本陣殺人事件(弐) 高林陽一監督作品  金田一耕助/中尾彬 | 俺の命はウルトラ・アイ

本陣殺人事件(弐) 高林陽一監督作品  金田一耕助/中尾彬

『本陣殺人事件』

映画 トーキー 106分 カラー

昭和五十年(1975年)九月二十七日封切

製作国 日本

製作言語 日本語

 

製作 たかばやしよういちプロ

   映像京都

   ATG

配給 ATG

 

企画 葛井欣志郎

製作 高林輝雄

   西岡善信

原作 横溝正史

 

脚本 高林陽一

音楽 大林宣彦

撮影 森田富士郎

美術 西岡善信

 

装飾 藤谷辰太郎

録音 中沢光喜

音響効果 倉嶋暢

整音 林士太郎

撮影助手 宮嶋正弘

美術助手 加門良一

録音助手 新田基継

照明 山下礼二郎

照明助手 石原喜三

編集 谷口登司夫

擬斗 美山晋八

製作主任 静川和夫

     徳田良雄

記録  松尾郁子

俳優事務 内海透

スチール 大椙かつ爾

     小山田幸生

製作協力 大映京都撮影所

婚礼衣装提供 ワタナベ衣装KK

婚礼メイク 美容室トーエイ

 

出演

 

田村高廣(一柳賢蔵)

 

高沢順子(一柳鈴子)

水原ゆう紀(久保克子後に一柳克子)

 

東野孝彦(磯川常次郎警部)

常田富士男(三本指の男)

 

新田章(一柳三郎)

東龍子(一柳糸)

加賀邦男(久保銀造)

 

伴勇太郎(一柳良介)

山本織江(一柳秋子)

三戸部スエ(煙草屋の女性)

小林加奈江(お直)

石山雄大(田谷照三)

中村章(刑事A)

花岡秀樹(刑事B)

服部絹子(女中清)

沖時男(源七)

原聖四郎(村長)

海老江寛(伊兵衛)

 

村松英子(白木静子)

 

中尾彬(金田一耕助)

 

大林宣彦=學草太郎

 

東野孝彦=東野英心

鑑賞日時場所

平成十八年(2006年)五月二十四日

高槻松竹セントラル

画像はインターネットより拝借引用

している。

 

令和五年(2023年)五月二十四日発表記事を

再編している。

 時は昭和五十年頃、場は岡山県。広大な

敷地を持つ一柳家は徳川期から宿場の本陣

で強大な力を持つ旧家であった。

 

 野辺の送りが進む。亡くなった存在は一柳

の若い娘鈴子だった。

 探偵金田一耕助が通りがかり鈴子と出会った

日々を思いその死を悼む。

 

 耕助は一柳家に起こった殺人事件を推理した

探偵であった。

 

 事件当時一柳家には先代未亡人の糸、長男で

大学講師経験者の賢蔵、次男で推理小説熱中者

の三郎、長女鈴子が居住していた。鈴子は琴を

弾く少女だった。賢蔵の従兄弟良介とその妻秋

子も住んでいた。

 

 四十代の賢蔵は性生活に厳格な掟を自己に課

していた。

 その賢蔵が久保克子という若い美人女性と結婚

することになった。克子の家は一柳家の小作人で

あった。父はアメリカで成功したが亡くなり叔父

銀造が克子の面倒を見た。

 

 四月の雪降る日に賢蔵・克子夫妻の結婚式は厳

かに行われた。午前四時十五分、克子の悲鳴が響

いた。銀造達がかけつけると克子は刀で斬殺され、

賢蔵は横たわって死亡していた。枕元に琴があり、

金屏風に血染めの三本指の指紋、庭の石灯篭の側に

凶器の日本刀が刺さっている。

 

 雪に足音は無い。密室殺人事件を磯川警部が担当

することとなった。

 

 一柳家周辺を歩んでいた三本指の男を犯人と見る

磯川は彼の行方を追う。

 

 銀造の依頼を受けた金田一耕助が一柳家に現れ

雪の密室殺人事件を推理する。

 

 ◎

 横溝正史(よこみぞ・せいし)は明治三十五年

(1902年)五月二十四日兵庫県に誕生した。本名

は横溝正史(よこみぞ・まさし)である。

 昭和五十六年(1981年)十二月二十八日東京都

において七十九歳で死去した。

横溝正史

 昭和二十一年(1946年)四月から十二月まで

『宝石』に『本陣殺人事件』を連載した。金田一

耕助第一回初登場作品である。

本陣 すずこ

 雪の中において起こった新婚夫婦が血塗れ死体

となって発見された事件を耕助が追い尋ねる。足

跡は雪に全くない。金屏風に塗られた三本指の指紋

結婚と琴と石灯篭近くの刀が証拠だが犯人はどう

やって密室に入ったか?この謎に金田一耕助が

挑み見事に解明する。

 

 高林陽一は昭和六年(1931年)四月二十九日

京都府京都市に誕生した。平成十年(2012年)

七月十五日、八十一歳で死去した。四十四歳で

『本陣殺人事件』演出に挑んだ。

 

 大林宣彦は昭和十三年(1938年)一月九日

広島県尾道市に誕生した。令和二年(2020年)

四月十日、八十二歳で死去した。少女物語映画

の名匠だが、本作では友人高林陽一の為に音楽を

担当した。緊張感豊かな音を奏でた。

 

 

 田村高廣は昭和三年(1928年)八月三十一

日に誕生した。父は阪東妻三郎である。田村俊

麿・田村正和・田村亮・水上保広は弟である。

 四十七歳で自他に厳しい研究者賢蔵を深い

演技で勤めた。

 平成十八年(2006年)五月十六日に七十七歳

で死去した。

 

 

 中尾彬(なかお・あきら)は昭和十七年(1942

年)八月十一日に誕生した。

 令和六年(2024年)五月十六日に八十一歳で死

去した。

 三十三歳でGパン姿の名探偵金田一耕助を知的に

演じた。

 知的な名探偵で鋭い論理を的確に語る。名優中尾

彬の耕助は難事件でも解決するだろうという印象を

観客に与える。困難に見える密室殺人事件であって

も中尾彬の太い声と鋭い眼力で犯人のからくりは

見破られるだろうなあという印象を受けるのだ。

 

 高林陽一は森田富士郎の濃密な撮影と西岡善信の

重厚な美術を得て、妖しくも哀しいドラマを鮮やか

に撮った。冒頭の鈴子の野辺の送りから悲しみが

溢れている。

 

 水原ゆう紀は悲劇の花嫁克子を繊細に演じる。

 

 高沢順子は昭和五十年頃大人気で小悪魔的な

ヒロインをよく演じていた。鈴子役に当時の高沢

順子の勢いが察せられる。

 

 常田富士男が三本指の男役で凄みを見せる。

 

 新田章はこの時代薄幸の若者役で存在感を見せ

ていた。

 

 村松英子は証言者白木静子役で知的な魅力を

見せた。

 

 ウィキペディアによると高林陽一監督は原作通り

戦後すぐの時代に設定したかったが予算問題で断念

し現代に設定せざるを得なかったという。これは残念

だがやむを得ない。

 

 原作通り戦後すぐの時代であると犯人の厳格過ぎ

る思考が窺える。

 

 昭和五十年当時の南座が観れることも有り難い。

 

 「もう少し怖がらせて欲しかった」という想いは

抑え難いのだが迫力は十分にある。

 

 賢蔵役の田村高廣の眼力の迫力に震えた。

 

 ◎

 横溝正史生誕百四年の平成十八年(2006年)五月

二十四日高槻松竹セントラルで本作を鑑賞した。併

映は『不連続殺人事件』であった。田村高廣主演ミス

テリー特集であった。本日鑑賞十八年の日である。

 

 中尾彬の冷静で鋭い金田一耕助は迫力豊かだった。

 

 中尾彬さん

 

 名演をありがとう。

 

                    合掌