新選組始末記 市川雷蔵主演 三隅研次監督作品 | 俺の命はウルトラ・アイ

新選組始末記 市川雷蔵主演 三隅研次監督作品

『新選組始末記』

映画 トーキー 93分 カラー

昭和三十八年(1963年)一月三日封切

製作国 日本

製作言語 日本語

製作会社 大映京都

 

企画 辻久一

原作 子母沢寛

脚本 星川清司

撮影 本多省三

音楽 斎藤一郎

美術 太田誠一

録音 奥村雅弘

照明 伊藤貞一

編集 菅沼完二

助監督 友成稔議

スチール 藤岡輝夫

 

出演

 

市川雷蔵(山崎烝)

 

藤村志保(毛利志満)

天知茂(土方歳三)

 

松本錦四郎(沖田総司)

小林勝彦(谷三十郎)

成田純一郎(楠小十郎)

毛利郁子(桔梗屋小栄)

近藤美恵子(深雪太夫)

島田竜三(古高俊太郎)

勝原礼子(お梅)

 

丹羽又三郎(岡本久三)

中村豊(杉山松助)

矢島陽太郎(佐伯亦三郎)

高見国一(大津彦平)

千葉敏郎(平山五郎)

香川良介(広沢富次郎)

須賀不二男(新見錦)

小松みどり(婆や)

 

田崎潤(芹沢鴨)

城健三郎(近藤勇)

 

監督 三隅研次

 

 

市川雷蔵=二代目市川 莚蔵

      =八代目市川雷蔵

 

 

奥村勝=若山富三郎→城健三朗

   →若山富三郎

 

鑑賞日時場所

平成十一年(1999年)十二月三日

朝日シネマ1

 山崎烝は浪々の暮らしを一転する為

京都壬生を本拠地とする新選組隊士に

志願することを決める。恋人毛利志満

にとっては賛成することが無理だった。

 

 烝は局長近藤勇を篤く敬っていた。

筆頭局長芹沢鴨は粗暴な振舞が多い。

諫める近藤に芹沢に怒る。

 近藤は土方歳三と謀って芹沢鴨一党

を暗殺し組の実権を掌握する。

 

 局長近藤・副長土方の体制は強固に

なる。

 烝は冷酷な土方歳三の主峰に疑問を

感じる。

 土方は烝の純真な在り方を警戒し

策謀を為し、彼に公儀役人を斬らせ

る。これを契機に土方は烝を責めて

切腹の処罰を下そうとした。近藤は

烝に勤皇方の探索を命じる。

 

 ◎三隅研次演出版新選組物語◎

 

 市川雷蔵は昭和六年(1931年)八月二十

九日京都府京都市に誕生した。出生名を亀崎

章雄と申し上げる。三代目市川九團次の養子

となり、昭和二十一年(1946年)十一月二

代目市川莚蔵の芸名で初舞台を踏む。

 

 昭和二十六年(1951年)四月三代目市川

壽海の養子となり同年六月大阪歌舞伎座にお

いて八代目市川雷蔵を襲名し本名を太田吉哉

に改める。昭和二十九年(1954年)大映所属の

俳優となった。

 大映において映画俳優・映画スタアとなった

雷蔵は深い演技力で存在感を明示した。

 

 烝は満年齢三十一歳の若さで勤めた。

 

 

 昭和四十四年(1969年)七月十七日、満年齢

三十七歳の若さで死去した。

 

 藤村志保は昭和十四年(1939年)一月三日神
奈川県に誕生した。本名は薄操(すすき・みさお)
で後に静永操(しずなが・みさお)となった。

 烝を見守る志満の優しさを繊細に表現した。

 

  昭和四年(1929年)九月一日、奥村勝は東京
府に誕生した。後に若山富三郎・城健三朗・若山
富三郎の芸名で銀幕の歴史に強烈な存在感を示
した。平成四年(1992年)四月二日、六十二歳
で死去した。

 満年齢三十三歳で近藤勇を凄み豊かに演じた。

 

 三隅研次は大正十年(1921年)三月二日に誕

生した。

 日活京都に入り、昭和十七年(1942年)招集さ

れ、滿洲配属となり、昭和二十二年(1947年)まで

シベリアで抑留生活を送る。

 

 戦後大映に入り、衣笠貞之助や伊藤大輔に学ん

だ。

 

 時代劇巨匠として数々の傑作を発表した。秀麗

な映像で妖気を描いた。

 

 満年齢四十二歳で山崎烝の新選組内の苦闘を

鋭い演出で描いた。

 昭和五十年(1975年)九月二十四日五十四歳で

死去した。

 

 純粋な憧憬から新選組に入った山崎烝は残酷

な権力闘争に悩むが密偵の仕事を働き新選組内

で活躍すると脅威を斬らなければ生き残れない

有り方を実感する。新選組の一員として生きる

在り方を流血を通して選び抜く。

 

 近藤勇を城健三郎後の若山富三郎が重厚に

演じる。その迫力に圧倒される。

 

 冷酷非情な土方歳三を天知茂がシャープな

芸で鮮やかに表した。

 

 田崎潤の芹沢鴨が気の毒に思える程、本作

の土方は策士で罠に嵌める手法が鋭い。

 

 冷静な沖田総司を深い芸で表現した松本錦

四郎の存在感も光っている。

 

 ウィキペディアによると本作は藤巻潤主演

で、白黒で製作される予定であったという。

市川雷蔵が希望し「格上げ」でカラー版製作が

決まったという。この時代映画会社はカラー

企画を白黒企画より優位に位置付けていた。

 

 新選組の血で血を洗い強敵を斬るという手法

に烝は入り、その中で活動する者となっていく。

 

 心配する志満の瞳でドラマは終わる。

 

 初心な若者が殺人マシーンの一人となる。

 

 組織と個人の関係を伝える名画でもある。

 

 三隅研次は冷徹な眼で冷静な演出を為した。

 

 それによって流血の痛ましさが観客の心

に強く迫ってくる。

 

 八代目市川雷蔵が三隅研次の期待に応え

苦闘する山崎烝の道を深い芸で歩んだ。

 

 

                合掌