サンセット大通り | 俺の命はウルトラ・アイ

サンセット大通り

『サンセット大通り』

Sunset Boulevard

ビル グロリア エリッヒ

映画 トーキー 110分 白黒

1950年8月4日 アメリカ合衆国封切

昭和二十六年(1951年)十月二十八日 日本封切

 

製作國 アメリカ合衆国

製作言語 英語

 

製作会社 パラマウント映画社

アメリカ配給 パラマウント映画

日本配給 セントラル映画社

 

製作 チャールズ・ブラケット

脚本 ビリー・ワイルダー

   チャールズ・ブラケット

   D・M・マーシューマンJr

音楽 フランツ・ワックスマン

撮影 ジョン・サイツ

編集 アーサー・P・シュミット

 

出演

 

ウィリアム・ホールデン(ジョー・ギリス)

 

グロリア・スワンソン(ノーマ・デズモンド)

 

エリッヒ・フォン・シュトロハイム(マックス)

 

ナンシー・オルソン(べティ・シェーファー)

 

ジャック・ウェッブ(アーティー・グリーン)

フレッド・クラーク(シェルドレイク)

 

本人出演

 

バスター・キートン

H・B・ワーナー

アンナ・Q・二ルソン

ヘッダ・ホッパー

ジェイ・リビングストン

レイ・エバンズ

セシル・B・デミル

 

監督 ビリー・ワイルダー

 

2010年代TOHOシネマズ梅田

アネックスにおいて鑑賞

 脚本家ジョー・ギリスはシナリオを映画

会社に採用してもらえなかった。厳しい暮

らしを送るジョーにストレスが溜まる。

 

 借金の取り立てから逃げたジョーは大豪邸

に隠れた。無声映画の大女優ノーマ・デズモ

ンドが召使のマックスと暮らしていた。

 

 ノーマが書いた『サロメ』の脚本の手直し

をするようにとジョーは頼まれる。ノーマは

過去のスタアでトーキー時代の現代ハリウッド

商業主義の波から全く呼ばれてない。

 

 だが昔の栄光を忘れないノーマは復帰できる

と確信していた。ノーマを女神のように崇拝す

るマックスは決して本当の事を言わない。ノー

マの喜びだけがマックスの幸なのだ。

 

 ジョーはノーマに思われていることを知り去

った。だが、ノーマが自殺未遂をしたことを聞

き戻る。ノーマはジョーに愛を告白する。

 

 チャールズ・チャップリンに扮した芸をノーマ

は自宅で見せる。

 

 撮影所からノーマに連絡が入る。ノーマが到着

するやスタッフ達は感激して喜びを伝える。ノーマ

は過去の栄光だけでなく現在も喝采を受けていると

確信する。

 

 ところがスタッフの目的はノーマが所有している

車イゾッタ=フラシキーニを撮影に借りることだけ

だった。

 

 セシル・B・デミル監督は「デズモンドさんには

真の目的は秘めて」とスタッフに注意して、ノーマ

に再会の喜びを伝えた。デミル監督から丁寧な挨拶

を受けたことでハリウッド表舞台への復帰は間違い

ないとノーマは思い込む。

 

 ジョーは女性脚本家べティとシナリオ執筆作業を

進めていくうち彼女を愛するようになる。べティも

ジョーに惹かれる。

 

 マックスはジョーに「べティさんとの仲を奥様に

気付かれないように」と注意する。ファンに扮して

複数のファンレターを沢山書いてノーマの観念幸福

に貢献しようとするマックスの献身にジョーは疑問

を感ずる。

 

  「彼女をスタアにした監督であり、かつての夫

   であった男は私です。」

 

 マックスはジョーに過去を打ち明けた。

 

 ジョーはべティと暮らす決意を固め、ノーマに邸

から出て行くことを宣言する。

 

 ノーマは悲憤の思いから銃を取った。

 

 

 ◎キャメラが映すひとみ◎

 

 

 ウィリアム・ホールデン William Holdenは1918

年4月17日に誕生した。アメリカ映画の大スタア・名

優である。1981年11月12日自宅で酔ってテーブルに

頭部を打って事故死した。63歳。

 31歳で繊細で悩める二枚目脚本家ジョー・ギリスを

演じた。

 

 グロリア・スワンソン Gloria Swanson は

1899年3月27日に誕生した。サイレント時代に大

活躍したそうである。1983年4月4日、84歳で死去

した。

 51歳で自身がモデルかもしれないと思われる

ノーマを重厚な存在感で現した。その妖艶さに

圧倒される。

 

 

 エリッヒ・フォン・シュトロハイム Erich von 

Seroheimは1875年9月22日、オーストリアに生ま

れた。

 1957年5月12日、フランスにおいて死去。71歳。

国籍はアメリカ合衆国である。映画監督・俳優・脚

本家として活躍した。

 

 映画界に生きる人々の関りにおいて起こった悲劇

に衝撃を受けた。ノーマ・マックス・ジョー・べテ

ィは四者ともに映画愛に燃えている。映画を愛する

人々の人間関係で感情の爆発による事件が起こる。

 

 チャールズ・ブラケット、ビリー・ワイルダー、

D・M・マーシュマンのシナリオは完璧である。ま

さに息を呑む脚本である。精緻に書かれているのだ

が、精密さを感じさせないところが凄まじい。

 

 物語要約で衝撃のオープ二ングと緊張のラストは

敢えて触れない。倒叙形式をワイルダーは採用した。

核心を知っていても観客は緊張する。観客の心を掴

んで離さない。ビリー・ワイルダーは天才の中の天

才である。

 

 ビリー・ワイルダーの演出も完璧である。大傑作

という言葉を千万並べても顕彰しきれない。

 

 午前十時の映画祭上映でTOHOシネマズ梅田アネ

ックスで2010年代に鑑賞したのだが、迂闊にも鑑賞

日時を書き忘れていた。

 

 グロリア・スワンソンの作品では本作が自分に

とって初鑑賞である。無声映画時代は未見なのだが、

スタアの存在感はトーキーの本作からも窺える。

 

 無声映画の大監督であり、ノーマを指導した存在

で、彼女の元夫で現在執事であるマックスをエリッヒ・

フォン・シュトロハイムが勤める。

 その重量感は圧巻である。

 

 ノーマ/グロリア、マックス/エリッヒという巨星

二人の出勤を得たことで、本作の大成功は決まった

のかもしれない。

 

 無声映画の大女優・大監督の存在感は当事者で

ないと出せないものなのかもしれない。

 

 換言するならばトーキー(あえて描写は控えら

れているがカラー時代でもあった)になればサイ

レントのスタア・名監督たちは捨てられていく。

時代の流れの冷厳さを見つめている。過去の栄光

が忘れられず、現在もスタアの存在を魅せようと

するノーマの執念をスワンソンが情熱的に表現

する。

 

 シュトロハイムの凄みに圧倒された。

 

 商業主義は時代の激変により過去の功労者に

冷淡になり、新たな人気者をもてはやす。

 

 冷酷な時代の暴流を見つめつつ、過去に対す

る敬意を忘れない。これがビリー・ワイルダー

が教えてくれていることではなかろうか?

 

 ラストは感嘆したというよりも震えた。

 

 ノーマの瞳に爛々と燃える情熱をグロリア・

スワンソンが鬼気迫る表現で伝えた。

 

 マックスが監督しての顔を見せる。

 

 時代がどれほど激変しようが、無声映画の

スタア女優・大監督でないと表せない重量感

がある。

 

 大女優グロリア・スワンソンの至芸と巨星

エリッヒ・フォン・シュトロハイムの演出風景

を記録しておきたいという課題が、ビリー・

ワイルダーの心にあったのかもしれない。

 

 

 

 

 1986年3月24日 第58回アカデミー賞授賞式

 

 

 黒澤明、ジョン・ヒューストン、ビリー・ワイル

ダーが作品賞発表プレゼンターを勤めた。

 作品賞はビリー・ワイルダーが発表し、『愛と哀

しみの果て』 Out of Africaが受賞した。

 

 

                   合掌