ウルトラセブン ダン対セブンの決闘
『ウルトラセブン』「ダン対セブンの決闘」
テレビドラマ 30分 トーキー カラー
昭和四十三年(1968年)八月十八日放送
製作国 日本
製作言語 日本語
放送局 TBS系
監修 円谷英二
プロデューサー 末安昌三
三輪俊道
橋本洋二
脚本 上原正三
市川森一
撮影 永井仙吉
美術 岩崎致躬
照明 新井盛
音楽 冬木透
録音 松本好正
効果 西本定正
編集 柳川義博
助監督 山本正孝
制作主任 高山篤
特殊技術
撮影 鈴木清
美術 池谷仙克
操演 平鍋功
照明 小林哲也
光学撮影 中野稔
助監督 円谷粲
製作主任 熊谷健
東京現像所
キヌタ・ラボラトリー
TBS映画社
協力 三谷温泉松風園
出演者
中山昭二(キリヤマ隊長)
森次浩司(モロボシ・ダン)
菱見百合子(友里アンヌ)
石井伊吉(フルハシ・シゲル)
阿知波信介(ソガ)
古谷敏(アマギ)
嘉手納清美(幹部の女性 サロメ星人人間体)
高橋正夫(首領 サロメ星人人間体)
西京利彦(ニセウルトラセブン スーツアクター
アギラ スーツアクター)
池谷哲也(ニセウルトラセブン スーツアクター)
上西弘次(ウルトラセブン スーツアクター)
浦野光(ナレーター)
特殊技術 大木淳
監督 鈴木俊継
制作 円谷プロダクション
TBS
◎
上原正三=泉崎敬太=木原光
冬木透=蒔田尚昊
森次浩司→森次晃嗣
菱見地谷子→菱見百合子→ひし美ゆり子
石井伊吉→毒蝮三太夫
鈴木俊継=鈴木孝次
◎
台詞の引用・ストーリーの要約・
シーンの考察は、研究・学習の為
です。
円谷プロ様・TBS様におかれまし
ては、何卒ご寛恕・ご理解を賜り
ますようお願い申し上げます。
◎
美しく平和な伊良湖岬の風景が映る。
ここに侵略者を警戒して海底ではハイ
ドランジャーがパトロールをしている。
モロボシ・ダンは水中翼船から降りた
若く魅力的な女性に注意する。
プールで女性は休憩を為した。プール
サイドではダンと友里アンヌが女性の動
きを凝視していた。女性は時計をプール
サイドに残して去る。
渥美半島近海の海底を調べていたハイ
ドランジャーが怪しい船に襲われ沈んだ。
ダンとアンヌは女性が残した腕時計は
ハイドランジャーが襲われた時間で止ま
っていることに着目した。
赤いスポーツカーで女性は疾走する。
アンヌ・ダンから連絡を受けたフルハシ・
シゲルはスポーツカーを止めようとする。
女性はフルハシが居るにも関わらず激走
し、フルハシは車に轢かれになりかわす。
ダンは伊良湖岬灯台に女性が入った事
を突き止め灯台の階段を登るが電流をかけ
られ気絶させられる。
女性と上司の首領はサロメ星人人間体で
灯台を要塞にして地球侵略の準備をしてい
た。
覚醒したダンは台に縛り付けられていた。
鉄の腕輪で身体を動かす自由も奪われた。サ
ロメ星人女性と首領はダンがウルトラセブン
であることを知っていた。
サロメ星人女性はダンに「貴方の兄弟」を
見せるという。
灯台内の製造工場ではニセウルトラセブン
が設計されていた。ダンは驚愕する。贋セブン
はウルトラセブンの瓜二つであった。
内臓火器であるウルトラビームの方程式
が分からないサロメ星人はダンから吐かせる
ことにした。
流石のダンも手足を拘束され、台に縛られ
た状態では抵抗できずウルトラビームの秘密
をサロメ星人に教えた。
完成したニセウルトラセブンにサロメ星人
は出撃命令を与え、ニセセブンは海洋へと出
発した。サロメ星人は地球侵略の野望が近付
いた事を確信し、ダンを爆殺する時限爆弾を
仕掛け船に向かった。
残されたダンはライターで自身の腕を縛る
鉄の腕輪を焼き腕を解き放ち脱出を為した。
ニセウルトラセブンは人間の乗る船を襲い、
エメリウム光線を放ち船を焼く。
キリヤマ隊長・アマギ隊員・ソガ隊員・フル
ハシ・アンヌはその光景を見て驚愕する。アマギ
は「気でも狂ったか?」と嘆く。
ダンはカプセル怪獣アギラを派遣した。
アギラの背後に忍び寄る存在が居る。
ニセウルトラセブンだ。
アギラはニセウルトラセブンに挑む。
ニセウルトラセブンはアギラを撃破する。
アギラの危機を見たダンはカプセルに戻す。
ダンはウルトラ・アイでウルトラセブンに
変身し、ニセウルトラセブンに対峙する。
ウルトラ警備隊とサロメ星人男女人はウル
トラセブン対ニセウルトラセブンの対決を凝視
する。
ウルトラセブンとニセウルトラセブンは
そっくりである。
ニセウルトラセブンは膝に横のシルバー
ラインがある。
サロメ星人女性は贋ウルトラセブンをダンに
「貴方の兄弟」と呼んだが、「兄弟」の二つの
生命はそれぞれの命を賭けて激突する。
ウルトラセブン対ニセウルトラセブンの
戦いで両者の力は互角であった。
海の上をウルトラセブンとニセウルトラ
セブンは飛ぶ。両者は戦いながら海底に入
った。
ウルトラ警備隊隊員とサロメ星人たちは
固唾を飲んで対決を見守る。
海の中で爆発が起こる。
一人のセブンが出てきた。
サロメ星人たちはニセウルトラセブンが
勝ったと確信する。
海洋でセブンはサロメ星人たちが乗る船
を掴み押した。サロメ星人たちは驚愕する。
勝ったのは本物のウルトラセブンだった。
ウルトラセブンはサロメ星人達が乗る船
を沈める。
ウルトラ警備隊は本物のウルトラセブン
の勝利を喜ぶ。
空飛ぶウルトラセブンはウルトラ警備隊
に挨拶する。
モロボシ・ダンが同僚達の前に現れた。
◎兄弟対決◎
第四十六話「ダン対セブンの決闘」は
ウルトラセブン対ニセウルトラセブンの
決戦を語る。
鈴木俊継は昭和九年(1934年)一月八日
に誕生した。ウィキペディアでは亡くなった
監督と書かれている。
前半のミステリアスなムードと後半のセブ
ン本物・贋物決戦のアクションは共に輝いて
いる。
上原正三は昭和十二年(1937年)二月六
日、沖縄県に生まれた。別名義に泉崎敬太・
木原光がある。
令和二年(2020年)一月二日に死去し
た。八十二歳。
『収骨』で芸術祭第一公募脚本に入選し、賞
を取ればシナリオ執筆の仕事をあげると約束
していた円谷一は正三の熱意に答えた。
ウルトラシリーズにおいては『ウルトラQ』
の時代からシナリオを執筆している。
市川森一(いちかわ・しんいち)は昭和十六年
(1941年)四月十七日長崎県に生まれた。平成
二十三年(2011年)十二月十日、七十才で死去
した。
夢見る心が、人間に生きる力を恵み与えてくれ
ることをシナリオで語った。
嘉手納清美(かてな・きよみ)は昭和二十年(
1945年)九月十一日に東京都に誕生した。本名
は前田清美である。家族は沖縄出身である。昭和
三十八年(1963年)東芝レコードでデビューし
「うるま育ち」を発表した。
蒲郡のロケで、私は車の運転もできないの
に運転してね(笑)。赤いスポーツカー。
左ハンドルよ。
(『ウルトラセブン研究読本』258頁)
洋泉社MOOK『ウルトラセブン研究読本』所収
の嘉手納清美インタビューによると発車するシーン
のみ彼女の運転で疾走は代役の俳優が運転したとい
う。
水着シーンは自前の水着で「青春の1ページ」(
同書259頁)と確かめている。
ダンを幻惑し命を狙う強敵サロメ星人人間体を
嘉手納清美が妖艶に演じた。
『ウルトラセブン』ではシリーズ後半予算難の
厳しさから制約が多くなり、厳しい状況は重いム
ードをスタッフに感じさせていたようだ。
こうした厳しさをバネにしてスタッフは見応え
あるドラマを打ち出した。
廃棄されボロボロになっていたウルトラセブン
スーツを再利用してニセウルトラセブン造型が行
われた。
外見が酷似しているウルトラセブンとニセウル
トラセブンの決戦は本物対贋物激突競演の迫力が
あった。
サロメ星人女性人間体はダンにニセウルトラセ
ブンを「貴方の兄弟」と紹介した。
血縁関係の無いウルトラセブンとニセウルトラ
セブンだが外見がそっくりで戦闘能力も拮抗して
いるので兄弟関係とされる。ひとつの命の真実・
虚偽関係・善悪関係を象徴しあっているとも読め
る。
市川森一はこの後第二期ウルトラシリーズに
おいても一つの命の二つの顔のドラマを鋭い描
写で発表する。
アギラがニセウルトラセブンにやられるシーン
は喜劇的でもある。
どこかのんびりしたムードがクライマックスの
ウルトラセブン本物・贋物対決の迫力を盛り上げ
る働きを為している。
本物セブンと贋者セブンが激突し水中に戦い勝
者が海から出て空を飛ぶ。
ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『リア王』
にいけるエドガーとエドマンドの兄弟対決を想い
起こした。
「どちらが勝ったのか?」の問いを視聴者に呼
び起こしドラマ最大の山場となっている。
取り違えや錯覚をサロメ星人に呼び起こしたり、
ウルトラ警備隊の疑問を喚起する展開は、シェイ
クスピア戯曲『間違いの喜劇』や『十二夜』にお
いて双子の存在が他の登場人物は勿論のこと観客
をも惑わせ驚かせる道を想起せしめる。
勝利を確信するサロメ星人達がウルトラセブンに
船ごと叩き潰される大詰は哀れさを見せている。
ウルトラセブンがウルトラ警備隊に敬意を表し
挨拶するシーンに上西弘次の芸の暖かさを感じた。
姿形が瓜二つの精神的「兄弟」決戦は盛り上が
りを示す。
ウルトラセブン対ニセウルトラセブンの戦は地
球特撮史上に輝く名勝負である。
合掌