被爆者の歌集を作成 一橋大大学院の佐藤さん「形に残して後世につなげたい」 | ヒロシマ平和公園の四季 第2部

ヒロシマ平和公園の四季 第2部

原爆投下により広島の街は「ヒロシマ」に変容しました。その悲劇から70年あまり平和な町に復興しました。しかし、平和公園には「ヒロシマのこころ」が息ずいています。四季の移ろいとともに語り継ぎます。

 

広島市立大出身で一橋大大学院1年の佐藤優さん(22)=東京都八王子市=が、戦争や平和をテーマに被爆者の切明千枝子さん(94)=広島市安佐南区=が詠んだ短歌の歌集を作っている。8月6日の出版へ、「形に残して後世につなげたい」と編集作業に力を注ぐ。

 広島から戦地に向かう日本兵の様子、動員学徒として働いた女学校時代の思い出…。歌集「ひろしまを想う」には15歳で被爆した切明さんが実体験を基に詠んだ約400首が載る。

「かくれんぼかくれしままに消え失せし友を探して今日まで生きぬ」

は被爆死した友人への思いを込めている。

 佐藤さんは市立大在学時の3年前、被爆証言の催しで切明さんと知り合った。短歌を新聞に寄せたのを機に60年近く歌人として活動する切明さんが個人の歌集を編んだことがないと聞き、今春、出版を提案。上京後も編者として切明さん方に通って打ち合わせを重ね、14日も構成を詰めた。

 A5判で800部を刷り、千円で販売予定。8月3日に広島市内で出版記念行事を開く。切明さんは「私が亡くなったら誰の記憶からも消える犠牲者もいる。詠むことで追悼し、戦争のむごさが伝わってほしい」と話す。佐藤さんは「限られた文字数から当時の様子を一つ一つ想像できる。多くの人に読んでほしい」と願う。(山下美波)