吸血鬼 | 俺の命はウルトラ・アイ

吸血鬼

『吸血鬼』

Vampyr

 

映画 トーキー 74分 白黒

 

製作・撮影 1930年から1931年

1932年5月6日 ドイツ封切

1932年9月23日 フランス封切

昭和七年(1932年)十一月六日 大日本帝国封切

 

製作国 フランス ドイツ

製作言語 ドイツ語

 

脚本 カール・テオドア・ドライヤー

   クリステン・ユル

 

音楽 ヴォルガング・ツェラー

美術 ヘアマン・ヴァルム

プロデユ―サー 二コラ・ドゥ・グンツブルグ

 

出演

 

ジュリアン・ウェスト(アラン・グレイ)

 

モーリス・シュッツ(館の主人)

レナ・マンデル(ジゼル)

ジビレ・シュミッツ(レオーヌ)

ヤン・ヒエロ二ムコ(村の医師)

アンリエット・ジェラール(吸血鬼)

ジェーン・モーラ(看護師)

アルバート・ブラス(執事頭)

N・ババニニ(執事頭夫人)

 

監督 カール・テオドア・ドライヤー

 

 二コラ・ドゥ・グンツブルグ

=二コラ・ド・ガンズビュール

=ジュリアン・ウェスト

鑑賞日時場所

 

平成十五年(2003年)十二月二十九日

シネ・ヌ―ヴォ

 

令和六年(2024年)五月四日

CINEMA KOBE2

 アラン・グレイは悪魔や吸血鬼を熱心に探求して

いる。パリの郊外の村に来たアランは不思議な現象

を目撃した。

 

 男が小舟で大きな斧を持っている。

 

 影は歩き回る。

 

 義足の男が座っている。

 

 影は動き回り義足の男に照らし合う位置に自ら

を置いた。義足の男の影であったのだ。

 

 アランは城を尋ねた。領主の娘レオーネは貧血

になり苦しんでいた。

 

 彼女には妹ジゼルが居た。ジゼルとアランは

惹かれ合う。

 領主は娘の病は吸血鬼の仕業と見た。

 

 吸血鬼の正体はマルグリット・ショパンという

女性であった。マルグリットは昔処刑されたが、

過去にも疫病を流行らせた。医師がマルグリット

の共犯者であった。

 

 自身に隷属する存在が自ら命を絶つと彼女の

魂は悪魔の所有物となる。彼女はそれを恐れて

いた。

 

 アランと使用人はマルグリットを殺害した。

 

 ジゼルとアランは小舟で新たな世界を求めた。

 

 医師は村人たちに捕らわれた。

 

 ◎影は歩む 粉は落ちる◎

 

 カール・テオドア・ドライヤー Carl Theodor

Dreyer は1889年2月3日デンマークコペンハーゲン

に誕生した。

 

 スウェーデン在住のデンマーク人であった父は

地主であった。スウェ―デン人の母ヨセフィーナ・

ニルソンは父の家の女中であった。私生児として

生まれたカールは植字工ドライヤー家の養子とな

った。

 

 母ヨセフィーナは別の男性の子供を身籠ったが

結婚を拒絶され、硫黄を接種して中絶する道を選

んで、硫黄の過剰摂取で亡くなったという。

 

 

 ジャーナリスト・演劇評論家・気球飛行研究者

として活動したカールは、映画会社ノーディスク・

フィルムに勤務し映画技術を学ぶ。

 

 1918年監督第一作『裁判長』製作に取り組み、

1919年に完成させた。

 

 1928年の監督作品『裁かるゝジャンヌ』は

裁判で尋問される苦痛をくぐって神への愛を貫

き敢えて火刑に処せられることを選んだジャンヌ

・ダルクを尋ねた。

 これは、無声映画の歴史を包む大傑作の一本

と讃えられた。

 

 カールはこの作品の成功の後、二コラ・ドゥ・

グンツブルグ男爵と舞踏会で出会った。二コラは

1904年12月12日にフランスに誕生した。1981年

2月20日、アメリカニューヨークにおいて76歳で

死去した。

 

 美男子の二コラは映画に熱い意欲を燃やし、自

身が主演男優を勤めることを条件に映画をプロデ

ュースする資金を出資することをカールに提案し

た。

 

 カールは二コラと組んで一本撮る事を決意し吸

血鬼物語を考案しミステリアスなムードで撮った。

 

 二コラはジュリアン・ウェストの芸名で主人公

アラン・グレイを知的に演じた。

 

 何と言っても影が歩み義足の男のもとに帰って

くる場面が強烈である。

 

 アランの心に映った世界をカールは撮る。

 

 ホラー映画なのだが前述のようにミステリーの

要素が強い。それでいて説明的な描写は殆ど無い。

 

 それ故に筋を追っていると分からなくなるとこ

ろも出て来る。

 

 アランとジゼルの美男美女が小舟で愛の道行

を選ぶ。幻想的なシーンであった。

 

 村の医師が吸血鬼の共犯者である事がばれて

籠の中に監禁され、大量の粉をかけられて窒息

に追い込まれるシーンは怖かった。

 

 吸血鬼でも「可哀相」と思わず感じてしまう。

 

 これもカールの狙いなのだろう。

 

 勝新太郎が1971年前に『吸血鬼』を鑑賞した

かどうかは分からないのだが、『顔役』クライマ

ックスの立花による尾形生き埋めは、医師が粉で

嬲りものにされ生き埋めにされ窒息死に至らしめ

られるシーンを想起した。

 

 ヤン・ヒエロニコムの恐怖の演技は圧巻であっ

た。

 

 宗教物語・信仰ドラマの巨星でありつつ、ホラー

の怖さも抜群に巧い。

 

 カール・テオドア・ドライヤーとは万能の活動屋

であったのだ。

 

                     合掌