私は子供の頃、祖父母と同居していた。

 祖父は普通の会社員だったが、浄土真宗の熱心な信者で、長男(私の叔父)を僧侶にして婿養子に出した。 

 祖父の口癖は

「人生は虚しい」

「人間は報われないと悟る事が信仰だ」

だった。

 私は単純になんでも叶うっていう宗教じゃないのにやる意味あるの?と思っていた。


 小学生の頃、宮沢賢治の本が大好きで、良く読んでいた。 

「南無妙法蓮華経」というお経がよく出てきて、これを唱えたいなぁと思っていた。

 高校になってテレビで大好きな美輪明宏の霊体験の話をしているのを観ていたら、 

「南無妙法蓮華経」とやはり言っている。

 だが当時はネットもなく、仏教の宗派を調べる事ができず、流行っていたチベット仏教の本をとりあえず読むも、いまいちピンとこなかった。

 

大学受験のために上京して予備校に通った。そこで仲良くなった友達に創価学会の会合に誘われた。

 都心の普通の一軒家に50人以上の老若男女が平日の夜に集まっている。 そこで、全員で仏壇に向かって「南無妙法蓮華経」と唱えだした。 

 

これだ!この宗教に入りたい!

 即決した。

 

きっと宮沢賢治と美輪明宏と同じ宗教なんだ、と思っていた。 

同じ日蓮聖人のご本尊に南無妙法蓮華経を唱える宗教ではあるんだけど、宮沢賢治と美輪明宏は日蓮宗という正統な仏教宗派で別物という事に気付くのはそれからずっと後になってからだった。