ハックスベリーは、かいがいしく、彼に付き纏う老婆を目にして、深いため息をついた。
世話を焼くだけなら、我慢もできる。
しかし、焼餅を焼くのである。
しかも、夜の勤めも、毎日せがむのである。
臣下たちは、主人のハックスベリーの窮地を救い、ひいては自分たちの地位を守った老婆に、最初こそ感謝していた。
しかし、老婆が魔女ではないかとの疑念は、だんだん大きくなった。
ハックスベリーが、彼女との過淫から、だんだんやせ衰えてきたからである。
家臣たちは、彼を元気付けるため、当時諸国を巡っていた旅芸人の一座を、呼び寄せることにした。
旅芸人の一座が城に到着し、余興が終わると、一座の頭領が、家臣にささやいた。
「あの御主人さまのお隣のご婦人はどなたです?」
「わが殿の奥方、エルジェべト様じゃ。」
「何と!」その一座の頭領は声を上げた。
「私は、昔、ある町であのお方そっくりの女を見ましたぞ。」
彼が語る話は、こうだった。
五、六年前、この旅の一座は、ある東方の地方トランシルバニアの街でしばらく興行をおこなうことにしていた。
ところが、その街や周辺では、奇怪な事件が続いていた。
若い女性が、忽然と姿を消し、二度と家族のもとに現れないのである。
一人や二人なら、神隠しにあったことで片付けられよう。
しかし、その数が、半年に五十人にも及んでくると、ただ事ではない。
街の人々は、若い娘のひとり歩きを厳しくたしなめた。
娘の昼間の止むを得ない外出は、家人が付き添った。
夜ともなると、固く戸と窓を閉めて、できるだけ家人が付き添って寝た。
街の支配者の貴族たちは、八方手を尽くして、失踪した娘たちの探索に奔走した。
しかし、彼女たちの行方は杳としてわからなかった。
<続きは、「世の女性が最も望むものは何か?」(7)で!>