犯罪大通り 七人の男女 映画館二回目鑑賞四十年 | 俺の命はウルトラ・アイ

犯罪大通り 七人の男女 映画館二回目鑑賞四十年

バチスト

ジャン=ルイ・バロー

Jean‐Louis Barrault 

1910年9月8日フランス生まれ。

1994年1月22日パリにおいて死去。83歳。

俳優・演出家。

 

 

 

  1945年3月9日フランス公開『天井棧敷の

人々』におい主人公のパントマイム役者バチス

ト・ドビュロー役を演じました。日本では1952

年2月20日に公開されました。


 

 『天井桟敷の人々』

 (てんじょうさじきのひとびと)

 

 Les enfants du Paradis
 (レザンファン デュ パラディ)
 

 

 Le Boulevard du Crime

 (ル ブルヴァール デュ クリム)

 「第一部   犯罪大通り」

 

 L'Homme Blanc

 

 (ロンム ブラン)

 「第二部   白い男」

 

 映画 195分 トーキー 白黒

 

 

 フランス公開    1945年3月9日

 

 日本公開      昭和二十七年(1952年)二月二十日

 

 製作国       フランス

 製作         フレッド・ブラン

 脚本         ジャック・プレヴェール

 音楽         モーリス・ティリエ

             ジョゼフ・コズマ

 撮影         ロジェ・ユペール

 美術         アレクサンドル・トローネル

 

 出演  

 

       

 アルレッティ(ギャランスことクレール 無言劇の女神)

 

 

 ジャン=ルイ・バロー(バチスト・ドゥビュロー

              無言劇のピエロ)
 

  ピエール・ブラッスールフレデリック・ルメートル

  無言劇のアルルカン 劇中劇『アドレの宿屋』の

  ロベール・マルケール 劇中劇「オセロー』のオセロー)

 

 

 ピエール・ルノワール(古着屋ジェリコ)

 

 

 マリア・カザレス(ナタリー)

 

 

 

 ファビアン・ロリス(アヴリル)

 エチエンヌ・ドゥグルー(アンセルム・ドゥビュロー)

 リヴェール・カデ(ブルジョアの中年男)

 ジャーヌ・マルカン(マダム・エルミーヌ)

 ジャン=ピエール・デルモン(バチスト坊や)

 ジャン・ラニエ(劇中劇『オセロー』のイアーゴー)

 アルベール・レミー(スカルピア・バリニ)

 マルセル・メルロー(巡査)

 ポール・フランクール(警視)

 ガストン・モドー(絹糸)

 
 

 ルイ・サルー(エドゥアルド・ド・モントレー伯爵)

 

 

 マルセル・エラン(ピエール・フランソワ・ラスネール)

 

 監督        マルセル・カルネ

 

 ◎

 

 

 鑑賞日時 場所

 昭和五十九年(1984年)四月二十日・二十二日

 祇園会館

 

 平成十三年(2001年)四月二十八日

 シアター1200(後の京都劇場)

 

 平成二十二年(2010年)七月十九日

 TOHOシネマズ二条

 

 令和二年(2020年)十一月八日

 京都シネマ4K修復版2K上映
 

 ☆

 

 昭和五十九年(1984年)四月二十日、『天井

棧敷の人々』を鑑賞しました。この日は、テオ・

アンゲロプロス監督『アレクサンダー大王』と

マルセル・カルネ監督『天井棧敷の人々』という

超大作二本の上映でした。

 195分はあっという間に走り自分の心身は熱く

なりました。

 現実にフィルムを鑑賞した。しかし、夢の中に

いるような心地でもある。縁に感謝します。

  

 

 

第一部 犯罪大通り

 

 19世紀のフランスパリの犯罪大通りでは沢山の人々

が歩みにぎわっています。大道芸人たちは芸を競いあ

って客を集めようとしています。老いた古着屋ジェリコ

は「古着屋でござい」と叫んでいます。

 

 呼び込み男は、「一糸まとわぬ裸の美女。目の保養」

と呼びこんでいます。小屋では確かに鏡を持った美女

が入浴していますが、客の視界に入るのは、美女の肩

先から顔まででした。

 

 芝居小屋に演劇志望の若者が来ていました。フレデ

リック・ルメートルと言う名の若者です。彼はウィリ

アム・シェイクスピアの戯曲を演ずるという大夢を持

っていました。

 

 見世物小屋で肩を露出していた美女を見てフレデリッ

クは惹かれて声をかけます。現代で言うところのナンパ

です。

 

    「君は笑った。人生は美しい。君も美しい。」

 

  しかし、女性は「約束があるの」とフレデリックの誘い

を断ります。フレデリックは名乗り、女性の名を聞き、彼女

はギャランスと名乗ります。「犯罪大通りに置き去りとは

と失意のフレデリックに、ギャランスは「恋する二人にパ

リは狭しよ」と慰めます。

 

 ギャランスは友人の代書人のピエール・フランソワ・

スネールを尋ねます。ラスネールは復縁を求める男性

の手紙を書きました。ギャランスは肩を露出する仕事は、

肩のみでお客が集まらず終わったことを報告します。

 

 ピエール・フランソワ・スネールはギャランスの裸を

目当てにした男達に敵意を語り、自身の在り方を宣言

します。

 

   「親や教師にどなられた。〝自己に戻れ〟。俺は

    自己に戻った。そして閉じこもった。すべてが禁じ

    られた。その結果は、どうだ。今の俺さ。なんたる

    見事な運命だ。誰も愛さない、絶対の孤独。誰

    からも愛されない、絶対の自由。俺は誰も愛さな

    いのだ。君さえもな、ギャランス」

 

  ナルシストで自信家で口髭をたくわえてお洒落な

扮装をするラスネールは、社会を相手に宣戦布告して

いました。

 

 ジェリコはラスネールの下にも出入りして小遣いを

貰っていました。

 

 フュナンビル座の前では、四人の踊り子が踊り、口

役の男性が語り、ピエロの扮装の男性が樽に座っ

て澄み切った瞳で一点を見つめています。

 

 口上役は彼の父親で役者のアンセルム・ドゥビュロ

ーです。アンセルムは息子を「木偶の坊」と呼んで棒

で打擲し、舞台に戻ることを告げ、劇場に来ない見物

人の為に、バチストと名付けた息子を残します。

 

 ブルジョアの中年男が冷やかしの罵声を語り、「間

け面」と侮蔑しますが、ギャランスは「綺麗な目をし

てるわ」と語ります。その隙にラスネールはブルジョア

の中年男から時計を掏り逃げます。

 

 

 バチストの瞳が大きくなります。

 

 中年男は掏られて、隣にいたギャランスを犯人だと

主張し、彼女の手を掴んで巡査を呼びます。巡査の

尋問にギャランスは無罪を主張します。巡査は目撃者

がいるのかと彼女に問います。

 

   「私だ!」

 

 バチストが答えました。

 

 語らずに彼は示したのです。

 

 無言劇でギャランス・中年男・口髭の男を示し、口

髭の男が中年男の懐から懐中時計を掏り取って逃げ

たことを芸で明かしたのでした。

 

 野次馬の人々は大笑いで感嘆します。

 

 バチストの芸に、疑われたギャランスも、被害者の

中年男も巡査も皆共に見とれました。

 

 犯人ラスネールが逃走したことを知り、中年男は

ギャランスに謝罪します。無実を明かしてくれたお礼

にギャランスはバチストに一輪の薔薇の花を投げま

す。

 

 バチストはドキドキ緊張します。

 

 フュナンビル座では美しい娘ナタリーが恋煩いで

一途な思いを胸に秘めていました。バチストを慕って

いるのです。ジェリコは此処へもやってきて、「儂は

縁結び屋じゃ」と自称して、ナタリーの手相を見て、

「素晴らしい運勢。愛しい人と結ばれる」と語ります。

 

 フレデリックはナタリーに一座に入りたいという

希望を伝えます。

 

 舞台では、アンセルムが共演者のスカルピア・バ

リニと喧嘩しパニックになります。

 

 バチストとフレデリックが抜擢され、舞台は成功

します。

 

 若き役者二人は夢を語り合います。

 

 バチストは無言劇、フレデリックはシェイクスピア

劇で、御客を感激させたいというそれぞれの夢に

二人は燃えていました。フレデリックは下宿先が

決まっておらず、バチストは自身の下宿グラン・ル

レーを紹介します。

 

 バチストは目が不自由な老人絹糸と知り合い

ます。絹糸は一杯奢りたいと申し出て、前の主人

が咽喉を斬られて血を流したということから「赤い

咽喉」と名付けられた居酒屋に案内します。鑑定

を頼みに来た者の依頼を聞き、絹糸は目を開いて

鑑定します。目が不自由なことは嘘だったのです。

 

 ジェリコは此処にも表れます。バチストに対して、

「ナタリーのように無垢な娘はいないぞ」と

語りますが、「お前は嫌いだ!」と怒鳴ら

れます。

 

 店にはラスネールがギャランス・子分のアヴリ

ルと飲みに来て残酷なジョークを語っています。

 

 バチストはギャランスとの思わぬ再会に感動

します。

 

 

 ギャランスはラスネールと離れて踊りたい気持ち

を語ります。


 

 

 

 バチストは熱視線で、じっとギャランスを凝視しま

す。絹糸は、前の主人の喉笛を斬って殺害したの

は、ラスネール一味だと語り、そのラスネールが誘

っているギャランスに近づくのは危険だから諦める

ようにと忠告します。

 

 

 ジェリコはギャランスの手相を見て、「綺麗な手じ

ゃ」と讃えますが、ラスネールから「蝙蝠」と在り方を

指摘され、「お前はお役人に仲間を売っているんじゃ

ないか?」と指摘され、震えるように去って行きます。

 

 バチストはギャランスに踊って欲しいと頼み

諾して貰います。アヴリルがバチストをギャランス

から引き離し、店の外に叩き出します。ガラスが

割れたことを主人が悲しむと、ラスネールは「赤

い咽喉でお楽しみだぞ」と語り、威嚇します。

 

 バチストは店に帰ってきて落ちた薔薇の花を胸

にさします。アヴリルが尚も腕を掴もうとすると、バ

チストは胸倉を蹴り倒し、ギャランスを送ることを

言し二人はいっしょに店を出ます。

 

 

 ラスネールは「女のことで騒ぐな」と部下達に語り、

計画している集金人襲撃の強盗計画について謀議

を話し合います。

 

 夜の街路でバチストとギャランスは語り合います。

ギャランスの父は母を捨て、母は洗濯女をしていま

すが、亡くなり一人になった彼女は十五歳で男達と

出会ったことを語ります。

 

  バチストは「私の命はあなただ」と愛を告白しま

す。二人はキスをします。ギャランスは「恋なんて簡

単よ」と語ります。

 

 二人は下宿屋グラン・ルレーに到着します。バチ

ストはギャランスの新しい就職先としてフュナンビル

座を紹介します。

 

 妖艶なギャランスは「私はあなたの夢見るような

女じゃない。単純なの。単純な女よ。愛してくれれ

ば、私も。好きなら好き。それだけなの。」と語りま

す。

 

 純情なバチストは「あなたも同じ愛し方で私を愛し

て欲しい」と宣言して部屋から出て行きます。

 

 隣室では、フレデリックが『オセロー』の大詰でオ

セローが愛する妻デズデモーナが不貞を働いたと

思い込んで絞殺する意志を語る台詞の朗読をして

いました。

 

 ギャランスの歌声が響きます。

 

 窓際からフレデリックは再会を喜び、「恋する二人

にパリは狭しさ」と語り、彼女を誘い快諾してもらい

ます。

 

 物語はここから、ギャランス・バチスト・フレデ

リック・ナタリーの男女四人の愛の物語を壮麗に語

ります。

 

 無言劇では、バチストの道化がギャランスの女神

に愛を告白し、フレデリックの道化に奪われる物語

が上演されます。しかし、フレデリックはベッドでギャ

ランスがバチストの名を呼んでいる言葉を聞き、彼女

が一番恋している人が誰であるかを知ります。

 

 実力者のモントレー伯爵はギャランスに一目惚れ

して、楽屋に花束を届け、宝石と馬車のゴージャス

な生活を届けると言って、金の力で口説きますが、

ギャランスは救出者・保護者気取りで驕るモントレー

の求愛を拒絶します。モントレーは一目惚れで取り

乱してしまったと述べ、希望を持たせて欲しいという

意志から、「災難の時は身命を擲ってお力になり

す」と言って名刺を渡して去ります。

 

 バチストが現れ、モントレーが贈った花束に、嫉妬か

怒りを露にします。

 

 ギャランスは、モントレーの花は「お葬式みたい」と

言ったことを語り、「誰が愛していないと言ったの?」

と問います。

 

  「私よ」

 

 ナタリーが現れました。ギャランスに恋の宣戦布告を

宣言したのです。

 

  「よせ、ナタリー」

 

  バチストは冷静さを取り戻して、今度はナタリーを

諌めます。

 

 バチストを巡るギャランスとナタリーの戦いも激しく

なります。

 

 ラスネールはフォレスチエという変名で下宿グラン・

ルレーに入居するふりをして、集金人が来た時に襲

撃しようという計画を立てていました。

 

 計画の当日、ラスネールとアヴリルは、集金人に

殴りかかりますが、叫ばれて逃げます。

 

 

 グラン・ルレーにギャランスが帰室すると、警視・

巡査たちが捜査・尋問していました。

 

 グラン・ルレーの主人マダム・エルミーヌは警視に

「あの女です」と語り、フォレスチエ(実はラスネール)

とギャランスが親しかったことを告げます。フレデリック

と恋仲になったことから、女主人はギャランスに対して

否定的な見方をしていました。

 

 ギャランスは、警視の尋問を聞き、ギャランスとは

渾名で、本名はクレールであることを語り、洗濯女

として働いた過去を語り、フォレスチエは知らないと

告げ、集金人襲撃事件とは一切関わりないと無実を

宣言します。

 

 時計掏摸事件の巡査が、偶然にも、警官の部下と

して共に捜査をしており、フォレスチエの人相の聞き

書きから、時計掏摸事件の犯人であり、「この女も

側にいました。グルだったんだ」と言い出します。

 

 巡査が態度を豹変したことにギャランスは落胆し

ますが、警視が顎に触れてくるので、「触らないで」

と気丈に言い放ちます。

 

 無実を主張するギャランスに、警視は「荷造りしろ」

と命令し、逮捕・連行しようとします。

 

  「取扱いご注意よ」

 

 ギャランスは、一枚の名刺を取り出して、警視に渡す

のでした。

 

 第二部 白い男

 

 フレデリック・ルメートルはガールフレン

ドの女性二人と戯れています。

 

 女性二人は友人で共に犯罪大通りの役者フ

レデリックを思っていることに悩んでいます。

 

 フレデリックは「芝居をすればよい」と言

って一人の女性のお尻に触ってセクハラし女

性は怒って出て行きます。もう一人の女性を

フレデリックは抱きしめます。かつての親友・

恋のライバルであったパントマイム名優バチ

スト・ドビュローの無言劇『古着屋』が好評

と聞き内心の嫉妬を隠せません。

 

 主演作品『アドレの宿屋』の稽古で眼帯を

して、三人の作者と対立口論します。

 

 フレデリックは主役ロベール・マルケール

役ですがアドリブで台詞を入れ、作者に叱ら

れ、「台本が空っぽだから」とからかいます。

作者は「君は契約しギャラを受け取った」と

関係性を指摘し、フレデリックは「使い果た

した」とギャラを全部浪費したことを述べま

す。

 

 芝居の幕が開き、ロベール役のフレデリッ

クは名を問われる場面で「フレデリック・ル

メートル」と答え、ロベールが射殺される設

定を変えますが、これが客席からは大受けで

した。作者三人は激怒しフレデリックに決闘

を申し込みます。

 

 フレデリックが楽屋に戻ると一人の男がか

んざしをいじっていました。昔の恋人ギャラ

ンスの髪からそっと抜き取った簪だったので

す。

 

  「触るな。私にとって思い出の品なんだ」

 

 怒られた男は「俺にとっても思い出の品な

らどうなる?」と問い返します。

 

 フレデリックは「誰だ君は?」と名を問う

と、男は「名もなき輩さ。用件に入ろう。俺

は金がいる」と借金を申し込みます。

 

 決闘を控えているフレデリックは富くじで

当たった金を渡し、役者という職業は毎晩同

じ時刻に観客の心をときめかす事を確かめ、

このことが冥利に尽きると強調します。

 

 男はピエール・フランソワ・ラスネールでし

た。借金を拒否されたら、抜いた刃を鞘に納

めるつもりはなかったと述べ、潜ませた子分

アヴリルを紹介します。

 やくざのアヴリルは「フレデリックさんの

ファンなので殺したくなかったんです」と安

堵を語り、ユーモアを喜ぶフレデリックは三

人で食事をしようと誘います。

 

   ラスネール「決闘って相手は誰だ?」

 

   フレデリック「馬鹿な相手さ」

 

   ラスネール「馬鹿は殺すのが一番だ」

 

 強かによって千鳥足で決闘場に来たフレデ

リックですが、相手の作者達の銃弾を受けて

右腕を負傷するものの、彼が放った弾丸が作

者を絶命させました。

 

一命を取り留めた彼は『古着屋』を見に行き

ますが、完売でチケットが買えません。切符

係が機転を利かせてお忍で見に来る貴婦人の

お客様に頼んでお座りになっているボックス

席の隅をお借りしましょうと申し出ます。

 ベールを付けた伯爵夫人は、負傷者を休ま

せて頂きたいという切符係の頼みを快諾しま

す。

 

  「ギャランス」

 

 フレデリックは貴婦人を見てその名を呼びます。

 

  「フレデリック様!」

 

  「恋する二人にパリは狭しさ」

 

 フレデリック様という言い方を問うとギャラン

スは伯爵家に嫁いだのでこういう会話になります

と答えました。

 

 

  「デズデモーナよ。不実な女よ。ある日突然

   姿を消して再会したら、『フレデリック様』

   か!」

 

   「変わってないわね」

 

 舞台ではバチストのピエロが舞踏会会場に行き、

恋する伯爵夫人を探しますが警官に捕まれ放り出

されます。父アンセルムが演じる古着屋から礼服

を買おうとしますがピエロは金がなくて、古着屋

に服を取られます。怒ったピエロは古着屋を刺殺

します。

 

 ギャランスはバチストが殺人の芝居で見せる凄

みに悲しみを覚えます。フレデリックはバチスト

の入魂の芸に圧倒されます。

 

   「まだ彼の事を?」

 

   「旅立ってからあの人のことを思わない日

    は一日も無かったわ」

 

 フレデリックの胸に燃える炎がありました。

 

   「嫉妬だろうか?不愉快だ」

 

 ギャランスはすぐに治まるでしょうと見ます。

 

   「そう簡単に治まるか。

    これぞ天の助けだ。

    この嫉妬こそ役に立つ。

    君らのおかげで遂にオセロ

    を演じることが出来る!」

 

 今も愛している昔の恋人ギャランスはずっと

バチストを恋していた。

 バチストの鬼気迫る無言劇演技に圧倒された。

 

 フレデリックは胸の中に沸々と起こり燃え上

がった感情がオセロ役を演じる根拠になると確

信しました。

 

 ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『オセロ』

は中年の黒人将軍オセロが主人公です。若く美

しい白人の女性デズデモーナに艱難辛苦の昔話

をして感動を呼び起こしたオセロは、彼女と愛

を確かめ合い、結婚します。

 

 旗手イアーゴーは、美男副官キャシオーと奥

様が不倫を為しているのではと疑問を囁き、オ

セロは嫉妬を起こしデズデモーナを絞殺してし

まいます。

 

 フレデリックはオセロが最愛の妻を取られた

と嫉妬してその妻を殺してしまう感情を、遂に

確かめ、生涯の夢であったオセロ役への呼応を

確かめます。

 

 バチストにも礼を言いたいと考え、ギャラン

スに伝言を聞き、「すぐに発ちますが挨拶に来

てくれたら嬉しい」というメッセージを確認し

ます。

 

 楽屋では昔の座員であったフレデリックの挨

拶に歓喜の声が湧きます。

 バチストとフレデリックは再会を喜びます。

フレデリックは感激を伝えますが、バチストは

「君こそ最大の名優」と讃え、秘かに芝居を見

ていることを報告します。

 

 ナタリーは今バチストの妻になり、二人には

息子の坊やバチストがいました。息子夫婦と孫

と共に舞台の仕事をしている喜びでアンセルム

は幸せでした。

 「古着屋でござい」とすっかり白髪になったジ

ェリコが来ました。

 

 

 舞台の古着屋役者アンセルムに「泥棒」と詰

りアンセルムは「巴里の古着屋はお前だけでは

ない」と宥めますが、ジェリコは「バチストは

舞台で儂を殺して笑い物にしおる」と抗議しま

す。

 

 「バチストは何故儂を嫌う」とジェリコは問

います。「お節介を焼くからよ」とナタリーは

指摘します。「これもお節介じゃが」とジェリ

コはギャランスが来ていることを報告します。

ナタリーの美しい顔に不安が映ります。

 

 フレデリックはバチストに「ギャランスの事

で私を恨んでないのか?」と聞き、バチストは

「昔の事だよ」と笑い今は自分にも妻子がいる

ことを確かめます。

 

 ボックス席に息子バチスト少年が来て、ギャ

ランスに「ぼくたちは幸せにくらしているよ」

というメッセージをママの伝言として伝えます。

ギャランスは「いい子ね、坊や」と語ります。

 

 フレデリックは今ギャランスは来ていて「挨

拶に来てくれたら嬉しい」と望んでいるとバチ

ストに伝えます。

 

 『古着屋』の芝居中にバチストは演技が出来

なくなり、楽屋に帰ってしまいます。

 

 伯爵夫人役のナタリーは夫の心の異変に胸を

痛めます。

 

 ギャランスが伯爵邸に戻るとピエール・フラ

ンソワ・ラスネールが来ていました。ラスネー

ルはギャランスに「君が誰と暮らしているかは

知っている」と述べ、「俺の天使は豪華な檻に

飼われている」と見ます。

 

  「昔は良かったわ。幸福な日々。甘い生活。」

 

  「気をつけろよ。振り返ると過去は狂犬のよ

   うに噛みつくぞ」

 

 ギャランスの昔と変わらぬ優美さにラスネール

の心は乱れます。

 

  「せめて君が金に汚され身も心も腐り果て堕

   落していてくれたならば、俺は心乱さず社

   交界を憎むこともなかっただろう!」

 

 帰り際の階段でラスネールは帰宅したモントレ

ー伯爵とすれ違います。

 

 「伯爵ですな」とラスネールは聞き、モントレ

ーは頷き「是非お名前を」と問いますが、ラスネ

ールは「名乗る程の者ではない」と言い放ちます。

 

 伯爵は不愉快な態度ですと不機嫌を露わにしま

す。ラスネールも敵愾心を見せます。伯爵は決闘

を申し込みますが、ラスネールは決闘を愚劣とし

て、いつでも武器は持っているとナイフを見せま

す。伯爵は老いた執事にラスネールを去らせるよ

うに指示します。

 

 寝室でギャランスと語り合う伯爵は彼女の微笑

みを受けたスコットランドの青年を決闘で銃殺し

たことを確かめます。

 妻ギャランスを愛し独占したい思いから、少し

でも親しくする男性は葬るという厳格な方針を伯

爵は決めていました。

 

 バチストは相談相手の中年女性マダム・エルミ

ーヌの下宿で彼女に悩みを打ち明けます。「恋な

んて簡単よ」と語ったギャランスに抱くこともな

く部屋から去った自分の純情決断が幼いものだっ

たと恥じ入り苦悩します。

 

 エルミーヌは食事をとるようにと語り宥めて部

屋から出ます。秘かに知らされていたナタリーが

一階に来ていました。

 エルミーヌはバチストをそっとしておくことが

大事ねと語りナタリーも同意します。

 

 

 『オセロ』の舞台が開幕します。

 

 オセロ役のフレデリックは全身を黒く塗ってム

ーア人の肌を見せ、妻を愛するあまり不貞の疑惑

を真に受けてしまい、旗手イアーゴーの役者に気

持ちを語ります。

 

  「俺は悔しいのだ」

 

 オセロの台詞を、ボックス席の伯爵夫妻の妻ギ

ャランスを見つめながら熱く語ります。

 

 伯爵は「シェイクスピア等くだらん」と冷笑し

ます。ボックス席に花束が届けられます。「デズ

デモーナよ、ありがとう。オセロより」のメッセ

ージを読み、伯爵はオセロ役者の妻への想いを察

して覚悟を決めます。

 

 舞台ではフレデリックのオセローがデズデモー

ナ役者の女優に「死の床だ」と絞殺を宣言します。

 「死は易しか」と伯爵は宣言し、フレデリックと

決闘したいという意思を語ります。ギャランスは止

めますが、夫の意見は固いものでした。

 

 舞台ではデズデモーナ役者がせめて半時間待って

の台詞を語り、フレデリックのオセロが「もう遅い」

と叫び絞殺の場を熱演します。

 

 劇場に来ていたバチストはモントレー・ギャラン

ス夫妻の姿を見つめます。

 

 伯爵は「名優に挨拶したいのです」と楽屋に向か

い、ギャランスは「それなら貴方とお別れします」

と告げますが、伯爵は「あの男ともな」と冷厳に述

べます。

 

 夫は友人への殺意を燃やしどうしようかと迷うギ

ャランスは沢山の観客の中にバチストの姿を発見し

ます。

 バチストも彼女と目を合わせ、二人はベランダに

向かいます。

 

  伯爵とフレデリックは対面します。

 

 

  伯爵「残忍な役を見事に演じておられる」

 

  フレデリック「恐縮です。シェイクスピアが書

         いたままに演じたままです。見

         事な戯曲です。」

 

   伯爵「シェイクスピアとは肉を切る芝居で名

      を馳せた人物とか?」

 

    フレデリック「その通りです。」

 

   伯爵「どうりで不快な獣性がしますな。」

 

 ベランダではギャランスとバチストが抱きしめあ

っていました。

BG

   ギャランス「もう会えないかと」

 

   バチスト「私こそもう永久に」

 

 二人は愛を確かめ合います。

 

 劇場ロビーで伯爵は仲間達とフレデリックを囲

み挑発を続けますが、そこへラスネールがやって

きてフレデリックのオセロ名演を讃えます。

 

 

 伯爵はどんなことに才能を御使いかなと聞き、

ラスネールは「芝居を書いております」と報告し、

「寝取られ男の滑稽譚だ」と劇の主題を確かめま

す。

 

 伯爵の顔は青ざめます。伯爵の友人貴族は「上

演されまい」と冷笑し、ラスネールは「上演され

ます。いや、上演中だ」と述べ、自身が書いてい

る芝居は「殺人がありますぞ。幕が降りても死者

は立ち上がらない」と宣言します。

 

  伯爵「うるさい男だ。叩き出しましょう!」

 

  二人の貴族がラスネールの腕を掴みます。

 

 

  ラスネール「俺は屈辱に甘んじる男ではない

        ぞ!

        通俗喜劇の道化役者は俺ではな

        い!

         貴様だ!見せてやる!」

 

 ラスネールはカーテンを引きます。ベランダで熱

く深いキスを交わしているギャランとバチストの姿

がありました。

 

 伯爵は溺愛している妻が昔の恋人バチストとキス

している光景を見てショックを受けます。

 

 フレデリックと伯爵は決闘を確約し去って行きま

す。

 

 恋の再燃は、関係者達に壮絶な戦いを呼び起こ

してしまった。ギャランスとバチストは関係者の

平安を祈りつつも、思い出の部屋で愛を確かめ合

って、遂に結ばれます。

 

  ギャランスは「恋なんて簡単よ」と語ります。

 

 ☆犯罪大通り 七人の男女☆

 b g

 パリ犯罪大通りの演劇人男女の愛を華麗に書き

描き語る。

 

 ジャック・プレヴェールの精緻な脚本とマルセ

ル・カルネの秀麗な演出は完璧です。

 

 宇宙の歴史において永遠の命を明かしているフィルム

『天井棧敷の人々』です。

 

 

 文学・音楽・演劇・美術に学びつつ、それらの尊さ

と魅力を鮮やかに吸収して包み取っている。

 

 初鑑賞・2回目鑑賞から40年経ちました。


 見る度聞く度に新たな学びがあります。

 

 ジャン=ルイ・バローがバチスト役で見せた瞳は綺麗です。

 

 パントマイムは切なさを教えてくれます。

 

 掏摸騒動を再現する芸は圧巻です。

 

 無言劇は失恋の悲しみを身体で語ります。

 

 古着屋と争って斬る芝居には息子にとって

の壁としての父への体当たりの精神がありま

す。

 

 モデルのジェリコはバチストの心の急所

を突く存在でバチストは痛い所を指摘して

くる存在として嫌悪しています。

 

 

 

 

 

 

 ジャック・プレヴェールの脚本は広大無辺です。

 

 「恋する二人にパリは狭し」

 

 「恋なんて簡単よ」

 


 

 台詞の美しさに感嘆します。

 

 ジャン=ガスパール・ドビュロー(バチスト)、フレデリッ

ク・ルメートル、ピエール・フランソワ・ラスネールは実在

の人物です。歴史上の人物に登場してもらい、縦横無尽

に壮大なドラマの中で活躍して貰う。この偉業を成し遂げ

たプレヴェールの功績は絶大であります。

 

 無言劇・シェイクスピア劇に命を燃やす役者達の青春

がドラマを熱くします。

 

 ジャン=ルイ・バローの無言劇は純粋で強烈で

切なさを極め、バチストの一途な愛を象徴してい

るようです。

 

 ピエロ・女神・道化師の三角関係の無言劇は、

バチスト・ギャランス・フレデリックの恋のド

ラマと呼応し、凄まじい迫力が銀幕に溢れます。

 

 ピエール・ブラッスールのフレデリックは堂

々たる台詞回しでシェイクスピアの言葉を読み

ます。『白い男』では、フレデリックにとって

長年の課題であったオセロー役が劇中劇で映り

ますが、嫉妬に燃えてしまい判断力を失い、凶

行に突き進んでしまうオセローの悲劇を、ブラ

ッスールが渾身の熱演で勤め

ます。

 

 劇中劇の時間は短いのですが、映像史上のシェ

イクスピア劇の大傑作として讃えています。

 

 アルレッティの妖艶で華麗な美しさに感嘆し

ました。

 

 

 男達から愛され、男達が命を賭けて奪い合お

うとする美女の魅力が咲き誇っています。

 

 アルレッティは1898年5月15日に生まれました。

本名はLeonie Marie Julie Bathiat レオニ・マ

リー・ジュリー・バティアです。

 1992年7月24日94歳で死去しました。

 この映画の公開時は満年齢47歳で妖艶な美は光

っています。

 

 ナタリー役のマリア・カザレスは清純無垢な美

が輝いています。

 

 誇り高き野心家の怪盗ピエール・フランソワ・

ラスネールは名優マルセル・エランの当たり役で

す。掏摸事件では疑いがかかっても構わず逃げて、

ギャランスに迷惑をかけて、彼女に惹かれつつも、

強盗という方法で社会と戦います。

 

 傲慢さを隠さず、愛しいギャランスに朗々と愛

を語るモントレー伯爵。

 

 ルイ・サルーの重厚で深い台詞回しが印象的です。

 

 

 

 

 視覚が不自由な浮浪者に扮しつつ、実は視力があ

って、鑑定をしている老人絹糸を、渋い名優ガスト

ン・モドーが勤めます。

 

 ルイス・ブニュエル監督作品『黄金時代』、ジ

ャン・ルノワール監督作品『大いなる幻影』技師

役・『ゲームの規則』シェマシェール役で活躍し

た大名優です。五年前に嫉妬に狂う密漁監視人シェ

マシェールを重厚に演じた人が視覚不自由を装お

って金を稼ぐ絹糸老人を渋く演じる。



 マダム・エルミーヌを演じる人はジャ―ヌ・マ

ルカン。

 ジャン・ルノワール監督作品『ピクニック』に

続いておばさまの色香を魅せます。フレデリック

に讃えられるシーンの色気は凄い。

 第二部でバチストを見守り包む母性の暖かさに

圧倒されました。

 本作の母性を代表する人でしょう。



 

 ジャンの兄ピエール・ルノワールが古着屋ジェ

リコを渋く勤めて、永遠普遍の物語を締めてくれ

ています。強かで世渡り上手の古着屋ですが、ナ

タリーへの気遣いには優しさが光ります。ナタリ

ーを裏切ってしまっているという痛みを突かれて、

バチストは、ジェリコに怒りをぶつけます。

 

 ジェリコがバチストに抱く感情は父性愛であ

り、先輩が後輩に対する兄弟愛のような思いで

もあります。バチストは「お前は嫌いだ」と怒

鳴り、反抗期を隠さずに否定します。ジェリコの

教えにバチストは壁のような圧迫を感じたか?

 

 バチスト、フレデリックは青春という意味で、

カルネ・プレヴェールの分身であり、ラスネー

ル・モントレーは「誇り」、ジェリコは「老い」

ということで、作者の心を現していると観れると

思うのです。

 

 秀麗な美貌のギャランス。

 

 

 

 パントマイムに燃えつつ一途な愛に生きるバチ

スト。

 

 

 

 シェイクスピア劇に情熱を燃やし、ギャランス

への想い

 

 

とバチストへの友情を共に確かめるフレデリック。

 

 父のごとくバチストを親身に見守って怒鳴られ

る好々爺のジェリコ。

 

 清純無垢で一途で優しい女性ナタリー。

 

 

 

 独占欲に満ちた愛に燃えて、恋敵に怒りを隠

さぬナルシストのモントレー。

 

 社会に挑戦しつつ、愛するギャランスへの想

いを認めざるを得なくなる怪盗ピエール・フラ

ンソワ・ラスネール。

 

 七人の男女のドラマは、無限の美しさを魅せ

ます。

 

 

 名台詞は綺羅星のように光ります。

 

 

 

   フレデリック「この嫉妬こそ役立つ。そ

          して必要なのだ。

          有難う。君らのおかげで、

          ついにオセロを

          演じることができる」

 

   ギャランス「昔は良かった。

         幸福な日々・・・・・・

         甘い生活・・・・・・。」

 

 

   

 

 

  La vie belle.(人生は美しい。)

 

 

  七人の愛のドラマは、熱く燃えます。

 

 

 

  昭和五十九年(1984年)四月二十日、この映

画を鑑賞して映画の生命が生きていることを実感

しました。

 

 二日後の四月二十二日にもう一度見て改めて感

激しました。本日鑑賞四十年記念日です。

 

 

 

 平成十三年(2001年)四月二十八日シアター1

200(現・京都劇場)における三度目の鑑賞では、

感極まって、感涙の涙を流してしまいました。三

十三歳男が声を抑えてとは言え涙を流してしまっ

た。男も泣く時はあります。

 

 平成二十二年(2010年)七月十九日TOHOシネ

マズ二条では午前十時の映画祭で上映されました。

この日は暑かったなぁ。

 195分一挙上映で、「犯罪大通り」と「白い男」

の間に休憩が無かったことが、ちょっと違和感が

ありましたね。過去三回では休憩がありました。

この当たりに、上映スタッフが若くなって、大作

名画の上映方法への慣れの問題を思いました。

 

 

 

 その問題は思いましたが、TOHOシネマズ二条

における195分一挙上映においても大感激しまし

た。

 

 2020年11月8日京都シネマにおいて、4K修復

版の2K上映を鑑賞しました。鮮明な映像で映像

芸術美を鑑賞し胸がいっぱいになりました。

 

 しかし、お客さんが少なかったことは残念で

した。

 

 1984年4月20・22日祗園会館上映はほぼ満員で

した。

 

 

 

 

 ピエール・ブラッスールは1905年12月22日誕生

しました。1972年8月14日66歳で死去しました。

 

 ピエール・ルノワールは1885年3月21日に誕生

しました。父はピエール=オーギュスト・ルノワ

ール、母はアリーヌ・ルノワールです。1894年9

月15日には弟ジャンが誕生します。

 

 ピエールは1952年3月11日に66歳で死去しま

した。

 

 

 マリア・カザレスは1922年11月21日に誕生し

ました。74歳誕生日翌日の1996年11月22日に死

去しました。

 

 ポール・フランクールは1905年6月29日に誕生

しました。1974年10月27日に死去しました。本作

ではギャランスを執拗に追求する警視を鋭く演じて

います。38歳のポール・フランク―ルは瘦せている。

1968年のルイス・ブニュエル監督『銀河』では渋い

老巡礼ピエールをいぶし銀の魅力たっぷりに魅せて

くれました。


 アラン・キュニー、ピエール・クレマンティ、ミ

シェル・ピッコリ、デルフィーヌ・ゼリッグと言った

名優達が短時間出演で鋭い存在感を示しますが、主

役はポール・フランク―ルの巡礼ピエールです。

 後に渋くピエール役を勤めるポール・フランク―ル

は、1945年の『天井棧敷の人々』では厳しい警視を

鋭い動きで演じました。

 

 ルイ・サルーは1902年4月23日に誕生しまし

た。1948年10月12日に46歳の若さで死去しま

した。

 

 マルセル・エランは1897年10月8日に誕生し

ました。1953年6月11日に55歳で死去しました。

 

 マルセル・カルネ監督は1906年8月18日に誕

生しました。

 1996年10月31日90歳で死去しました。

 

 わたくしが『天井棧敷の人々』を祇園会館に

おいて二回目鑑賞した1984年4月22日は、アルレッ

ティ、ジャン=ルイ・バロー、マリア・カザレ

ス、マルセル・カルネ監督の四人は健在だった。

 

 ヴィシー政権のフランスにおいて製作された

作品です。ナチスドイツに占領されている時代

に、フランス映画芸術の底力を見せようという

スタッフの精神を感じます。

 

 ジャック・プレヴェールの脚本は完璧です。

 

 物語の美しさは言葉・文字を超えています。

 

 マルセル・カルネの演出は映画芸術の絶対的

な美を明かしました。

 

 主演女優アルレッティの美しさは銀幕に輝いて

います。

 

 

 主演男優ジャン=ルイ・バローがパントマイム

で勤め示した芸には一途な愛が光っています。

 

 『天井棧敷の人々』映画館二回目鑑賞四十年記

念日の今日、バチストの一途な探求・ナタリーの

無垢と熱い愛、ギャランスの優美さと妖艶さ、フ

レデリック・ルメートルのオセロへの情熱、ピエ

ール・フランソワラスネールの誇り、モントレー

伯爵の独占欲、ジェリコの父性に無限の美を輝か

せたマルセル・カルネ監督に深謝します。

 

 

            

                    

        

 

 

 

   


 

 

      2024年4月22日

     

                        セブン