琉球ロマネスク テンペスト 2011/3/6 新歌舞伎座(2) | 俺の命はウルトラ・アイ

琉球ロマネスク テンペスト 2011/3/6 新歌舞伎座(2)

『琉球ロマネスク テンペスト』

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 原作/池上永一 (『テンペスト』 The Tempest)

 

 脚本/羽原大介

 音楽/見岳章

 美術/BOKETA



 

 出演/

 

 仲間由紀恵(真鶴=孫寧温)



 

 山本耕史(浅倉雅博)


 

 福士誠治(孫嗣勇)

 安田顕(喜舎場朝薫)

 伊阪達也(尚泰王)


 

 西岡徳馬(孫嗣志、徐丁垓、老人、マシュー・ペリー)


 

 生瀬勝久(聞得大君 真牛)


 

 野際陽子(語り)


 

 演出/堤幸彦

 

 

 絶世の美女真鶴は孫家の娘で舞踊の名手である。

 

 女性は学問を修めることを禁じられていた時代

であった。

 

 真鶴は差別に悲しみを感じつつ、父の死後宦官孫寧

温(そんねいおん)に扮して、男の姿で生きることを

選び、王府の役人として頭角を現す。

 

 兄嗣勇の優しさに支えられ、薩摩武士浅倉の求愛を

受け、真鶴は琉球の危機を救う為尽力し、王宮の陰謀

によって流刑されても希望を失わない。美しさと踊り

が評判になり、王宮に召され、尚泰王の側室になる。

 

 ペリーの黒船来航の時代、琉球王朝は孫寧温の手腕

を求め、真鶴は寧温の姿にも戻って、ペリーを説得し

た。

 憎悪に燃える真牛(もうし)の告発により、真鶴と孫寧

温の関係が暴かれた。

 

 世は明治になり、真鶴は思い出の木の前に立つ。

そこへある男性がやってきた。


 

 仲間由紀恵の美しさは輝いている。愛と優しさに溢

れるヒロイン真鶴は、由紀恵ちゃんの為に書かれた

役でもあると思った。少女時代から踊っておられた琉

球舞踊に息を飲み感嘆した。

 男装の麗人として寧温も爽やかな魅力が溢れていた。

 

 原作者の池上永一は、ウィリアム・シィクスピアの戯

曲The Tempest(邦題『テンペスト』『嵐』『あらし』)

にちなんで物語のタイトルを決定した。

 

 女性真鶴が男装して寧温として活躍するという設定に、

女性ヴァイオラが男装してシザーリオとして暮らすとい

うTwelfth Night『十二夜』を想起させてくれる。

 

 この舞台を見ながら、仲間由紀恵のヴァイオラ=シザー

リオも当たり役になると思った。

 

 山本耕史の浅倉雅博も素敵で逞しかった。薩摩隼

人の武骨さが溢れていた。精悍な武人で、それでい

て、繊細で純な性格が光る。沢山の時代劇に出演さ

れた経験が反映して殺陣・立ち回りも見事であった。

 

 福士誠治の嗣勇は、おかま喋りに強烈な印象を残

しつつ、妹思いの気持ちを丁寧に表現した。

 

 西岡徳馬の怪演は、凄かった。好色で陰湿な性格で

真鶴にも言い寄ってセクハラする宦官徐丁垓役で、憎

たらしさを粘り表現した。徐丁垓は悪い奴なんだけれ

ども、阿片と権力に飲まれてしまって道を失い墓穴を

掘る人間の哀れささえも、この舞台は伝えてくれた。

 

 ペリー役も味わい深かった。

 

 けれども自分が一番強烈だったのは、八重島の老人役

だ。真鶴の舞踊を見て、その美貌に感嘆した言葉が印象

的である。


 

  「おお、そこの美しい娘。おお、ほれ、ほれ。

  そなたじゃ、そなた。そこの美しき隣人」

 

 

 アドリブを見事に決めてくれた。


 

 生瀬勝久の聞得大君・真牛の迫力は凄かった。

怪しく凄味があり、野望に燃える権力者をリアル感

豊かに現した。

 神官聞得大君において権力者の座にいた彼女は失脚し

て、ジュリ(遊女)になるが、そこで、「大日本帝国万歳」

を歌う帝国軍人を叱咤して琉球の誇りを説く大詰めが印象

的あった。

 ラストで真鶴が思い出の木の前で、素敵な男性と再会し

て平和を祈るシーンに胸が熱くなった。

 

 2011年3月21日記事を再編した。

 

                       合掌