ウルトラセブン 史上最大の侵略 前編 | 俺の命はウルトラ・アイ

ウルトラセブン 史上最大の侵略 前編

『ウルトラセブン』「史上最大の侵略 前編」

 

 

テレビドラマ 30分 トーキー カラー

 

昭和四十三年(1968年)九月一日放送

 

令和四年(2022年)十月一日より十三日

『ウルトラセブン55周年記念 4K特別

上映』の一本として日本全国映画館にて上映

 

 

製作国 日本

製作言語 日本語

放送局  TBS系

 

監修  円谷英二

 

プロデューサー 末安昌三

        三輪俊道 

        橋本洋二

脚本      金城哲夫

 

撮影      永井仙吉

美術      岩崎致躬

照明      新井盛

音楽      冬木透

 

録音      松本好正

効果      西本定正

編集      柳川義博

助監督     山本正孝

製作主任    高山篤

 

特殊技術

撮影      中堀正夫

美術      池谷仙克

操演      平鍋功

照明      安藤正則

 

光学撮影    中野稔

助監督     円谷粲

製作主任        熊谷健

 

東京現像所 

キヌタ・ラボラトリー

TBS映画社

 

出演者

 

中山昭二(キリヤマ隊長)

 

森次浩司(モロボシ・ダン・ウルトラセブンこと340号 

     ウルトラセブンの声)
菱見百合子(友里アンヌ)


石井伊吉(フルハシ・シゲル)
阿知波信介(ソガ)
古谷敏(アマギ) 

 

南廣(クラタ)

 

岡部正(キタムラ博士)

池島美樹(ゴース星人 スーツアクター)

 

西京利彦(パンドンスーツアクター)

和田文夫(セブン上司の声)

 

上西弘次(ウルトラセブンこと340号 スーツアクター)
浦野光(ナレーター)

 

特殊技術 高野宏一

 

監督 満田Kazuho.svg

 

制作 円谷プロダクション

   TBS

 ◎

 森次浩三=森次浩司→森次晃嗣

 

 菱見地谷子→菱見百合子→ひし美ゆり子

 

 石井伊吉→毒蝮三太夫

 

 和田文夫=和田文雄

 

 満田Kazuho.svg=清瀬かずほ=満田かずほ

 ◎

 『ウルトラセブン55周年記念 4K特別

上映』鑑賞日時場所

令和四年(2022年)十月一日 九時四

十五分

TOHOシネマズ二条スクリーン9 Y‐14席

 ◎

 台詞の引用・ストーリーの要約・

シーンの考察は、研究・学習の為

です。

 円谷プロ様・TBS様におかれまし

ては、何卒ご寛恕・ご理解を賜り

ますようお願い申し上げます。

 ☆

 モロボシ・ダンは自室のベッドに横たわりで

厳しく早い呼吸を為し沢山の汗をかいていた。

左手で首を抑える。心身の疲労は溜まっている。

体調・健康は極めて危険な状態にあった。上半

身裸でベッドに寝ていたダンは起き上がる。時

計を見れば針は午前三時を指していた。

 

 苦しい体調でも勤務に精進することをダンは

選ぶ。しかし、エレベーター内でダンは睡魔に

襲われた。

 

 同僚のソガ隊員が『ライムライト』のテーマ

を口ずさんでいる。ソガは宇宙空間のパトロー

ルで異常が無かったことをダンに報告する。ダ

ンの顔色が冴えない事をソガは心配し、どこか

悪いんじゃないかとダンの身を案じて、「元気

出せよ」と声をかけ、パトロールを代わってや

ろうかと提案する。ダンは自分でパトロールを

為すと改めて宣言する。

 

 ホーク2号に乗ってダンは宇宙空間のパトロー

ルを為す。ホーク2号内部でダンは激しい睡魔に

襲われ宇宙空間の光景がぼやけて見える状態に

なった。

 

 「脈拍360、血圧400、熱が90度もあ

  る。原因は何だ?この異常な症状は?」

 

 

pict0000011

 ステーションV3ではクラタ隊長が宇宙空間

のパトロールを為している。クラタはホーク2

号にポイント701方面において飛行物体を発見

した。現在マッハ1・3のスピードで移動する飛

行物体はV3の呼びかけに応答せず地球に向かっ

ている。クラタは直ちに撃墜するようにダンに

命じた。

pict000008

 ホーク2号でダンは宇宙人の円盤を追うがか

わされる。ダンの視界には宇宙人の円盤がぼや

けて映る。円盤の攻撃でホーク2号は炎上する。

 

  「馬鹿もん、搭乗者は誰だ?名前を言え、

   名前を!」

 

 クラタは叱責する。「モロボシ・ダンです」

とダンは答える。「モロボシ。貴様、弾丸の

撃ち方も知らんのか?」とクラタは問う。よく

ウルトラ警備隊隊員が務まるなというクラタの

冷厳な叱声がダンに響く。ホーク2号を地球に

不時着させないと危ないとクラタはダンに指示

する。「防衛軍のエリートさん」とクラタはダン

をからかい嘲笑する。ダンは炎上したホーク2号

を地球に着陸させる。クラタは宇宙人の円盤を

攻撃し炎上させた。

 

 ダンはナースセンターで友里アンヌ隊員の看

護を受ける。アンヌはクラタ隊長の連絡でホーク

2号内のダンが救出されたことを告げる。ダン

救出の後ホーク2号は爆発したのだ。アンヌは

クラタ隊長の連絡が遅かったら助からなかった

かもしれないと恋人ダンに告げ、彼の運の強さ

を嘆じた。

 

  アンヌ「駄目駄目少しはあたしの言う事聞

      いて。貴方は酷く疲れているの。」

 

  ダン「平気だよ。」

 

  アンヌ「身体に自身がある人程身体の欠陥を

      知らないものよ。」

 

 ダンは強気を振り絞るが身体が思い通りに動

かない。射撃やバスケットボールでトレーニン

グを為したが、自身の目的を果たせず、歯痒い

思いを痛感する。

 

 

 「ダンはひとり、何をそんなに苦しんでい

  るの?」

 

 

 疲労困憊の心身で自身を厳しく鍛えるダンを

見てアンヌは心配する。

 

 作戦室においてキリヤマ隊長は、フルハシ・

シゲル隊員・ソガ隊員・アマギ隊員・アンヌ・

ダンに宇宙からの飛行物体が頻々と飛来して

いることを告げる。怪電波・異常デリンジャー

現象をキリヤマは警戒する。不穏な空気に地球

が包まれていることは退員達も知っていること

をキリヤマは察し、レーダーに、インベーダー

を一歩も地球に近寄らせないようにと命じる。

 

 防衛体制を固める任務を聞いたダンの体調

は厳しい。アンヌは精密検査をダンに勧める。

ダンは精密検査を受ければ宇宙人の身体であ

ることが露見するので拒否する。アンヌはレ

ントゲン写真を撮って心電図を取って身体の

内部を徹底邸に見る必要があるのと解説する。

 だが、ダンはレントゲン撮影や心電図検査

を強く拒絶する。

 

 ダンは自室でベッドに横たわった。M78星

雲からセブン上司が現れダンに呼び掛ける。

  「340号。否地球での呼び名に従って

   ウルトラセブンと呼んでおこう。君

   の身体は侵略者達との戦いでダメー

   ジを受けている。」

pict000008

 

pict000001

13-7

25-55

 

39話テスト 2

pict0000019

pict000001

pict000002

pict000005

  セブン上司はこれ以上地球に留まる事

はモロボシ・ダン/ウルトラセブンことM

78星雲恒点観測員340号にとって危険であ

ることを告げる。M78星雲に帰るべき時が

来たのだというセブン上司の言葉を聞くダ

ンは、美しい星地球を狙って侵略者が後を

絶たない状況であることを告げる。

 

  「僕が帰ったら地球はどうなるんだ?」

 

 ダンは問う。

 

 自分の事を考えるべきだとセブン上司は

忠告する。

 元の身体に戻れないのかとダンは問う。

セブン上司はM78星雲に帰る必要があり、34

0号の身体は人間の身体と違う事を重ねて強

調する。

 

  ダンは今は帰れないと確かめ、地球に

恐ろしい事が起こりそうなんだと美しい星

の危機状況を報告する。セブンは一つだけ

忠告しておくとして、戦ってこれ以上エネ

ルギーを消耗すれば、M78星雲に帰る事も

も出来なくなるので変身を厳禁する。

 

 ダンは心臓に手を当てた。時計は二十二

時三十分頃を指していた。

 

 宇宙ステーションV3からクラタは緊急事態

が発生した事を地球防衛軍作戦室のダンに連絡

する。

 ポイント580方面に飛行線上の物体をキャッ

チしたクラタはその物体が地球に向かっている

事をダンに告げる。直ちに攻撃体制に着手せよ

とクラタは命じた。ダンは体調不良が募り睡魔

に襲われる。

 

 何とか気力を振り絞ってキリヤマ隊長に未

確認飛行物体の地球侵入を知らせた。

 

 キリヤマ隊長はホーク1・3号で退員達と

共に未確認物体の攻撃に向かった。

 

 地球に侵入したゴース星人達は作戦を語り

合う。

pict000006

 

 ホーク1・3号は未確認物体の円盤と戦う。

 

 ゴース星人は円盤を着陸させる。フルハシ

は円盤に誰も乗っていないのではないかと問

う。キリヤマは油断するなと注意しチャンス

を窺っているのかもしれないと警戒する。

 

 

 キリヤマ・フルハシ・ソガ・アマギ・アンヌ

・ダンはホークから出て円盤を窺う。

 

 ソガとアマギは円盤を調べようとする。突然

ゴース星人が姿を現した。アマギは驚く。ゴー

ス星人は光線を放ってアマギを包み巨大カプセ

ルの中に監禁し持ち上げて拉致した。

 

 キリヤマは「ソガ、大丈夫か?」と問う。

 ソガは「アマギがやられました」とキリヤ

マに報告する。

 

 円盤から怪獣パンドンが現れた。

 パンドンは口から猛火を吹く。地に炎が

あがる。キリヤマ・フルハシ。ソガは火に

焙られる。

 ダンはホーク3号で消火して欲しいとアン

ヌに頼む。アンヌは「OK」と答えてホーク

3号に向かう。

 ダンはウルトラ・アイをかざして

ウルトラセブンに変身しようとする。

 

 セブン上司はダンの心に「待て、変

身してはいかん」と諫める。ダンはウ

ルトラ・アイを地に棄てる。

 

 パンドンは岩石を持ち上げる。火に炙

炙らていれるキリヤマ・フルハシ・ソガに

岩石が落とされたら、三人は確実に死んで

しまう。

 

 ダンは地に捨てたウルトラ・アイに

倒れ込んでウルトラセブンに変身した。

 

7 顔

m 7 15

 

 岩石を持ち上げるパンドンの背後から

ウルトラセブンは挑み岩石を離させる。

 

 

 強靭な破壊力を持つパンドンはセブンを

殴り倒す。

pict000006

  アンヌ「セブン。隊長達のほうは私に

      任せて。」

 

 ホーク3号でアンヌは炎を消してキリヤマ・

フルハシ・ソガを助ける。

 

 

ウルトラセブン  アクト版

 ウルトラセブンはエメリウム光線を

放とうとするが光線が出ない。

pict000002

 パンドンはウルトラセブンを蹴り飛ばす。

 

 

 ウルトラセブンはアイスラッガーを持つ。

パンドンはセブンの手を打つ。セブンはア

イスラッガーを落とす。パンドンはアイス

ラッガーを踏む。

 

 パンドンはセブンを蹴る。

 ホーク3号がセブンを援護射撃しパンドン

を撃つ。パンドンの足が踏みつけていたア

イスラッガーから離れる。

 

 セブンはパンドンの隙を見てアイスラッ

ガーを拾う。

 

  地を這っていたセブンは回転し立ち上がり、

「タア」と叫びアイスラッガーでパンドンの

足と手を斬った。

pict000006

 

 

 

 パンドンは地に倒れ込む。

pict0000017

 

 ウルトラセブンはモロボシ・ダンに戻る。

 

 

 ダンは地に仰向けに倒れ込み頭部から出

血する。

 

 地球防衛軍メディカルセンターでキタムラ

博士とアンヌがダンの治療に取り組む。

 

 キリヤマはキタムラに「助かりますか?」

と問う。博士の表情は厳しい。

 

 クラタが入室する。キリヤマはV3の連絡

に疑問を感じ怒りを露わにする。

 

  「V3は何をやっていた?」

 

  「何?」

 

 キリヤマはV3からの連絡が早ければ、モン

スターことパンドンを宇宙で始末出来た筈だ

と指摘する。アマギは拉致され、ダンは再起

不能の傷を負った。これをキリヤマはV3の責

任と糾弾した。

 

  クラタ「言いがかりは止めろ!」

 

 連絡を取ったが、地球防衛軍のほうでウン

とスンとも返事が無いので気になって宇宙ス

テーションから降りてきたというクラタの言

葉を聴き、キリヤマは驚愕し「本当か?」と

問う。「貴様」とクラタは述べ、「当番が居

眠りでもしてたんだろ」と想像する。

 

  キリヤマ「そんな馬鹿な!?誰だ?夕べ

       の当番は?」

 

 重傷を負ったダンが「僕です」と述べる。

 

  クラタ「又お前か!?」

 

 

  ソガ「クラタさん!」

 

 

  クラタ「一度ならず二度もミスを犯すな

      んてそれでも地球防衛軍の隊員

      か!通信機の故障なんて言わせ

      んぞ。無線機で何をやってた。

      鼾でもかいて寝てたんだろ?自

      業自得だ。」

 

 キリヤマはクラタから人に文句を言う前に

部下の教育をしろと叱られる。

 

 アンヌがダンの名前を呼ぶ。

 

 ダンは溢れて来る苦しみと闘う。

 

  ナレーター「悪魔のような侵略者から地

        球を守るために戦ってきた

        ウルトラセブンにも最期の

        時が近付いてきた。もう二度

        と立ち上がる事は出来ない

        のであろうか?死んではい

        かん。地球は未だ君を必要

        としている。頑張れ!モロ

        ボシ・ダン、ウルトラセブ

        ン!生きるんだ。」

 

  アンヌ「ダンは今必死に死神と戦ってい

      るんだわ。」

 

 ソガは「頑張るんだ」と苦闘するダンを励

ます。「負けるんじゃないぞ」とフルハシも

ダンに声をかける。

 

 ベッドでダンは魘され喘ぐ。苦しみを経て

静かに頭部を枕に乗せた。息は止まったのか?

それとも口を開け呼吸し眠ったか?

 

 

 ソガは息を呑む。

 

 フルハシの表情に苦渋が浮かぶ。

 

 キリヤマの厳しい視線は病と闘う部下を

見つめる。

 

 ◎「生きるんだ」◎

 

 昭和四十三年(1968年)九月一・八日の

二週に亘ってテレビドラマ『ウルトラセブ

ン』最終回が放送された。円谷プロ・TBS

製作のドラマは前年の昭和四十二年(196

7年)十月一日に始まった。

 

 円谷英二(つぶらや・えいじ)は明治三

十四年(1901年)七月七日福島県に誕生し

た。本名は圓谷英一(つむらや・えいいち)

である。特撮監督・映画監督・発明家とし

て日本映像の歴史を支えた。一家は全員キ

リスト教カトリックの信者である。

 

 

 明治四十四年(1911年)の十歳時に、

英一少年は巡業で見た活動大写真に強い

関心を持つ。
 大正八年(1919年)、満十八歳で映

画界に入った英一は、衣笠貞之助・杉山

公平・犬塚稔の作品で活躍した。

 昭和五年(1930年)圓谷英一は円谷

英二と改名した。昭和十二年(1937年)、

英二は東宝に招かれた。太平洋戦争の時

代は、戦争映画の特撮において大活躍

した。昭和十七年(1942年)十二月三日

封切の山本嘉次郎監督作品『ハワイ・マレ

ー沖海戦』クライマックスシーンでは英二

の秀麗な特撮技術が開花している。この映

画の特殊技術の凄さが、戦後戦意昂揚映画

に協力したと咎められ、公職追放で東宝を

追われることになった。

 東宝復帰が果たされたのは、昭和二十七

年(1952年)の出来事である。

 
 昭和二十九年(1954年)十一月三日映画

『ゴジラ』が公開された。監督を本多猪四郎、

特殊技術を英二が担当した。ゴジラの凄みは

観客を震わせている。
 

 昭和三十一年(1956年)、英二は自宅に

「円谷特技研究所」を設立した。昭和三十八

年(1963年)円谷特技研究所は法人化され

「株式会社円谷特技プロダクション」が誕生

した。

 昭和四十一年(1966年)一月二日から昭和

四十二年(1967年)十二月十四日に制作円谷

特技プロダクション・TBSのテレビドラマ『ウ

ルトラQ』全二十八話がTBS系で放送された。本

放送では昭和四十一年七月三日までの放送で第

二十八話が未放送になり、昭和四十二年の再放

送で陽の目を見た。

 昭和四十一年(1966年)七月十日放送のTB

S番組『ウルトラマン前夜祭』において英二は

出演した。

 翌周七月十七日から昭和四十二年(1967年)

四月九日に円谷プロダクション・TBS製作のテ

レビドラマ『ウルトラマン』全三十九話が放送

された。

 

 『ウルトラQ』全二十八話・『ウルトラマン』

全三十九話・『ウルトラセブン』全四十九話の

監修を円谷英二が担当した。

 

 昭和四十五年(1970年)一月二十五日、円谷

英二は六十八歳で死去した。

 

 

 金城哲夫(きんじょう・てつお)は昭和十三年

(1938年)七月五日に生まれた。沖縄県島尻郡南

風原町を出身地とする哲夫は、玉川大学に学んだ。

大学卒業後の昭和三十八年(1963年)円谷プロダ

クションに入社した。

 『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセ

ブン』の企画において活躍し、数多くの脚本を執

筆した。生命の尊さを源にして、神秘的で幻想的

な大傑作を、緻密な構成のシナリオで発表した。

 

 昭和五十一年(1976年)二月二十六日事故に

より死去した。満年齢三十七歳。

 

  満田Kazuho.svgは昭和十二年(1937年)八月二十日

に長崎県長崎市に生まれた。

 早稲田大学・TBSアシスタントディレクターを

経て、昭和三十九年(1964年円谷特技プロダク

ション)に入社した。

 『ウルトラQ』「宇宙指令M774」で初監督を

担当し、ウルトラシリーズにおいて数々の大傑

作を発表する。作詞家・プロデューサー・俳優

・声優としても活動した。別名義に清瀬かずほ

がある。現在の名前は満田かずほである。

 

 監修・脚本家・監督の歩みに概括的ではあるが

管見を試みた。

 『ウルトラセブン』「史上最大の侵略」「前

後編」は勿論『ウルトラセブン』の最終第48

・49話に当たるのだが、同時に昭和四十一年

一月二日より始まった円谷『ウルトラ』シリ

ーズ全三作の集大成最終回でもあったことを

確かめたかったからである。

 

 金城哲夫の脚本は完璧完全である。侵略者

から美しい星地球を守る為に奮闘してきたモ

ロボシ・ダン/ウルトラセブンこと340号の心

身は疲労・疲弊し命は危機に遭った。ダンは

宇宙パトロールの勤務で居眠りを為し、クラタ

隊長に厳しく注意される。

 故郷M78星雲のセブン上司から地球防衛の

戦いを止めて治療の為にM78星雲に帰るのだ

と命じられる。だが、ダンが愛する地球に侵

略者の牙が向けられる。強敵ゴース星人は、

アマギ隊員を拉致し、強豪怪獣パンドンを派遣

し地球を攻撃する。

 キリヤマ・フルハシ・ソガがパンドンの炎に

炙られる。パンドンが岩石を持ち上げる。隊長

と同僚二人が殺されそうになる光景を見て、ダ

ンは命を捨てる覚悟でウルトラセブンに変身し

戦う。ウルトラセブンはパンドンに殴られ蹴ら

れながらパンドンの足と手を斬る。モロボシ・

ダンに戻ったウルトラセブンは衰弱と疲労で地

に倒れ込み出血する。

 メディカルセンターでクラタ隊長は連絡をしっ

かり聞かなかったとして重傷のダンを厳しく叱る。

クラタの言葉は冷厳だが間違ってはいない。ダン

の苦渋はウルトラ警備隊やV3メンバーには分から

ないが視聴者は察する。この構成は絶妙である。

 命を賭けて地球を侵略者から守るモロボシ・ダン

はその活動を秘めているので理解されないまま心

身の苦しみと闘う。

 

 金城哲夫は瀕死・危殆にあるダンの絶体絶命の

窮地を厳しく見つめ一部の隙も無い緊張感で書き

描く。ダンは死生ギリギリの危険地域に在る。そ

れは誰に強いられた事でもなく彼自身が望み選び

取った生き方であった。

 

 『ウルトラシリーズ』に全生活を捧げ命をすり

減らして脚本や企画に捧げていた金城哲夫の在り方

と瀕死の危機と戦うダンが照応しているのか?こ

の点についてはわたくしは何とも言えない。

 金城哲夫は宇宙迄見てその視座は金星に在った

と上原正三は語っている。朝から十五時迄働いて

大酒を飲んで翌朝電信柱で寝ていたという豪快な

ことを為した人でもあった。

 NHKが製作・放送した金城哲夫の番組では、書

斎に宇宙人・怪獣のソフビが置かれ、書棚に吉川

英二著『新・平家物語』『私本太平記』が置かれ

ていた、歴史文学に学ぶ人であったことが窺える。

 

 重篤の危地に遭って命を擲ち地球防衛の為に自己

を犠牲にして戦い、地球人先輩から叱られるダンの

壮絶な生き様に作者金城哲夫が自己を投影したこと

を否定はしない。

 だが主人公モロボシ・ダンだけでなく、ダンを暖

かく包み込み恋人友里アンヌや親友フルハシ・ソガ

・アマギや父のように見守るキリヤマに金城哲夫が

自身を投影した事も確かであろう。或いは冷厳なク

ラタ隊長にも金城哲夫は自分自身を確かめた事であ

ろう。

 ダンは命の危機に遭ってその命を捨てて地球を守

る為に戦う。この凄まじい生き様を精緻なシナリオ

で書いた金城哲夫その人を悲劇の人と見るのは待ち

たい。

 

 金城哲夫は命どぅ宝(ぬちどぅたから)を主題

にしていたと想像している。脚本の主題だけでな

く、生き方においても常に確かめられていた事柄

ではなかったか?

   命を宝とする。愛する地球が侵略され滅びる危

機に遭って自己の命を捧げ犠牲にして友や恋人や

星を守ろうとする。このことはダン自身にとって、

苦しみを惹起するものであったが、生涯を貫く願

いであった。

 

 満田かずほの演出は熱い。一秒一秒ワンシーン

ワンカットに情熱が燃えている。全編緊張感で視

聴者の心も身体も熱くなる。その一方でヒヤッと

するような感覚を視聴者は覚えることもある。

 

 

  魘され喘ぎ体調不良に苦しむダンの描写に三十

歳の金城哲夫と三十一歳の満田かずほが鋭く死と

の闘いを見つめていることに驚く。

 

 ソガの優しい励まし・クラタの叱責・セブン上司

の忠告にダンの関係性が鋭く描写されている。

 

 セブン上司の「命を大事にして変身するな」と

いう忠告は身に染みてくる。

 

   古谷 ダンとアンヌはなんとなく恋人どうし

      ではないかというところがありました

      ね。

 

   満田 当初は、恋愛ドラマというか青春ド

      ラマにしようという話があったんで

      すけれども、結局はなんとなくで終

      わってしまったんです。でも、最終

      回では、恋人どうし部分がだせたと

      思います。

   (『ウルトラマン大全集』213頁

     ウルトラセブン座談会

     1987年4月14日発行 講談社)

 

 昭和六十二年(1987年)一月八日東京都におい

て『ウルトラセブン』出演俳優と満田かずほの座談

会が開かれた。

 古谷敏はダンとアンヌの関係性に恋人を思わせる

ものがあったと確かめる。満田かずほは恋人である

ことを直接描けずなんとなくになってしまったが、

最終回では恋人どうしの関係性を出せたと述べてい

る。

 これまでも地球防衛に燃えるダンと彼を優しい

母性で包むアンヌは満田作品で書かれ描写された

が48話では二人の愛情関係が確かめられている。

 レントゲン撮影と心電図検査でダンの体調不良

をアンヌは調べようとする。その心の温かさがわ

かるからこそ、ダンは放っておいて欲しいと頼む。

 ダンのバスケットボールトレーニングを見守る

アンヌは暖かい。

 菱見百合子の美しさは輝いている。

 

 

 

 だが、ゴース星人に命の恩人アマギを拉致され

た。ダンの心に悔しさが湧く。

 

 恩義あるキリヤマ・尊敬するフルハシ・大切な

ソガがパンドンの吐く炎で炙られる光景を見て、ダ

ンはセブン上司の忠告を払って命の危険を顧みず

ウルトラセブンに変身する。

 

 満田かずほは命を捨て命を賭けて恩人や友の

命を守ろうとするダンの生き方を熱く探求する。

 

 最後の悪役・敵役として登場するゴース星人は

女性のような姿でしなやかに舞う。そのゴース星

人に仕える怪獣パンドンは火を噴くモンスターで

最強悪役の存在感をじっくりと見せる。

 

 セブンが命がけで挑む強敵の凄みがある。炎を

吐く双頭怪獣パンドンを倒し地球を守る。これが

セブンにとって危機の命を挙げて為すべき課題と

なっている。

 

 バトルシーンは地球特撮映像史の名場面と確信

している。ウルトラセブン役の上西弘次とパンドン

役の西京利彦の激闘は凄まじい。その迫力に視聴

者・観客は震える。

 

 大詰のキリヤマとクラタの激突は迫力豊かだ。

中山昭二と南廣の激突競演に息を呑む。クラタ

の厳しい叱声は半死半生のダンに痛みを倍加させ

るものだが、理屈としては全て通っている。苦痛

激痛を堪えて地球を守っている事はダン自身の

口からは言えない。

 

 市川森一が13・35話で描いた熱いクラタと金

城哲夫が48話で描いた冷厳なクラタは同一人物

である。それぞれの在り方を南廣が渋く息吹かせ

ている。

 

 

 ナレーターが死神と戦うダンに「生きるんだ」

と励まし呼びかける。ここに金城哲夫シナリオ・

満田かずほ演出の主題を見る。

 

  森次 最終回の前後編だけど、われわれと

     してはいつもと変わらない気持だっ

     た。「最終回だから頑張るぞ!」と

     いう思いはなかったな。

 

  ひし美 意識せず、いつも通りだったよね。

      ファンの皆さんは最初から最後ま

      で連続で見てるから「ついに最終

      回!」と感じるだろうけど、演じ

      てる私たちはワンカットワンカッ

      ト、ぶつ切りで撮ってるからそん

      なに最終回ということを意識しな

      かった。

    (『ダンとアンヌとウルトラセブン

      ~森次晃嗣&ひし美ゆり子が語る

      見どころガイド~』104頁

     2021年2月25日発行 小学館)

 

 森次晃嗣とひし美ゆり子は最終回に特別な思

いはなくいつも通りの撮影に挑んだと語ってい

る。

 

 完成されたフィルムにおいてはアンヌの優し

さが無償の愛を伝えるものとなっている。

 

 病・怪我・苦悩と闘い迫ってくる死に対し

抵抗し命一杯に生きるダンの在り方に視聴者

・観客は震える。

 

 

 

 主演男優・主演女優はいつもと変わらない

気持ちで撮影に挑み役を生きた。

 

 金城哲夫の精緻な脚本と満田かずほの重厚

な演出は、森次浩司後の森次晃嗣の名演を呼

んだ。

 

 

 森次浩司後の森次晃嗣は渾身の熱演でダン

の命賭けの苦闘をフィルムに焼き付けた。

 

 ダンの呼吸は止まったのか?或いは眠りに

ついたのか?

 

 この問いが視聴者・観客にも迫る。

 

 満田かずほ演出は視聴者・観客の心を掴んで

離さない。「次どうなるのか?」という問いが

視聴者・観客の心に起こる。

 

 最終回前編のラスト描写としては完璧である。

 

 ラストカットがダンではなくてキリヤマであ

ることに、満田かずほ演出の鋭さを感じる。

 

 キリヤマの驚きと苦悶の深さが、視聴者に

ダンの重篤を伝える。

 

 中山昭二の視線は厳しくて重い。

                   つづく