
路面電車でも行けそうでしたが、なるべく雨に濡れたくないのでバスで行くことにしました。
 

広島駅は現在大規模な改修工事中で、来春には映画館等も入り、便利で機能的な駅に生まれ変わるそう。

南口正面には、「F」のマークが印象的な「福屋」という地元百貨店があります。

熊本は「鶴屋」、
福岡は「岩田屋」、
佐賀は「玉屋」、
出身の神奈川は「高島屋」…。

地元で愛される百貨店も、地域によって様々だということを、
故郷を離れて初めて知るに至った訳ですが、
生まれて初めて見る百貨店、ロゴからして興味深いなあ、と思います。

この後、福屋さんには何度か足を運ぶことになるのですが、
創業が1929年というから約100年もの間、広島の人に愛されているんですね。

調べてみると、
1945年、原爆の被害に遭い、一時閉店をよぎなくされ、翌年営業を再開されたのだとか。
やはり、広島と原爆は切っても切り離せません。

そんな老舗百貨店の目の前にバス発着場はあります。

見ると、
広島って、バスが充実している様子。
まるで電車のターミナル駅のように、バス乗り場のホームがあり、遠方から来た者にはパッと見、わからない😥

どうやらここ??

と思われるホームに着いたけれど、やはり自信がない。

すかさず、
近くにいた、休日を楽しんできたであろう小学生の男の子と、そのパパさんに声掛けします。

男の子は、
さりげなくカープの帽子を被っています。
首からホイッスルをぶら下げて。

美術館に行きたい旨を伝えると、
カープパパさんは、

「このバス乗り場で
『比治山橋・旭町方面の縮景園入口』、2つ、3つ位で着きますよ。」

と教えて下さいました。

「ありがとうございます。よそから来たので、右も左もわからなくて。」

暫く待っていると、
その父子も同じ行き先らしく、同じバスに乗りました。

その父子が如何に優しいのか、次の行動でわかります。

私達が座り込んだ席の通路を挟んだ隣に座ってくれて、終始、気にかけてくれている様子。

川の多い広島のまち。

バスが橋を渡って暫くすると、赤煉瓦が印象的な女学院が見えてきました。

美術館が見える様子はないけれど、どうやら、そこが最寄り駅のよう。

「ああ、ここですね。」

カープパパさんは
まるで自分のことのように気にかけて下さり、

私は
「ありがとうございました」とお礼を言ってバスを降りました。

こんな些細なやり取りだけれども、ただ、道がわかっただけじゃなく、ネイティブの人との交流って旅の想い出になる。

そしてこの時、互いに子供を連れている訳です。

きっとうちの子も、 カープ帽の男の子も親のやり取りを見て何かを学んでいるはず。

それに、
昨今、日本を訪れた外国人旅行者が
「日本人は優しい」
という印象を受けるそうだけど、
彼らの感じることと、
今置かれている自分の状況は共通しているかもしれない、とも思いました。

さりげないことだけれど、旅先で現地の人にどう接して貰えるかで、その土地の印象って天と地程の差が出ると言っても過言ではありません。

その点では、
広島に着いてから、
優しい人、
(時に感動する位)に何人も出会っています。

あゝ、ここはいい土地だ。


 










(写真)晴れの日の広島駅南口。
3、4枚目は老舗百貨店「福屋」。
5枚目、福屋の包装紙(福屋HPより拝借しました)