ジャン・ルノワールの演技指導 | 俺の命はウルトラ・アイ

ジャン・ルノワールの演技指導

『ジャン・ルノワールの演技指導』

La Direction d’Acteur  par Jean Renoir

映画 トーキー 22分

1968年製作

1970年10月16日 フランス封切

製作国 フランス

製作言語 フランス語

 

製作 ピエール・ブロンベルジェ

製作主任 ロジェ・フレイトゥー

撮影 エドモン・リシャール

録音 ルネ・フォルジュ

編集 ミレーユ・モベルナ

 

出演

 

ジゼル・ブロンベルジェ

 

ジャン・ルノワール

 

監督 ジゼル・ブロンベルジェ

 

鑑賞日時場所

昭和六十二年(1987年)十二月十三日

日本イタリア会館京都校

 

 ジャン・ルノワールがジゼル・ブロン

ベルジェに演技を指導する。

 ルマー・ゴッデンの小説『ニコライド

家の朝食』の一節を読んで下さいとジャン

はジゼルに頼む。


 作者・作品・読もうとする箇所について、

ジャンから説明が為される。

 

 ジゼル・ブロンベルジェは女優であり、

本作の監督でもある。


 ジャンはジゼルに『ニコライド家の朝

食』の部分を読むにあたっての注意を語

る。

 

 役者は最初にどのような感情も持って

はならない。感情を持ってしまうと作り

事になります。中性的に読むのです。電

話帳を読むように。

 

 ジゼルが小説の箇所を読む。

 

 ジャンは「感情が入っています。無感情

で読んで下さい」と指導する。ジゼルが読

む。「まだ感情が入っています。平たく読

みましょう」とジャンは棒読みに徹するこ

とを説く。

 

 煙草を持ちながら立って演技を為すジゼ

ル。

 眼鏡をかけはずし、ジャンは演技について

解説する。

 

 

 「かけて下さい」とジャンはジゼルに

告げる。

 

 一切の感情を排して平たく読むことで

役者と役の秘めやかな結婚が成り立ち、真

のオリジナルな人間が演じられるようにな

るのです。

 

 頭を掻いてジゼルは台本棒読みに挑む。

 

 ジャンは演技方法への確信をジゼルに伝

える。

 

  私はこの方法でミシェル・シモンやル

  イ・ジュ―ヴェの偉大な演技を呼び起

  こしたのです。

 

 名優ミシェル・シモンやルイ・ジュ―ヴェ

にも棒読みに徹する台本読みを為してもらい、

撮影における名演現出を成し遂げた。

 

 ジャンは自作における名優の名演の源に「イ

タリア方式」と呼ばれる台本棒読み術の確かさ

を明言する。

 

 ジャン・ルノワールに読み方を教わったジゼル

は小説を読む。ジゼルの読み方にジャンは厳しく

駄目を出す。ジゼルはジャンの厳格な指導を聞き、

棒読みに徹することを確かめ平たく読む。

 

 二人は立ち上がり近い位置で読みと指導が展開

する。

 

 ジゼルの読みにジャンは感嘆する。

 

 Jean Renoir

 ジャン・ルノワール

 ジャン・ルノアール

 1894年9月15日生まれ。

 映画監督・脚本家・俳優。

 1979年2月12日死去。 

 

 ジゼル・ブロンベルジェはジャン・ルノ

ワールの演出方法を記録しておきたいと望

み、1968年に短編ドキュメンタリーフィルム

を撮った。

 

 『フレンチ・カンカン』においてエキス

トラとして出演したジゼルはエキストラに

も熱心に指導したジャン・ルノワールの在

り方に感嘆した。ジャンの撮影現場に立ち

会うようになってどうしても彼の演技指導

を記録しておきたいと願ってフィルムを撮

り女優としても出演した。

 

 それが本作である。1968年パリにジャン

が来日した際に撮影は為された。

 

 72歳か71歳のジャン・ルノワールはジゼル・

ブロンベルジェに妥協なく演技指導する。

 

 ジゼル・ブロンベルジェが指導に応えて小説

を読み涙声になる。

 

 ジャン・ルノワールから讃嘆の声があがる。

 

 一人の女優が役と一つになっていく過程が

撮られている。

 

 

 

 某動画にあった映像は公式ではないので

すぐに削除されると思うが一応貼っておく。

 

 1987年12月13日日本イタリア会館京都校

においてジャン・ルノワール特集が開催され

て本作も上映された。

 

 上映会場で鑑賞したのはこの時一回のみ

なのだが、約36年3か月経った今も印象は

強烈である。

 

 ジャン・ルノワールの演技指導によって、

ジゼル・ブロンベルジェと役に秘めやかな

結婚が成り立っていく道が示される。そこ

には大いなる物語がある。演技は尊い。

 

                合掌