バイクに乗せてもらった日は一日ほわほわした気持ちだった。
帰り際に真鍋と自宅の電話番号を交換した。
その日のうちに電話をくれて、学校でも話したのに三時間近く話し込んでしまった。
まだ梅雨の季節。
また雨が続いた。
「今日、俺、電車だから。一緒に帰ろうぜ」
と放課後、私の教室まで来てくれるようになった。
駅のホームで話し込んで、電車を何本も見送った時も多々あった。
お互い乗り換える駅までの、たったのひと区間を恨めしく思った。
出会って二週間ほどで、ほぼ毎日会うようになった。
私はもう、いつも真鍋のことばかり考えるようになってしまった。
細い目。大きな鼻。薄い唇。坊主頭。
カッコ良い顔だとは言えなかった。
ただ、すごく雰囲気があった。
うまく言えないけど、自分をちゃんと知っている感じ。
話が弾んだきっかけはお互い古着が好きだったことで、いつも自分に似合う服を着ていて、私が着ている服と系統が似ていた。
初めて会った日、私がつけていたチェーンウォレットをすごく褒めてくれた。
そして話していて、すごく安心できた。
男の人と話すことは慣れていないのに、緊張したのは初めだけで真鍋にはいろんな話を聞いてもらいたかった。
真鍋も私の話をいつも楽しそうに聞いてくれた。
笑うと細い目がさらに見えなくなる。
私の話で笑ってくれるのが嬉しくてたまらなかった。
「お前、話しやすいんだよな」
あ、同じこと思ってくれてるんだ。
胸の奥がギュッと苦しくなる。
そして、お前と呼ばれることがいやじゃなくなっていた。
ただ、自分の気持ちをどうしていいかわからなかった。
女子校育ちのボーイッシュな女子が、上手に恋を進めていくのは簡単ではない。
何より自分に自信がなかった。
自分みたいなのに好かれても困るだろうな
そんな風に思っていた。
真鍋は相変わらず、ふらっとベンチに煙草を吸いに現れる。
とりあえず、このままで。
今がずっと続けばいいと思っていた。
#思い出話 #片思い