偽れる盛装 | 俺の命はウルトラ・アイ

偽れる盛装

『偽れる盛装』

 

映画 トーキー 103分 白黒
昭和二十六年(1951年)一月十三日封切
製作国 日本
製作会社 大映京都
 
脚本 新藤兼人
撮影 中井朝一
製作 亀田耕司
美術 水谷浩
音楽 伊福部昭
 
出演
 
京マチ子(君蝶)
 
藤田泰子(妙子)
柳美恵子(福彌)
北河内妙子(雪子) 
瀧花久子(きく)
村田知栄子(千代)
牧千草(とんぼ)
橘公子(友香)
 
小林桂樹(孝次)
進藤英太郎(伊勢浜)
殿山泰司
 
菅井一郎(山下)
 
監督 吉村公三郎
 
鑑賞日時場所
平成十二年(2000年)十二月八日
京都文化博物館 映像ホール
 君蝶は気性の激しい美人芸者だ。男たちを
篭絡し財産を築いた彼女は、祇園靜乃屋で存
在感を示した。
 妹妙子は京都市職員として働いている。二
人の母きくは昔祇園で評判を呼んだ芸者であ
った。娘二人を産んだが、旦那に義理を尽くし
旦那の経済的に君蝶を奉公に出して金を工面
してあげた。
 
 君蝶は旦那とその息子に尽くすきぬと正反対
に男から貢がせ金を巧く取っていた。美術商笠
間がまんまと嵌った。君蝶の美貌に魅せられ溺
れた笠間は金を取られる。速神丸本舗番頭山下
も君蝶に惚れ込み金を使いまくった。
 
 妙子は身体を求めてくる恋人孝次に結婚して
くれるかを聞くが孝次は厳しい母親千代を恐れ
て首肯できない。
 
 君蝶は千代の旦那の伊勢浜を誘惑する。千代
は旦那を奪われることに悔しさが募るが美貌の
君蝶には歯が立たない。
 
 山下は店に金の使い込みがばれた。一目愛しい
君蝶に逢いたいと望むが彼女から冷たくされて
逆上する。出刃包丁を持った山下は君蝶を追いか
けた。
 

 ◎美貌芸者 君蝶◎
 
 京マチ子が美貌と肉体と色気で男達を魅了し金
を吸い上げる芸者君蝶を風格豊かに演じた。
 
 新藤兼人の脚本は冷徹な君蝶の金集めを鋭く描
く。
 
 吉村公三郎の演出は落ち着いていて気品がある。
 
 静かな演出リズムで終盤まで進む。
 
 君蝶の逞しさとパトロン男達の弱さが鮮やかな
対比を見せる。
 
 二十六歳グラマー美女京マチ子の芸者なのでお
っちゃんたちが魅了されて金遣いが荒くなって貢
ぐのもよう分かる。
 
 新藤兼人のドライな人間観察に息を呑む。男は
阿呆で女は賢明という事柄を厳しく描いている。
 
 君蝶の魅力に引っ掛かって鴨にされる男達を殿
山泰司・菅井一郎といった名優達が哀感豊かに演
じる。
 
 大詰で君蝶は出刃包丁を振り回す山下に追いか
けられ、踏切まで追い詰められ、電車が通り逃げ
られなくなる。
 
 吉村公三郎はこれまで抑えていたかのようなス
ペクタクル演出をこの大詰の踏切シーンで見せる。
 
 ここで京マチ子が見せる哀愁は凄い。これまで
強靭だった君蝶が山下の刃で弱者の立場に立たさ
れる。
 
 肉体で翻弄し金を巻き上げても、男の暴力の前
では女はやはり苦しめられる。
 
 切なさがこみあげてくる。
 
 
                    合掌