25 火葬 | 『大地の花束』人生を楽しもう

『大地の花束』人生を楽しもう

長男の大地が言っていた「楽しむ」という言葉を実践してみようと思い、2021年風の時代スタートを機に記事の内容を変更しました。

ベルモニー会館から約30分で火葬場に到着。

そのまま火葬炉の前まで案内され、ご住職が短いお経を唱えた後、棺の顔の部分の扉を開けて大地に最後のお別れをします。

機械的な火葬炉を目の前にして、どんなに泣き叫んでも現状は変わらない、火葬することを止められない。そう思った時に私の力は尽きてしまいました。ただただ手を合わせて、心の中で「さようなら、ありがとう」と囁いて、点火スイッチが押されるのを見届けました。

ここにいる私達も、1人の例外もなく、この体の寿命が尽きた時には火葬されると思っていても、15歳の大地の体が私達の目の前で火葬されるなどということは、想像すらした事がなく、まるで映画を見ているようなフワフワとした、現実と非現実の間をさまようような感覚だったと思います。

 

1時間位の待ち時間の間、親族同士が大地の事や近況の報告など、会話を交わす事で凍りついた心を溶かしていこうという雰囲気が漂っていました。次男や姪っ子、甥っ子達は子供ならではの無邪気さを発揮してくれて、場を和ませてくれています。

 

1時間が過ぎ、収骨の準備が整ったので部屋へ移動しました。

ステンレスの寝台の上には、大地の骨だけが横たわっています。

担当の方から、「骨壷に全ての骨は入らないのですが、主要な骨だけ収めるか、細かく砕いて出来るだけ多くの骨を収めるか、どちらにされますか」、と質問があり、私は「主要な骨だけ入れてください」と答えました。

寝台はまだまだ熱を帯びていて、担当の方は耐熱の手袋をして、大地の骨の説明をしながら、骨壷の口に入る大きさに砕いていきます。喉仏を取り上げて、「仏様が合唱をしている手の形に似ていることから、喉仏と言われています」と説明され、みんなが静かに「ほんとだー」とうなずきました。「若いから大腿骨は太いですね」とも言われていました。

この頃になって初めて、妻がそばにいない事に気付き振り返ると、入り口近くの壁際に寄りかかって泣いているのが見えました。

私は「しまった」と心の中で思いましたが、部屋から1人連れ出すことも出来ず、側に寄り添うしかありませんでした。

いよいよ骨壷に骨を入れていく事になり、「喪主さんからお願いします」と呼ばれてしまいました。妻は号泣していてとても動ける状態ではなかったので、次男と私の2人で数回骨を拾い、骨壷に収めました。その後は親族の方々にお任せして、妻の側に付き添っていました。

骨壷は箱に入れてカバーをかけられ、家族の誰かが持ち、部屋から退出するとの事で、妻に「持つ?」と声をかけましたが、大きく首を横振ったので、私が抱えて、外に待つバスまで歩きました。バスの座席に座って膝の上に乗せると、骨壷は暖かく、まるで赤ちゃんの大地を抱っこしていた時の感覚に似ていました。この時は、大地を送り出すという使命を全うした感覚と、何故か膝の上にちっちゃい大地が載っている感覚で、悲しみを通り越した安堵感につつまれていました。

 

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海岸 (高校で新しく同級生になったメンバーと寄り道したのかな?)