必殺!Ⅲ裏か表か | 俺の命はウルトラ・アイ

必殺!Ⅲ裏か表か

『必殺!Ⅲ 裏か表か』

映画 トーキー 126分 カラー
昭和六十一年(1986年)五月二十四日封切
製作国 日本
製作言語 日本語
製作会社 朝日放送 松竹株式会社
配給 松竹
 

製作      山内久司 

        櫻井洋三(松竹)

製作補     高橋信仁

脚本      野上龍雄   

        保利吉紀 

       中村勝行

撮影      石原興

美術     太田誠一

編集     園井弘一

音楽    平尾昌晃

 

主題歌 「やがて愛の日が」

 作詞   茜まさお

 作曲   平尾昌晃

 編曲   竜崎孝路

 唄    三井由美子

 ビクターレコード

 

 

藤田まこと(中村主水)

 

 

鮎川いずみ(加代)

菅井きん(中村せん)

 

白木万理(中村りつ)

京本政樹(竜)

村上弘明(政)

 

柴俊夫(壱)

笑福亭鶴瓶(参)

 

成田三樹夫(舛屋仙右衛門)

川谷拓三(清原英三郎)

 

野坂クミ(おゆみ)

岸部一徳(彦松)

織本順吉(加納平馬)

 

 

ビートきよし(夢助)

レッツゴー正児(左楽)

佐川満男(梅市)

三沢あけみ(おさと)

山田スミ子(おしの)

遠藤太津朗(留守居役)

岩尾正隆(留守居役)

西山辰夫(勘定奉行所与力)

須永克彦(富山周平)

北見唯一(久兵衛) 

 松田明(弥助)

 奈辺悟(亥助)

 栗田芳廣(源次)

下元年世(地廻り)

志茂山高也(地廻り)

紅萬子(岡場所の女)

 

伊武雅刀(真砂屋徳次)

 

三田村邦彦(秀)

 

松坂慶子(清原こう)

 

監督   工藤栄一

 

山内久司=松田司

 

平尾昌晃=平尾昌章

 

藤田まこと=はぐれ亭馬之助

 

白木万理=松島恭子=白木マリ

 

室田悟=伊武専→伊武正巳

   →伊武雅之→伊武雅刀

公開当時 ピカデリーで三度鑑賞

 同心清原英三郎は美貌の妻こうに

惚れ込んでおり、昼間でも彼女にふ

れあいを求めていた。両替屋舛屋仙右

衛門は清原に強請られていた。舛屋の

作業場で梅干しの巨大な入れ物が落下

し強請にきていた清原は圧死する。

 勿論黒幕は舛屋である。

 

 おこうは両替商肝煎真砂屋徳次を問

い、舛屋と組んで夫を殺した下手人と

見破る。

 

 中村主水は清原とも関りがあった

おしのから舛屋から二十両の利息の

取り立てを頼まれて舛屋に行く。

 

 舛屋は「清原様のようになりたくない

なら」と主水を脅した。

 

 奉公人の彦松の使い込みを舛屋は叱責

する。彦松は一家心中する。

 

 仕事人政は舛屋に葬儀費用を払わせる

べきとして主水に取り立てを頼む。真砂

屋徳次は主水に刺客を放つ。秀の救援を

得て主水は危機を突破する。

 

 真砂屋から派遣された娘おゆみは主水と

親しくなる。主水はおゆみと過ごす時に癒

やしを感じた。真砂屋はおゆみを惨殺する。

激怒した主水は舛屋を捕え拷問にかけて清

原殺しを吐かせようとする。

 

 おこうは真砂屋の冷酷さを知っているので

主水の身を案じる。

 

 真砂屋は圧力をかける。

 

 主水とその仲間の仕事人達は真砂屋の包囲

網に遭い、攻撃される。仲間の参は殺し屋に

襲われ斬首され、竜も真砂屋一味に殺される。

 

 追い詰められた主水は襲い掛かってくる刺客

達と戦い、真砂屋に向かって突撃する。

 

 ◎待っていた本物写真に近かった◎

 

 

 藤田まこと(ふじた・まこと)は昭和八

年(1933年)四月十三日に東京府に誕生し

た。本名は原田眞(はらだ・まこと)であ

る。芸名別名義にはぐれ亭馬之助がある。

 平成二十二年(2010年)二月十七日、七

十六歳で死去した

 五十三歳で映画版『必殺』第三作の主役

の仕事人中村主水を演じた。

 

 

 工藤栄一(くどう・えいいいち)は昭和四

年(1929年)七月十七日に北海道に生まれた。

 平成十二年(2000年)九月二十三日、七十

一歳で死去した。

 昭和三十八年十二月七日封切、製作東映京都

の映画『十三人の刺客』を演出した。集団抗争

劇の傑作である。

 「必殺シリーズ」には深作欣二の推薦で『必

殺仕置人』の監督として招聘され、「閉じた眼

に深い淵」「女ひとりの地獄旅」「賭けた命の

かわら版」「大悪党のニセ涙」「能なしカラス

爪をトグ」「お江戸華町未練なし」を演出した。

 

 藤田まことと工藤栄一は『必殺仕置人』の時代

から「必殺シリーズ」のスタア・監督としてチーム

を組んできた。

 

 『必殺仕事人Ⅲ』以後「必殺シリーズ」は視聴

率において大ヒットしたが、毎回マンネリで脚本

は中身皆無で単に現代流行に迎合した内容しかな

かった。

 

 わたくしは『新必殺仕置人』において生命ドラ

マの壮絶さを学んだ。それ故に後期「必殺」を「必

殺」の名に値しない裏切り番組として糾弾してい

る。

 

 藤田まことはマンネリで視聴率のみ稼げる『必殺

仕事人』シリーズのいい加減な作りに辟易し、スタ

ッフに内容のある時代劇を作るように努めることを

求めた。

 

 山内久司・櫻井洋三プロデュ―サーを始めとする

スタッフもお手軽製作を見直し、真剣に闘いを語る

時代劇を映画版『必殺』第三弾で模索探求した。

 

 脚本に野上龍雄・保利吉紀・中村勝行の三名匠を

呼んで戦う主水のドラマを書いてもらった。

 人妻おこうに魅せられつつも愛しいおくみを殺さ

れ、強大な舛屋・真砂屋に牙を向けられても闘志を

剥き出しにして主水は挑む。

 

 藤田まことが戦う中村主水を深い芸で探求した。

 

 織本順吉は主水を慰め罠に嵌めて裏切る加納を

深い芸で見せてくれた。主水に命乞いして斬られる

クライマックスも素晴らしかった。

 

 久々に「必殺」らしさを感じ手応え・見応えがあ

った。

 

 冒頭の奉行所の取調べで「仕置のテーマ」が響く。

ここから緊張した。

 

 拓ボンが清原役で「やられ」を鮮やかに決めた。

 

 サリーの彦松も哀れさがあった。

 

 真砂屋の候補に沢田研二が挙がったそうだが、ウ

ィキペディアによると断られたそうである。

 

 伊武雅刀の真砂屋は冷酷さが強烈だった。

 

 舛屋の奉公人達が算盤を弾くシーンは迫力豊かで

工藤栄一は金の怖さを此処でも伝えてくれた。

 

 殺陣は工藤栄一の集団抗争劇が鮮やかに映えた。

 

 『十三人の刺客』『必殺仕置人』「女地獄のひと

り旅」を想起させてくれる壮絶さがあった。

 

 一番の見どころは舛屋と主水の戦いである。

 

 成田三樹夫が遂に「必殺」に出演した。

 

 意外にも本作が初出演である。

 

 藤田まこととの対決シーンは一番の盛り上がり

があった。

 

 金の為ならば邪魔者は抹殺するという冷酷非情

の豪商舛屋を成田三樹夫が凄み豊かに演じた。

 

 それ故に舛屋が捕らえられた後どうなったかわ

からないのは残念だった。

 

 クライマックスに主水と舛屋の決戦を描写して

欲しかった。

 

 おこうが自らの意志で制裁を仇に為すが、大詰

は拍子抜けの印象はある。

 

 主水がおこうに惹かれつつも片想いで堪える。

これは察するがもう少し細かく語って欲しかった。

 

 残念な点が無い訳ではない。

 

 しかし、舛屋の残酷さや大詰雨中の大決戦等

見応えのある描写があり興奮した。

 

 公開時三度ピカデリーに見に行った。

 

 久々に『必殺』らしい『必殺』に出会えたと

いう喜びがあった。

 

 野上龍雄生誕九十六年

 伊武雅刀七十五歳誕生日

 

           令和六年三月二十八日

 

               南無阿弥陀仏