コントラクト・キラー | 俺の命はウルトラ・アイ

コントラクト・キラー

『コントラクト・キラー』

I Hired a Contract Killer

映画 トーキー 79分 カラー

 

1990年10月12日 フィンランド封切

平成三年(1991年)三月九日 日本封切

 

製作国 スウェーデン 

    フィンランド

 

製作会社 ヴィレアルファ・フィルム・プロ

 

製作 アキ・カウリスマキ

脚本 アキ・カウリスマキ

編集 アキ・カウリスマキ

原案 ペーター・フォン・バック

撮影 ティモ・サルミネン

 

出演

 

ジャン=ピエール・レオ(アンリ・ブーランジェ)

 

マージ・クラーク(マーガレット)

 

ケネス・コリー(殺し屋)

 

ジョー・ストラマー

アンジェラ・ウォルシュ

セルジュ・レジアニ

 

監督 アキ・カウリスマキ

 

鑑賞日時場所

平成四年(1992年)三月三十一日

大毎地下劇場

 

 アンリ・ブーランジェはロンドンの会社

で働くフランス人である。15年間勤務して

いた水道局から解雇を告げられたアンリは

深い悲しみを覚えた。

 

 自殺を図ったアンリだが、試みは全て失敗

し死にきれず命を拾った状態に在った。生きる

希望が見いだせず、絶望的心境にあったアンリ

は、新聞記事から必殺の殺し屋コントラクト・

キラーの存在を知る。

 

 コントラクト・キラーに自分殺しの依頼を

頼むべく会談のビルに着いたアンリはスタッフ

の頭領に希望を伝えた。

 

 自殺しようとしても死ねないアンリは、コ

ントラクト・キラーの親玉に「わたしを殺して

くれ」と頼み、承諾を貰い死を待つ身となった。

 

 バーで花売り娘マーガレットを見たアンリは

一目惚れする。アンリの想いをマーガレットは

受け入れてくれた。

 

 アンリは生きる喜びを取り戻した。必殺のコ

ントラクト・キラーに自分殺しを依頼してしま

った。

 「コントラクト・キラーの親玉に依頼取り消

しを頼めばよい」というマーガレットの指導を

聞き、アンリは会談をしたビルに向かった。と

ころがビルは取り壊されていた。

 

 凄腕の殺し屋がアンリを狙っていた。アンリ

はマーガレットと逃げる。殺し屋の部下達がな

した強盗の罪を、アンリ・マーガレットは疑わ

れる。警察からも追われるアンリは懸命に逃げ

る。

 

 殺し屋は末期癌の状態にあり、アンリ殺しの

仕事を為すことに職業のプライドを賭けていた。

 

 アンリはマーガレットと再会し逃げる。

 

 駅で殺し屋はアンリとマーガレットを見つけ二

人のもとに向かった。

 

 ◎いのちの確かめ◎

 

 Jean Pierre Leaud ジャン=ピエール・レオ

ーは1944年5月28日にフランスに誕生した。

 少年時代にフランソワ・トリュフォー監督作

品『大人は判ってくれない』に出演し、主人公

アントワーヌ・ドワネルを深い表現力で勤めた。

 

 アンリ・ブーランジェは46歳で演じた役であ

る。長年勤めた水道局から解雇され、悲しみか

ら自殺を試み、命を拾ったが希望はなく、自分

殺しをコントラクト・キラーに頼み、恋をして

生きる希望を回復し懸命に殺し屋から逃げて生

きることの尊さを確かめる。

 

 

 死から生へ、悲しみから喜びへ、恐怖から防

衛へ。ジャン=ピエール・レオはアンリ役を探

求し、命をいきることの尊さを表した。

 

 ケネス・コリー Kenneth Colleyは1937年

12月6日にイギリスに生まれた。53歳で殺し屋

を重厚に演じた。

 『BBCウィリアム・シェイクスピア全集』(

NHK シェークスピア劇場』『尺には尺を』Measure

 for Measure(イギリス放送1979年2月18日 

日本放送 1981年8月30日 監督デズモンド・

デイビス)において主役公爵ヴィンセンショーを

深い芸で演じた。『尺には尺を』は字幕無しでブ

リッティッシュカウンシルで上映されたことが

あり、私は鑑賞した。1982年から1984年の出

来事であった。字幕無しは厳しかったが、勉強

になった。

 

 素敵なヒーローヴィンセンショーから21年、

病に冒された凄腕殺し屋をケネス・コリーが

渋い演技で表現した。

 

 

 

 Aki Kaurismäki  アキ・カウリスマキは195

7年4月4日フィンランドに誕生した。フィンラン

ドの監督・脚本家・編集者・プロデュ―サーであ

る。

 33歳の若さで『コントラクト・キラー』の

製作・脚本・編集・監督を担当した。

 

 小津安二郎を崇拝するアキ監督は静かなムー

ドで滑らかに鮮やかに物語を語る。

 

 解雇への悲嘆から死を決めたアンリがマーガ

レットとの恋から生きる意欲を見出し、凄腕の

殺し屋の魔の手から逃げる。

 

 追う殺し屋は末期癌に冒されている。彼も又

悲しみを観客に伝える存在である。

 

 アキ・カウリスマキは繊細かつリズミカルに

ドラマを進める。

 

 終映の後、観客の心を暖める。時は悲しみで

いっぱいにする。

 

 アンリが学んだ幸の尊さに瞠目した。

 

 引用した画像は、今年1月パルしねましんこう

えん再上映された時のポスターである。約32年

ぶりに見聞したかったのだが、スケジュールの

都合で断念した。

 

 前述の通り大阪にあった名画座大毎地下劇場

で1992年3月31日に鑑賞し衝撃を受けた。スク

リーンで見直し聞き直したい名画である。

 

 カウリスマキ映像詩がフィルムに光る。ドラマ

の理想を極めている。

 

 ジャン=ピエール・レオの繊細な演技はアンリ

に光っている。

 

                  合掌