ヨハンネスの祈りに学ぶ 2024/5/19Cinema KOBE上映版  | 俺の命はウルトラ・アイ

ヨハンネスの祈りに学ぶ 2024/5/19Cinema KOBE上映版 

 2024年5月19日Cinema KOBE CINEMA2

において映画『奇跡』を鑑賞した。

 

『奇跡』

Ordet

映画 トーキー 126分 白黒

1955年1月10日 デンマーク封切

製作会社 パラディウム

昭和五十四年(1979年)二月十日日本封切

製作国 デンマーク

製作言語 デンマーク語

 

原作 カイ・ムンク Ordet 『御言葉』

脚色 カール・テオドア・ドライヤー

製作 エーリク・ニールセン

音楽 ポール・シーアベック

撮影 へ二ング・ベントセン

編集 エーディト・シューリセル

 

出演

 

ヘンリク・マルベイ(モルデン・ボーエン)

 

エミル・ハス・クリステンセン(ミケル)

カイ・クリスチャンセン(アーナス)

 

ビルギッテ・フェーダー・シューピール(インガ)

ゲルダ・ニールセン(アンナ)

 

アイナ―・フェーダーシュピール(ペーター)

ヘンリー・スケアー(医師)

オヴェ・ラッド(牧師)

 

プレ―ベン・レア―ドルフ・リュ(ヨハンネス)

 

監督 カール・テオドール・ドライヤー

 1925年頃のユトランド半島の夏季。

 

 モルテン・ボールエンはボーエン農場

の責任者である。頭髪は白く白髭が生え

ているが頑丈な体格の持ち主である。敬

虔なクリスチャンとして暮らしている。

 

 妻を亡くしたが、三人の息子と孫たち

との絆は篤い。

 

 キリスト教の敬虔な信者のモルテンは

一代で農場を立てた人物で、信仰心は奇跡

を具現するという意見を確信していた。

 

 その生真面目な信仰の在り方を冷ややかに

見る人達がいた。

 

 長男ミケルと嫁インガには娘がいた。父と

違ってミケルは神を信じていない。

 

 次男ヨハンネスは敬虔で真面目なキリスト教

徒だが、自身をキリストと信じている。

 ヨハネスが神の心を語れば、牧師は冷やや

かに「施設にお入れになるべきでは?」とモル

テンに勧める。ヨハンネスは奇矯な振舞を為し

精神に異常を来している存在と見られている。

モルテンはそんなヨハンネスを溺愛しており、

勉強熱心で学に熱く取り組みすぎて心を疲弊

させてしまったと見ている。「キリスト教を

活気づける存在になれる」と父モルテンは期待

していたが、ヨハンネスは心を病んでいる青年

と見做されている。

 

 

 三男アーナスは仕立て屋ペーターの娘アンネ

に恋心を抱いている。

 ところが父モルテンとペーターは宗教問題で

対立している。

 

 

 インガは夫と義父の対立に悩む。妊娠中の彼

女は生まれてくる子が義父の夢である男児であ

ることを望む。

 モルテンは嫁インガに説得されて、三男アーナ

スがアンネに求愛することを許可する。だが、ぺ

ーターが承知しなかった。

 

 

 ペーターがアーナスのアンネへの恋を許さな

い。モルテンは怒り、ペーターに「あんたのは

死の信仰だ。儂は生きる信仰だ」と言い放つ。

 

 ミケルは妻インガが急に産気づき、母子共に危

険な状態にあることを医師から伝えられた。嫁の

危機は、ペーター家において口論していた舅モル

テンに電話で伝えられた。

 

 

 

 ◎命を尊ぶ◎

 

 

 カール・テオドア・ドライヤー Carl Theodor

Dreyer は1889年2月3日デンマークコペンハーゲン

に誕生した。

 

 スウェーデン在住のデンマーク人であった父は

地主であった。スウェ―デン人の母ヨセフィーナ・

ニルソンは父の家の女中であった。私生児として

生まれたカールは植字工ドライヤー家の養子とな

った。

 

 母ヨセフィーナは別の男性の子供を身籠ったが

結婚を拒絶され、硫黄を接種して中絶する道を選び

硫黄の過剰摂取で亡くなったという。

 

 カールは生母が男性社会や世の欺瞞と冷酷さに

よって命を奪われたと直感した。

 

 ジャーナリスト・演劇評論家・気球飛行研究者

として活動し、映画会社ノーディスク・フィルム

に勤務し映画技術を学ぶ。

 

 1918年監督第一作『裁判長』製作に取り組み、

1919年に完成させた。

 1928年監督作品『裁かるゝジャンヌ』La passion

de Jeanne d’Arcを発表する。異端審問裁判で裁

きを受け冷酷な判定を下されても信仰を熱く確か

め語るジャンヌを映し出した。

 

 1968年3月20日カール・テオドア・ドライヤー

はコペンハーゲンの病院において79歳で死去した。

 

 熱く希望していた企画『ナザレのキリスト』は

未完になった。

 

 『奇跡』は65歳で発表した監督作品である。原

作者カイ・ムンクは牧師でナチスの抵抗運動で殺

された。

 

 2003年大晦日シネ・ヌ―ヴォで初鑑賞した。二

回目鑑賞の19日は、ドライヤーは珈琲好きであるこ

とを学んだ。

 

 キリスト教信仰に篤く生きる父モルテンをヘン

リク・マルベイが深い芸で現す。

 

 モルテン一家もぺーター一家も全員善人である。

善に取り組んでいるからこそ真面目な道で起こる

対立が重かった。

 

 ビルギッテ・フェーダーシュービルが義父・夫

の和解と子供達の幸を祈るインガの優しさを探求

する。

 

 神を信じないミケルは妻インガの葬儀で妻に

とりすがり悲しむ。

 

 次男ヨハネスは精神を病んでいて、冷たい

視線を受けていたが、その祈りが義姉インガ

の危機に救いを齎す。

 

 プレ―ベン・レア―ドルフ・リュの声は

透き通っている。

 現代フィルムに現れたキリストではないか

と感嘆した。

 

 精神異常者と見られたヨハンネスが奇跡

を呼び起こす。

 

 科学的調査やリアリズムでは測れないも

のがある。

 

 カール・テオドア・ドライヤーはフィルムに

おいて奇跡を語り書き撮ったのだ。

 

 

 

 

                   合掌