花籠の歌 平成十九年五月十・十二日京都文化博物館上映版を併せて学ぶ | 俺の命はウルトラ・アイ

花籠の歌 平成十九年五月十・十二日京都文化博物館上映版を併せて学ぶ

 

『花籠の歌』

 映画 トーキー 10巻 白黒

 昭和十二年(1937年)一月十四日封切

 製作国 大日本帝国

 製作言語 日本語

 製作 松竹大船

 脚本 野田高梧

    五所亭

 原作 岩崎文隆

 撮影 斎藤正夫

 主題歌 『花籠の歌』『野菊の歌』

 作詞  西条八十

 作曲 江口夜詩

 音楽監督 久保田公平

 美術監督 脇田世根一

 録音 土橋武男

 編集 渋谷実

 現像 納所歳巳

 

 出演

 

 田中絹代(森洋子)

 佐野周二(小野進)

 

 徳大寺伸(李)

 河村黎吉(森敬造)

 高峰秀子(森浜子)

 

 

 岡村文子(菊)

 谷麗光(富太郎)

 笠智衆(堀田念海)

 

 近衛敏明(岡本)

 立花泰子(鈴江)

 大山健二(やあさん)

 吉川満子(芸妓)

 朝見英子(芸妓)

 忍節子(アパートの女)

 斎藤達雄(刑事)

 河原侃二(刑事)

 武田秀郎(理髪店の客)

 新井淳(会社員)

 小倉繁(巡査)

 毛塚守彦(声色や)

 磯野秋雄(洗濯屋)

 

 

 監督五所平之助

 

 ◎

 五所亭=桃園狂太=五所平之助

 

 田中絹代=田中錦華 

 ◎

 鑑賞日時 場所

 平成十九年(2007年)五月十・十二日

 京都文化博物館

 

 画像はインターネットより拝借

 引用している。

 ◎

 

 

 トンカツ屋「みなと」の主人敬造には二人

の娘洋子・浜子がいる。洋子は父を支えて店

を手伝う。お客からの人気も高く、浜子は女

優を目指して学んでいる。

 

 中華民国人コック李さんは秘かに洋子を慕

っていた。洋子は学生進を慕っていて、進も

洋子が好きである。敬造は娘の願いを叶える

ことが大事と考え、進を婿に迎えることを決

める。

 

 李は洋子に振られて男泣きに涙を覚える。

 

 洋子の幸を祈る心を李が確かめる。

 

 ◎家庭 姉妹 友 人情◎

 

 田中絹代は明治四十四年(1909年)十一月

二十九日山口県に誕生した。

 無声映画時代から日本映画を支え牽引した。

溝口健二・内田吐夢・伊藤大輔の作品において

名演を発表した。

 主演映画『愛染かつら』は残存版のみ見聞

したが大人気を博したことは察せられた。日本

映画を支えた大スタアであらせられる。

 満年齢二十六歳で演じた洋子は綺麗である。

人生の大先輩に失礼な物言いだが可愛い。

 昭和五十二年(1977年)三月二十一日東京都

において死去した。六十七歳。

 

 

 佐野周二(さの・しゅうじ)明治四十五年(19

12年)十一月二十一日東京府東京市神田に誕生し

た。

 本名は関口正三郎である。松竹の二枚目スタア

として活躍するが、亜細亜太平洋戦争・第二次世

界大戦では三度召集された。

 戦後は渋く深い苦悩の表現で父親像を表現した。

関口宏・佐野守の父・関口知宏の祖父である。

 昭和五十三年(1978年)十二月二十一日、六十

六歳で死去した。

 満年齢二十四歳の小野進役には二枚目の魅力

が光っている。

 

 

 五所平之助(ごしょ・へいのすけ)は明治

三十五年(1902年)一月二十四日に誕生した。

本名は五所平右衛門である。人情物語の巨匠

である。しみじみと感慨が心に染みて来る作

品が五所写真なのである。偉そうな物言いを

している私めは五所平之助写真を僅かな本数

しか見聞していないのだが、作品鑑賞数の多寡

に関わらず心に迫ってくるのだから感嘆した

ことを申し上げる。

 満年齢三十五歳で演出した『花籠の歌』は

既に平之助が人情ドラマの巨匠であったこと

を示す名作である。

 昭和五十六年(1981年)五月一日、七十九

歳で死去した。

 

 河村黎吉が親父の魅力を豊かに表す。

 

 笠智衆は、明治三十七年(1904年)五月十

三日に、浄土真宗本願寺派来照寺住職の息子と

して誕生した。

 平成五年(1993年)三月十六日、八十八歳

で死去した。

 日本映画の歴史を支えた大スタア名優である。

 

 学生僧侶念海役で人間臭い味を鋭く出す。三

枚目的な魅力もたっぷり魅せてくれた。銜え煙

草という貴重なシーンも見れた。
 『仏説阿弥陀経』の読経シーンは流石だった。

笠智衆は西本願寺の寺院出身である。お布施

の重さを量ったりする当り、クスリと笑わせ

てくれた。

 

 徳大寺伸が李さんの純情を熱演。洋子の写

真を大事にしていた李さんが、失恋の悲しみ

から泣く場面は切なくて、観客の心に迫り涙

を呼ぶ。

 

 

 

 斎藤達雄が短い出番だが刑事役で凄みを見せ

る。カメオ出演と思われるがは僅かな登場場面

でも存在感は大きい。

 

 スタア名優達が演技合戦を為す人情ドラマの

名作だが、場をさらうのは浜子だ。これは確言

する。

 

 高峰秀子の美少女の輝きに息を呑んだ。

 

 京都文化博物館上映では「うわァ」とどよめき

が起こった。

 

 

 高峰秀子は大正十三年(1924年)三月二十七日

に誕生した。出生名は平山秀子である。松山善三と

結婚し本名は松山秀子となった。

 平成二十二年(2010年)十二月二十八日八十六

歳で死去した。

 無声映画から出演しトーキー時代に大スタアと

して日本映画史を支えた。

 しかし、本人にとって女優は不本意な仕事で日本

芸能界のトップスタア・名優という名声に固執しな

かったようである。

 エッセイは気さくな文であり、それでいて鋭く

ピリッと辛い。

 名演を銀幕やブラウン管や舞台に残すが自ら誇ら

ない。

 無声映画時代から女優として活動していたが、満

年齢十三歳の浜子は超絶的な可愛さを見せている。

 

 とんかつ屋みなとの家族愛・浜子と進の恋、李

さんの失恋と松竹人情ドラマの輝きを鏤めつつ静

かで繊細なリズムで語る。

 

 平成十九年(2007年)五月十日京都文化博物館で

『花籠の歌』を鑑賞し感激し、十二日同館で二度目の

鑑賞を為した。

 浜子登場で高峰秀子の美貌にやはり歓声が挙がっ

た。

 

 田中絹代・高峰秀子の二大スタアの姉妹役は銀幕

の歴史に輝いている。

 

 笠智衆生誕百二十年の今日喜劇名演が光る念海役

を尋ねた。

 

                    合掌