夢二 | 俺の命はウルトラ・アイ

夢二

『夢二』

映画 トーキー 128分 カラー

平成三年(1991年)五月三十一日封切

製作国 日本

製作言語 日本語

製作会社 荒戸源次郎事務所

配給 ムービーギャング

 

表方

 

沢田研二(竹久夢二)

 

毬谷友子(脇屋友代)

宮崎萬純(彦乃)

広田玲央名(お葉)

 

長谷川和彦(鬼松)

麿赤兒(刑事)

余貴美子(女郎)

新舩聡子(緑の女将)

芹明香(銭湯の女将)

牧口元美(世話役)

中沢青六(付添)

鈴木晋介(モダンボーイ)

山根鉄仙(モダンボーイ)

久保史(モダンボーイ)

秋山晴子(モダンガール

門田圭子(モダンガール)

矢沢美紀(モダンガール)

 

原田芳雄(脇屋宗吉)

大楠道代(女将)

 

坂東玉三郎(稲村御舟)

 

 

 

裏方

脚本 田中陽造

撮影 藤澤順一

音楽 河内紀

   梅林茂

写真 荒木経惟

 

監督 鈴木清順

 

 

 ◎

 鑑賞日時場所

 平成十三年(2001年)九月二日

 日本イタリア会館京都校

 ◎

 

 

 

 竹久夢二は野原においてフロックコ

ートの男と対峙する。

 二人は西洋式の銃による決闘をなそ

うとしている。

 

 おふざけ気分で引き金を引く夢二だが

弾丸を当てるつもりはない。しかし、フ

ロックコートの男は夢二目がけて銃弾を

発射する。

 

 蒲団から起きる夢二。夢だった。

 

 

 恋人彦乃と駆け落ちするため、金沢近

郊の湖畔へと向かう。夢二のもとに彦乃

は現れない。

 

 小さな村において銃声が鳴り響いてい

る。

 

 

 殺人鬼・鬼松が妻と妻を寝取った男・

脇屋宗吉を殺害して山に逃げ込んだ。

 

 

 湖上に漂うボートに白い日傘をさした

美女が乗っている

 

 脇屋夫人巴代と名乗るその女は、浮かび

上がってくるはずの夫宗吉の死体を待って

いる。

 

 夢二は巴代の美しさに恋する。

 

 東京からお葉が彦乃の手紙を携えて金沢へ

来た。だが、夢二と巴代は深い仲になってい

た。

 

 脇屋の影とそれを追う大鎌を振りかざした

鬼松が夢二・巴代に近付く。夢二の前に脇屋

宗吉が現れる。夢二はびっくりする。

 

 夢に見たフロックコートの男は脇屋宗吉

だったのだ。

 

 夢二と脇屋宗吉の前に、天才画家・稲村御

舟が現れる。

 

 突然、鬼松の大鎌が脇屋を襲う。怪我をし

た脇屋を巴代のもとへ連れていく夢二と御舟

だったが、脇屋の死を信じる巴代は、彼の存

在を認めない。

 

 脇屋は、金沢駅で病に苦しむ彦乃を助け、

彼女と時間を過ごした。

 

 夢二は巴代の裸体を描く。

 

 二人の前に鬼松が再び現れる。殺気立っ

た鬼松の前で巴代は命がけで脇屋を守ろう

とする。

 

 巴代の姿に圧倒された鬼松は、脇屋殺害

をあきらめ死を選ぶ。

 

 夢二は巴代と共に逃避行を決意する。

 

 巴代は「着替えしてきます」と言ったが、

夢二のもとに戻ってこなかった。

 

 竹久夢二の前に彦乃が現れる。

 

 ◎美男夢二 ジュリー◎


 

 沢田研二は昭和二十三年(1948年)六月二十五

日に鳥取県に誕生した。出生名は澤田研二である。

京都府に育った。二十世紀・二十一世紀の音楽史

に輝く歌手大スタアである。俳優としても数々の

名演を発表している。日本国憲法第九条戦争放棄

守護・脱原発運動に粉骨砕身で尽力している。

 

 二枚目天才画家竹久夢二を美男子ジュリーが鮮

やかに演じた。巴代・彦乃・お葉という三人の女性

に出会う。

 

 巴代に迫って「夫のある身でございますよ」

と叱れるシーンが忘れられない。

 

 夢二の在り方を見つめるように人形が映る。

 

 初めは静かに置かれているのだが、だんだんと

その存在感が大きくなる。ラスト近くにアップに

なる。

 

 

 原田芳雄(はらだ・よしお)は昭和十五年(1

940年)二月二十九日に生まれた。 

 平成二十三年(2011年)七月十九日、七十一

歳で死去した。 

 野獣の個性を鋭く発し、強烈な印象を銀幕フィ

ルムに焼き付け、作品の生命力を熱くした。昭和・

平成、二十・二十一世紀日本映画を支えたスタア

名優・歌手である。

 脇屋の存在感は迫力があった。死んだかもしれ

ない夫宗吉だが妻巴代に愛される存在である。

 原田芳雄の男の魅力が光る。

 

 

 安田道代は昭和二十一年(1947年)二月二

十七日中華民国天津市に誕生した。現在七十六

歳である。

 昭和三十九年(1964年)スカウトされて日

活でデビューを飾り後に大映でスタアになり、

城健三朗後に若山富三郎と恋におちたと言われ

ている。昭和五十一年(1976年)大楠裕二と

結婚し芸名も大楠道代に改めた。

 女将に大楠道代の色気が光った。

 

 鈴木清順(すずき・せいじゅん)は大正十二年

(1923年)五月二十四日東京市墨田区に誕生した。

本名は鈴木清太郎である。

 平成二十九年(2017年)二月十三日、東京都

内の病院において九十四歳で死去した。

 

 学徒出陣で兵士として第二次世界大戦・亜細亜

太平洋戦争に従軍した。

   

 

 

 戦後復員した鈴木清太郎は松竹の助監督に合格し、

後に日活に移り魅力的な名画を多数演出した。監督

・俳優としての芸名として鈴木清順を名乗った。

 

 清順大正浪漫三部作の集成となる第三作である。

 

 幻想的で神秘的な写真であった。

 

 死のイメージと生のイメージが照応しながら夢二

の愛の道を語る。

 

 清順師写真で整合性を求めるべきではない。

 

 ワンカットワンシーンに酔いそうになれば思い

っきり陶酔すればよい。

 

 稲村御舟役で坂東玉三郎が男性の存在感を見せ

たことも忘れられない。

 

 ラストで孤独を痛感する夢二。

 

 虚無感に心を強く打たれた。

 

 沢田研二は夢二の孤独魂を瞳に映し出した。

 

 

                   合掌