🔳幸せホルモンと呼ばれるセロトニン:

 

セロトニンは幸せホルモン(脳内神経伝達物質)と呼ばれ、脳をリラックスさせたり、さまざまな効果をもたらしてくれることで知られています。

脳内には、3大神経伝達物質と呼ばれるものがあり、

それは、

ドーパミンノルアドレナリン、それとセロトニンです。

セロトニンの役割には、ドーパミン(喜び、快楽など)やノルアドレナリン(恐怖、驚きなど)などの情報をコントロールし、精神を安定させ、落ち着きを得られる働きがあります。

 

セロトニンが低下すると、これら2つのコントロールが不安定になりバランスを崩すことで、攻撃性が高まったり、不安やうつ・パニック症(パニック障害)などの精神症状を引き起こすといわれています。

 

マスメディア等でしばしば取り上げられるのは、どうしたら、このセロトニンを増やすことができるかという点です。

 

そのセロトニンを増やす食べ物として、テレビ等マスメディアで、バナナが紹介されることも多いようです。実際、バナナにはセロトニンを作るために必要な栄養素、トリプトファン、ビタミンB6、炭水化物がすべて含まれています。

 

トリプトファンというのは、セロトニンの基となる、体内で合成できない必須アミノ酸の一つで、食事から摂取する必要があります。バナナの他にも、牛乳・チーズ、大豆製品等にも多く含まれているそうです。

 

トリプトファンは、幸せホルモンのセロトニンになった後、体内時計を整えたり、夜の寝つきを促したりする睡眠ホルモン、メラトニンになることも、しばしば語られています。

 

このような報道の背景には、うつ病にセロトニンが関連していること、さらに、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)というセロトニンの受容を多くする点に特化した薬が製品化されたことがあるように思います。

 

うつ病、パニック障害、恐怖症の治療薬として、精神科・心療内科で、近年最もよく使われているのが、SSRIです。

 

ここで、SSRIのわかりやすい図が、ウィキペディアに掲載されて

いたので、使わせていただきます。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%B8%E6%8A%9E%E7%9A%84%E3%82%BB%E3%83%AD%E3%83%88%E3%83%8B%E3%83%B3%E5%86%8D%E5%8F%96%E3%82%8A%E8%BE%BC%E3%81%BF%E9%98%BB%E5%AE%B3%E8%96%AC

 

セロトニン神経は脳幹に存在し、その数はヒトの場合、数万個といわれますが、これは脳全体で140億の神経細胞があるなかのほんのわずかな量です。このわずかなセロトニン神経が、脳全体にセロトニンを分泌させるという構造的特徴をもっています。

 

 

Medical Note「脳におけるセロトニン神経の特徴」より

https://medicalnote.jp/contents/150918-000001-HCXWEA

 

神経は、シナプスという構造で繋がっており、シナプスの情報伝達に、神経伝達物質(ここではセロトニン)が使われます。

前シナプスから放出されたセロトニンは、次のシナプスの受容体に結びつくことで、情報を伝えますが、余分なセロトニンは、トランスポーターで再取り込みされ、再び

使われることになります。

SSRIは、このトランスポーターを塞ぎ、再取り込み阻害し、結果的に多くのセロトニンが、次のシナプス受容体に届くような働きをしています。

多くの宣伝では、SSRIは、疾病やストレスによって減少したセロトニンを増やすかのように言われていますが、それは間違えで、セロトニン自体を増やしているわけではありません。

 

そのため、SSRIによって少し元気になったところで、また無理をしてストレスをためることを繰り返していると、結局、SSRI依存することになり、長期間、服用し続けるということが起きてしまいます。

 

ある日突然、うつ病が「心の風邪」などと呼ばれるようになり、“病院に行けば容易に治療できる”のだと、宣伝しているよう思われます。これは、SSRIという薬の発明との関係性が疑われます。

実際、次のような見解が述べられています。

 

―――うつ病が20世紀になって増加しているが、SSRIの普及と軌を一にする。SSRIという薬価が高いうつ病の薬が販売されると世界各国で軒並みうつ病患者が増え、その背景には製薬会社の病気喧伝キャンペーンが影響している。SSRIの導入後、6年間でうつ病の患者が2倍に増えるという経験則がある。―――ウィペディア「セロトニン」より

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%AD%E3%83%88%E3%83%8B%E3%83%B3

 

ところで、こちらは、あまり知られていませんが、

このセロトニン、脳内で生産され、幸せホルモン(脳内伝達物質)として使われる量は、身体全体で作られる量のたった5%なのです。

残りの95%は、腸内で作られます。

しかも、腸内で作られたセロトニンは脳の関所である血液脳関門(=血中から脳に移動する物質を制御する)の働きで脳内に移動できません。

 

では、腸内で生産されるセロトニンは、どのような役割をしているのでしょうか。

 

―――1980年代にアメリカのコロンビア大学医学部の解剖生物学教授マイケル・D・ガーション博士が「腸はセカンドブレイン(第2の脳)である」という学説を発表しました。

 

研究では腸は脳や脊髄の指令がなくても反応を起こせる神経系を持っており、腸の神経細胞は独立したネットワークで他の消化官と協調して働き、他の臓器にも直接指令を出していることが分かりました。

 

つまり、腸は脳と同じように神経細胞同士で情報伝達をしており、神経細胞が脳に次いで2番目に多いことから「腸はセカンドブレイン」と呼ばれているわけです。―――curious「セロトニンを作る場所は「腸95%・脳5%」でそれぞれ作用も違う」より。

https://re-curious.com/serotonin-synthesis-location/

 

🔳腸内で作られるセロトニンの役割:

 

今回、この腸内で生産されるセロトニンに興味を持ったきっかけは、先に挙げた抗うつ薬として知られるSSRIの副作用に、嘔吐感があるということからでした。

 

腸内セロトニンの働きの一番は、正常に便が排出されるための蠕動(せんどう)運動(=腸内の便を肛門まで運ぶ)にかかわっているということです。

 

そのため、腸内で作られるセロトニン量が不足すると蠕動運動がされないため便秘の原因となってしまいます。

逆に腸内で過剰にセロトニンが作られると、蠕動運動が活発化し過ぎたために消化不良のまま便が排出されてしまい下痢の原因となります。

第2の働きは、腸以外の消化管、臓器の運動を制御するといった作用を持っていることです。

つまり、胃の活動が抑制され、動きが不活発化するとともに、消化吸収されなくなることを意味しています。

そもそも、嘔吐の仕組みは、

以前に説明した通り、

 

―――食べ過ぎた時、飲み過ぎた時、異物を体内に取り込んだ時、体調の悪い時、胃が弱っている時に、消化しきれない内容物を、胃が強く収縮することで身体の外に出す、自然な生理現象で、身体が正常に機能している証です。

また、突然のピヨピヨは、意識的に止めることはできません。まず、十二指腸で十二指腸から胃に向かう逆蠕動(せんどう)運動が起き、胃の上部の筋肉の緊張が抑制されます。続いて、食道下部の筋肉、噴門(ふんもん)が緩みます。その後に十二指腸で起きた蠕動の波が押し寄せてきます。―――「ピヨピヨ恐怖症の方へ」

 

下痢と嘔吐。つまりは、腸内のセロトニンが過剰に分泌されたときの状態は、病原性大腸菌の感染、毒物や異物を胃に取り込んだ時の反応、あるいは胃が弱っている時の反応とそっくりです。

 

SSRIの消化器系における副作用は、

吐き気、嘔吐、便秘、下痢、食欲不振、口渇などの症状があらわれる場合があると説明されていますが、便秘を除くその他の症状は、腸内セロトニンの過剰反応とかかわっていることが推察されます。誰にでも出る副作用ではありませんが、特に胃腸の働きに敏感な方には、出やすいと言ってもいいでしょう。

 

(ちなみに便秘ですが、これは、ぼくも経験しています。うつ病になり、SSRIの服薬を始めてから、便秘が続くようになり、また、緊張性の頭痛も強くなりました。そのため、下剤と抗頭痛薬としてベンゾジアゼピン系の筋弛緩剤を合わせて服用しています。

ストレスが、心にではなく、体に出ているような印象です。)

 

服薬したSSRIは、当然腸内のセロトニン神経にも届き、シナプス間での再取り込みを阻害するでしょう。結果的に、腸内で過剰にセロトニンが作られたのと同じ症状が出てもおかしくはありません。

 

その他にも腸内で作られるセロトニンには、重要な働きがあり、体内のセロトニンの95%が腸に集中している意味が分かります。

・体温の調整

・痛みの認知

・疼痛閾値の調節

・脳血管の収縮活動の調節

・止血・血管の収縮作用(血液中の血小板)

などです。

 

🔳セロトニンの起源:

 

ところで、ヒトにおいて心の安定に重要な働きを行うセロトニンは、いつの時代からどのようにできたのでしょうか。主に、セロトニンが腸内で作られているのを知ると、脊椎動物が出現する以前から存在した可能性が大きいように思います。

 

他の生物では、どのように使われているのでしょうか。

再び、ウィキペディアによると、

―――セロトニンは、たいていの動物で神経伝達物質として機能し、ポジティブな出来事があると分泌される。例えば、食物の新しい供給源を見つけた場合とか、オスが繁殖相手のメスを見つけた場合である。

 

―――脊椎動物において、心血管系、体温コントロール、日周リズム、食欲、攻撃、性行動、感覚運動反応、学習、痛み感覚などに関与する。―――

これらは、腸内セロトニン脳内セロトニンの両方から見られる作用のようです。

 

また、

―――植物も産生する。果物は、種を広範囲に蒔くために、下剤成分を含むことがある。植物セロトニンは動物の消化管運動に影響を与える。―――

 

さらに、

―――単細胞生物は、いろいろな目的でセロトニンを生産する。動物の消化管に寄生するある種のアメーバは、セロトニンを産生し宿主に下痢を起こさせて感染を広げる。―――

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%AD%E3%83%88%E3%83%8B%E3%83%B3

 

と、かなり古そうです。

単細胞生物が、どのような目的で、セロトニンを生産しているのかまでは、今回、調べきれませんでした。

 

ただ、ここで挙げた植物やアメーバが、動物の消化器官に影響を与えるためにセロトニンを生産しているという点は、消化器官を持つ動物の存在を前提にしている訳ですね。

 

そして、人体においても、体の中で最も起源が古い器官が、腸だと考えられています。

イソギンチャククラゲ(これらは、カンブリア紀に出現した刺胞動物)に消化器官が認められます。さらに、腸の最も原始的な姿はヒドラという生物で見ることができます。ヒドラ(刺胞動物)というのは5mmほどの筒のような体の上端に口と触手を持っている単純な構造の水生生物で、「全身が腸」ともいえるような特徴的な生き物です。刺胞動物の出現は、先カンブリア紀です。

 

となると、脳という神経細胞の集まりは、捕食活動、及び消化器官の発達と関連がありそうですね。

 

Aquarium Favorite「ヒドラ」より

 

 

また、捕食する(植物のように自分で栄養を作ることをしない)生物にとって、消化、あるいは異物・毒物を摂取した時にそれを体外に急速に排出するということは、生命維持に欠かせない重要な働きです。
そういうところに、セロトニンが使われていることになります。
 
神経系統を持たない植物や単細胞生物が、単なる神経伝達物質以外に、セロトニンをなんらかの役割を持たせて生産し、使用しているということは、さらに生命維持にかかわる根源的な役割を持った物質なのかもしれません。

興味はつきませんが、今回は、このあたりで終了します。
また、新しい気づきがあったら、ご報告いたします。
 

 

 

 

以上

 

 

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