モダン・タイムス | 俺の命はウルトラ・アイ

モダン・タイムス

『モダン・タイムス』
Modern Times
 
映画 トーキー 87分 白黒
1936年(昭和十一年)二月五日 アメリカ合衆国封切
昭和十三年(1938年)二月 大日本帝国封切
配給 ユナイテッドアーティスト
 
製作 チャールズ・チャップリン
脚本 チャールズ・チャップリン
音楽 チャールズ・チャップリン
   アルフレッド・ニューマン
撮影 ローランド・トサロー 
   アイラ・モーガン
 
出演
 
チャールズ・チャップリン(労働者チャーリー)
 
ポーレット・ゴダード(浮浪少女)
 
ヘンリー・バーグマン(キャバレーの主人)
チェスター・コンクリン(工場の技師)

アラン・ガルシア(製鉄会社社長)

 

スタンレー・サンドフォード(ビッグ・ビル)

マードック・マクアリー(J・ウィデコム・ビローズ) 

テッド・オリバー(ビローズの助手)

ノーマン・アインスリー(ビローズの助手)

ハンク・マン(強盗)

ルイ・ナトー(強盗)

スタンリー・ブリストーン(少女の父)

グロリア・デ・ヘイヴン(少女の妹)

グロリア・テルソン(少女の妹)

リチャード・アレクサンダー(服役囚)

セイラ・レイノルズ(牧師)

マイラ・マッキー二(牧師夫人)

フレッド・マラテスタ(給仕)

サミー・スタイン(交換手)

チャールズ・コンクリン(工員)

ウォルター・ジェームズ(職長)

ボビー・バーバー(工員)

チャック・ハミルトン(工員)

ジャック・ロウ(工員)

フランク・ハグニイ(労働者)

パット・ハーモン(警官)

エドワード・キンボール(医師)

J・C・ニュージェント(主任)

ジョン・ランド(ウェイター)

 

監督 チャールズ・チャップリン

 

鑑賞日時場所

平成十四年(2002年)十二月十四日

Planet+1

 学習の為結末まで言及します。本作及び

『ランジュ氏の犯罪』『どん底』を未見の

方は御注意下さい。

 人々が速足で進む。巨大製鉄工場では

労働者たちがベルトコンベアーで流れる

部品のナットを締める。

 男性労働者チャーリーは懸命に作業を

行う。だが厳しい仕事に従事することで

精神を病んだチャーリーは暴行事件を犯し

病院に送られる。

 

 退院した日に赤旗を拾ったチャーリー

は、デモ隊の先頭の位置に立ち警察に逮

捕され拘置所に入れられた。脱獄計画者

を見つけたチャーリーは模範囚として釈放

され造船所の職を得るが慣れていない仕事

でミスをして解雇された。

 

 少女がパンを盗もうとして警察に捕まる。

この光景をチャーリーが見た。少女は父が

亡くなり、妹たちが施設に送られ逃げ出して

その日その日の飢餓をしのぐ厳しい暮らしを

為していた。チャーリーは無銭飲食をして

警察に捕まる。チャーリーと少女は意気投

合して逃げた。

 

 チャーリーは警備員仕事を見つけたが解雇

され、工場技師として働いたがストライキで

工場そのものが閉まってしまった。

 

 少女はダンスの才によりキャバレーで働き、

彼女に推されたチャーリーはウェイターの職

を得た。チャーリーは「ティティナ」の歌を

歌って人気を博した。

 少女を施設に戻す為に官憲が店に入ってき

た。

 

 二人は逃げた。仕事を見つけたが又しても

失い流浪することになり、少女は悲しむ。チ

ャーリーは「笑って」と少女を励ます。二人

は笑顔で歩みだした。

 

 ◎二人の歩み◎

 

 

 チャールズ・チャップリン Charles Spencer

Chaplin は1889年4月16日イギリスロンドンに誕

生した。

 1977年12月25日スイスにおいて88歳で死去した。

俳優・映画監督・脚本家・プロデューサー・作曲家

として活躍した。喜劇王であり大スタアである。地

球映画の歴史を代表する存在である。

 

 36歳で『モダン・タイムス』の製作・脚本・音楽

・主演・監督を担当した。資本主義の激しく厳しい

流れの圧迫に対して、命を生きることの尊さを尋ね

た。

 

 チャーリーがローラースケートを為しながら「ティ

ティナ」を歌うシーンは名場面だ。

 

 工場の歯車に巻き込まれるシーンは危険だったと

思われるが、チャーリーその危険性に挑み笑いで表

現した。

 

 打ち続く苦難に立ち向かうチャーリーと少女は

仕事を見つけ懸命に働く。だが体制に睨まれ仕事

を失う。苦しさと悲しみが迫ってくる。資本主義

の厳しさが立ちはだかる。少女の悲しみにチャー

リーは笑って欲しいと望み、希望の炎を再燃させ

る。

 

 人間を道具と見て敏速に仕事を為し結果を出さ

ない存在は圧迫する。この資本主義の厳格な掟に

対して、生物・人間として生きることの幸福を回

復する道を見出したい。

 

 チャールズ・チャップリンが語ったメッセージ

は暖かい。88年の歳月を経て、資本主義の冷厳さ

は更に激しいものとなっている。現代に『モダン

・タイムス』の名場面を想い起すと笑いよりもどき

っとする緊張のほうが多いのだ。

 

 ラストの「笑って」は名場面である。

 

 チャーリーと少女は強い。これほど強く再起し

立ち上がれるかどうかは分からない。だが、この

感動の終幕を想い起すことが観客にとって大事な

のだ。映画館を出れば厳しい現実が迫ってくる。

押し潰され叩き潰されても笑顔を回復して未来へ

と歩みだす。苦しみと悲しみの中で笑顔で歩むと

いうことは最も厳しいことかもしれない。

 

 資本主義の冷酷さを問うたということで保守的

な評論家から「共産主義的映画」として冷笑され

た。その嘲りも堂々と受け取る大きさを本作に感

じる。

 

 商業主義を絶対化する観念の圧迫に対して、命を

生きることの尊さを明らかにする。

 

 『モダン・タイムス』が語る教えは歴史を貫いて

いる。

 

 チャールズ・チャップリンとポーレット・ゴダー

ドは私生活でも愛し合った。事実婚で入籍はしてい

ないという。

 

 ルネ・クレールの『自由を我等に』は昨日申しあげ

たように未だ銀幕鑑賞していないのだが、テレビ放送

版を少年時代に視聴し衝撃を受けた。『モダン・タイ

ムス』ドラマの筋において流れ作業やラストの道路の

歩みは『自由を我等に』と似ている。『自由を我等に』

のドイツ製作会社トビス社はチャップリンを著作権侵害

で訴えた。

 しかし、ルネ・クレールは「光栄に思う」とチャー

リーへの敬意を語った。

 

 チャップリンを崇拝していたジャン・ルノワール

は『どん底』のラストにおいて、『モダン・タイムス』

讃嘆を撮っている。

 

どん底 Les Bas‐Fonds ジャン・ギャバン主演作品

 

 ペペル(ジャン・ギャバン)とナスターシャ(ジュ

ニー・アストゥ―ル)が笑顔で歩み出すラストは、『モ

ダン・タイムス』へのオマージュと言われている。事実

その通りだろう。

 

ランジュ氏の犯罪

 だが、ジャン監督は『ランジュ氏の犯罪』ラスト

において、アメデー(ルイ・ルフェーブル)とヴァ

ランチ―ル(フロデル)が手に手を取って国境を越

えようとするラストを撮っている。

 

 『ランジュ氏の犯罪』は1936年作品でフランス

封切日は『モダン・タイムス』アメリカ封切日より

一か月前である。チャーリーが『ランジュ氏の犯罪』

を見たかどうかは分からない。

 

 チャールズ・チャップリン、ジャン・ルノワール

師弟に「圧迫に遭っても屈せず、生きる喜びを笑顔で

求める恋人達」を書き描き映し出したいという夢が

同時期に起こったということこそ現代観客のわたくし

が学ぶべき事柄なのだろう。

 

 

  

 1972年4月10日

 ロサンゼルス ドロシー・チャンドラー・パビリオン

 第44回アカデミー賞授賞式

 

 名誉賞受賞 チャールズ・チャップリン

 

 チャールズ・チャップリンが教えてくれた「笑って」

の呼びかけを胸に想い起して日々の道を歩んで行きたい。

 

 

                      合掌