清水港の名物男 遠州森の石松 | 俺の命はウルトラ・アイ

清水港の名物男 遠州森の石松

『清水港の名物男 遠州森の石松』

 映画 トーキー 98分 カラー

 東映スコープ

 昭和三十三年(1958年)六月二十九日封切

 製作 東映京都

 

 企画 辻野公晴

    中村有隣

 原作 村上元三(『次郎長三国志』より オール読物連載)

 脚本 観世光太

  撮影 三村 明  

 照明 田中憲次  

 録音 藤本尚武  

 編集 宮本信太郎  

 美術 川島泰三  

 音楽 鈴木静一

 

 出演 

 

 

 中村錦之助(森の石松)

 

 中村賀津雄(島の喜代三)

 志村喬(身受け山の鎌太郎)

 

 丘さとみ(夕顔)

 中原ひとみ(おみの)

 長谷川裕見子(お園)

 

 加賀邦男(清水の次郎長)

 田崎潤(桶屋の鬼吉)

 田中春男(法印の大五郎)

 月形哲之介(布橋の兼吉)

 原健策(大政)

 

 片岡栄二郎(追分の三五郎)

 星十郎(綱五郎)

 石井一雄(仙右衛門)

 遠山恭二(鎌太郎の子分衆)

 時田一男(都鳥の梅太郎)

 中野文雄(吉兵衛の見張りの子分)

 岩井半四郎(小松村の七五郎)

 

 赤木春恵(やり手の婆ァ)

 山田光子(やり手の婆ァ)

 七条友里子(お町)

 若水美子(おまん)

 松風利栄子(おきぬ)

 月丘千秋(ぬい)

 梅村浪路(お徳)

 月山路子(おみち)

 山本鳥吉(おちょ)

 横田真佐子(おまさ)

 吉本清子(おきよ)

 東竜子(豚松の母親)

 吉野登茂子(おしず)

 梅沢昇(和田島の親分)

 尾上華丈(江尻の大熊)

 中村時之介(無頼漢)

 東日出雄(無頼漢の仲間)

 梅村直次朗(黒島屋の主人)

 五条恵子(小雪)

 富久井一郎(阿波のデク師)

 中村幸吉(太夫)

 山内八郎(馬子)

 大丸巌(お相撲常)

 永島隆一(兼吉の子分)

 

 山形勲(都鳥の吉兵衛)

 阿部九州男(都鳥の常吉)

 

 

 東千代之介(小政)

 

 監督 マキノ雅弘

 

 ◎

 小川錦一=初代中村錦之助=小川矜一郎

      →初代萬屋錦之介

 

 

 中村賀津雄→中村嘉葎雄

 

 原健策=原健作

 

 

 マキノ正博=牧野正博=マキノ正唯=マキノ陶六

       =牧陶六=牧野正唯=牧野正雄

       =牧野陶六=マキノ雅弘=マキノ雅広

 ◎

 鑑賞日時場所

 平成三十一年(2019年)四月二十二日

 ラピュタ阿佐ヶ谷

 

 感想文内ではクライマックス・結末に

言及します。未見の方は御注意下さい。

 ◎

 

 清水の次郎長親分は子分の森の石松に金毘羅

への代参を命じた。

 飲酒・喧嘩・賭博は駄目だが最も嫌っている

女ならばいいぞと次郎長は石松に告げた。

 道中の宿泊を経た石松は小政と言う粋な男に

出会った。小政は石松に恋愛の真を語った。や

くざ者にとって惚れてくれた女は大切なんだと

いう小政の教えに石松は心を打たれた。

 

 讃岐で石松は土地の遊女夕顔に恋する。石松は

夕顔に送られたが、手紙を貰っていた。

 大御所である身受け山の鎌太郎のもとに行った

石松は彼の身内が漁師や百姓と言った堅気の仕事

に従事していることを見る。鎌太郎は真面目に働

くことの大切さを清水港の名物男石松に説いた。

 

 夕顔から貰った手紙から鎌太郎は石松と彼女の

仲を取り持ちたいと望んだ。石松は歓喜しこのこと

を小政に伝えた。小政にとっても嬉しい出来事だ

った。

 石松は都鳥の吉兵衛のもとに金を返しに行った。

村では盆踊りが開催され面を被った男女が踊った。

 

 村の辻堂で石松は都鳥の吉兵衛の放った刺客に

襲われる。一年前に斬った保下田の久六の舎弟に

狙われている事を石松は想い起した。吉兵衛は策

略を巡らし石松を嵌めた。愛する夕顔の事を思う

石松に刺客達の刃が容赦なく襲い掛かった。

 

 

 

 初代中村錦之助は昭和七年(1932年)十一月

二十日東京府に三代目中村時蔵・小川ひな夫妻

の息子として誕生する。

 本名は小川錦一である。昭和十一年(1936年)

十一月初代中村錦之助の芸名で初舞台を踏む。

 昭和二十八年(1953年)十一月十五日に『鬼一

法眼三略巻』における虎蔵実は牛若丸を勤めた

後、映画俳優に転身する。

 時代劇映画を中心に出演する錦之助は大ス

タアとなる。

 二十五歳の中村錦之助は清水港の名物男遠州

森の石松を爽やかに勤めた。

 昭和四十六年(1971年)十月歌舞伎座公演

で屋号を萬屋に改める。

 昭和四十七年(1972年)芸名を初代萬屋

錦之介に改めた。

 平成九年(1997年)三月十日六十四歳で死

去した。

 

 

 中村賀津雄は昭和十三年(1938年)四月二

十三日に三代目中村時蔵と小川ひなの五男とし

て誕生した。本名は小川加沙雄である。

 二代目中村歌昇(四代目中村歌六)・四代目

中村時蔵・初代中村獅童・初代中村錦之助後の

初代萬屋錦之介は兄である。

 昭和十八年(1943年)九月歌舞伎座公演『取

替べい』において中村賀津雄の芸名で初舞台を

踏む。

 兄錦之助に続いて映画の世界に入り、昭和三

十年(1955年)松竹製作『振袖剣法』で銀幕デ

ビューを為した。

 十七歳で巨匠伊藤大輔監督作品『元禄美少年

記』に主演し、主人公矢頭右衛門七の悲しみを

繊細に表した。

 二十歳で美男の喜代三を鋭く演じた。

 

 

 

 志村喬は明治三十八年(1905年)三月十二日に

兵庫県に誕生した。

 本名は島崎捷爾(しまざき・しょうじ)である。

出演映画は四百本を超える。日本映画史を支えた

大名優である。

 昭和五十七年(1982年)二月十一日七十六歳で

死去した。

 五十三歳で鎌太郎親分を重厚に演じた。

 

 

 牧野正博は明治四十一年(1908年)二月二十九日

に誕生した。

 無声映画時代は子役を経て美少年役者として活

躍し後に映画スタッフとなり、監督として沢山の

作品を演出した。

 平成四年(1992年)十月二十九日、八十五歳で死

去した。

 

 清水港の名物男遠州森の石松は女嫌いであった

が、小政から恋愛のまことを聞き、夕顔に会って

恋心を抱き、鎌太郎親分から叱責を受けつつ真面目

に働くことの尊さを教わり、夕顔と所帯を持ちたい

と夢見る。

 

 マキノ雅弘は石松の学びと成長を探求し、彼の

心に労働や家庭といったことが課題になったとこ

ろで大詰の悲劇を描く。

 

 長屋民主主義を大事にしたマキノ雅弘は鎌太郎

の愛ある叱責に主題を集中したことが窺える。

 志村喬の重量感豊かな叱責注意は迫力豊かで、

観客も怒られる気持になる。

 

 名人マキノ雅弘は情感豊かにドラマを語る。大

詰は祭の時に石松が都鳥の罠に嵌って襲撃される。

歓喜と襲撃が同時進行で描かれるところに雅弘演

出の鋭さを感じた。

 

 山形勲は都鳥の吉兵衛役を憎たらしさいっぱい

に演じた。

 

 加賀邦男が主人公の父親的存在である次郎長で

渋さを見せた。

 

 東千代之介の小政は知的な魅力が光っていた。

良い男である。

 

 石松が斬殺される寸前でドラマは終幕となる。

「恐らく石松は都鳥に殺されただろうな」という

ところでドラマを閉じる。

 

 マキノ雅弘の情感豊かな演出に初代中村錦之助

が熱く応えた。

 

                    合掌

 

                

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 丘さとみさんの夕顔。綺麗です。

 

 

 志村喬さんの親分。迫力ありました。

 

 

 マキノ雅弘監督の情の表現が暖かい。