けんかえれじい | 俺の命はウルトラ・アイ

けんかえれじい

『けんかえれじい』

映画 トーキー 86分 白黒
昭和四十一年(1966年)十一月九日日本封切
製作国 日本
製作言語 日本語
製作会社 日活
 

企画 大塚和

原作  鈴木隆

 

脚本 新藤兼人

撮影  萩原憲治

美術  木村威夫

照明   熊谷秀夫

音楽 山本直純

録音  秋野能伸

編集   丹治睦夫

助監督   葛生雅美

凝斗   高瀬将敏

方言指導 本目雅昭

     高緒弘志

 

出演

 

高橋英樹(南部麒六)

 

浅野順子(道子)

川津祐介(スッポン)

 

宮城千賀子(道子の母ヨシノ)

加藤武(マンモス先生)

玉川伊佐男(喜多方中学校長)

 

浜村純(アヒル先生) 

佐野浅夫(近藤大尉)

松尾嘉代(みさ子)

長弘(剣道先生)

恩田清二郎(麒六の父)

片岡光雄(タクアン)

日野道夫(ガニ股先生)

福原秀雄(叔父)

野呂圭介(金田)

夏山愛子(ウドン屋の娘)

晴海勇三(柔道先生)

杉山元(杉田)

千代田弘

田畑善彦(カッパ)

横田陽子(叔父の若い妻)

加川景二(橋谷田)

久松洪介(喜多方の百姓) 

荒井岩衛(喜多方の百姓)

水木京一(二二六事件の張り紙を読む通行人)

近江大介(二二六事件の張り紙を読む通行人)

小林亘(二二六事件の張り紙を読む通行人)

伊豆見英輔(二二六事件の張り紙を読む通行人)

本目雅昭(スッポンの同志) 

高橋明(昭和白虎隊隊長)

緑川宏(北一輝)

岩手征四郎(昭和白虎隊隊員)

立川博(昭和白虎隊隊員)

大庭喜儀

高緒弘志

水川国也

石川恵一

熱海弘到(カッパの仲間)

矢藤昌宏(麟六の同級生)

赤司健介

村井健二

溝口拳

式田賢一

小永井孝

小見山玉樹

中平哲仟(昭和白虎隊隊員)

根本義幸(岡山第二中同上級生)

北上忠行

大前田武

佐藤了一

片岡正弘

 

監督鈴木清順

 

鈴木清太郎→鈴木清順

鑑賞日時場所

平成十五年(2003年)二月十三日

京都文化博物館

 

画像はインターネットより拝借引用して

いる。

 中学生南部麒六(なんぶきろく)の名は

「喧嘩キロク」の異名で岡山に知れ渡って

いた。

 

 先輩スッポンは麒六に喧嘩の道を教授す

る。麒六の喧嘩術は凄まじく学内の不良生徒

達を圧倒した。

 スッポンの勧めで麒六は岡山セカンドミドル

スクール団に入り頭角を表した。

 

 麒六は下宿先の娘道子を愛し口もきけない程

緊張していた。

 道子は麒六に話しかけピアノ演奏術を伝授す

る。

 

  

 岡山セカンドミドルスクール団団長タクアン

は女性と一緒にいるということで硬派にあるま

じき振舞と怒り麒六を殴ろうとする。スッポン

の配慮で麒六は難を逃れるが道子への想いは募

る。

 

 切ない心に悩む麒六は喧嘩で発散させること

にして配属将校と争った。

 

 若松の喜多方中学に麒六は追い出された。昭

和白虎隊と争い停学処分を受けた麒六のもとに

道子が尋ねてきた。長崎の修道院に入るという。

 

 カフェで存在感豊かな男と出会ったことは麒六

の心にのしかかっていた。麒六は彼の名が北一輝

であることを知った。

 

 その北一輝から指導を受けた青年将校達が昭和

十一年(1936年)二月二十六日、二・二六事件を

起こした。

 

 麒六は東京行の列車に乗った。

 

 ◎青春 喧嘩 時代◎

 

 

 高橋英樹(たかはし・ひでき)昭和十九年(1

944年)二月十日に千葉県木更津市に生まれた。

昭和三十六年(1961年)日活ニューフェイスと

なり、日活映画を代表する美男スタアとなった。

 二十三歳で男子との熱き喧嘩に明け暮れる中学

生南部麒六を瑞々しく演じた。

 喧嘩は強いが恋は純情で、好きな道子とは一言も

喋れない。ピアノ演奏を教わるが、一人になると

独自の方法で演奏する。

 

 

 新藤兼人は明治四十五年(1912年)四月

二十二日広島県佐伯郡石内村に誕生した。

 本名は新藤兼登である。映画監督・脚本家

として日本映画・日本テレビドラマの歴史を

支えた巨匠である。

 平成二十四年(2012年)五月二十九日、百

歳で死去した。

 

 鈴木清順(すずき・せいじゅん)は大正十二

年(1923年)五月二十四日東京市墨田区に誕生

した。

 本名は鈴木清太郎である。

 

 平成二十九年(2017年)二月十三日、東京都

内の病院において九十四歳で死去した。

 

 学徒出陣で兵士として第二次世界大戦・亜細亜

太平洋戦争に従軍した。

 

 

 戦後復員した鈴木清太郎は松竹の助監督に合格

し、後に日活に移り魅力的な名画を多数演出した。

監督・俳優としての芸名として鈴木清順を名乗っ

た。

 

 バンカラ少年達の逞しい青春を高橋英樹や川津

祐介が豪快に表現している。

 

 加藤武がマンモス先生を粘り強い芸で見せる。

短気で喧嘩っ早い南部麒六に「おい、浅野内匠

頭」と呼びかける話法は絶妙である。

 

 北一輝役で緑川宏が重厚な存在感を示している。

 

 麒六は北一輝を見て、二・二六事件を知る。もっと

大きな相手と喧嘩をするという課題に気付く。

 

 ウィキペディアによると、新藤兼人が書いた脚

本には北一輝との出会いは無かったが、鈴木清順

が書き加えたという。新藤兼人は「これは自分の

作品ではない」と述べたという。

 

 天才鈴木清順の閃きによって書かれた展開であ

る。

 

 過去記事においても述べたが鈴木清順監督作品

史において、日活製作作品とシネマプラセット製

作作品を二元二極で比較するのは時間の有効な用

い方にはならない。日活製作の監督作品が基盤と

なってシネマプラセット製作の監督作品が生みだ

されて行くからだ。

 

 二・二六事件を聞いて時代の大きな流れを南部

麒六は直感する。

 

 道子への恋が終り、バンカラとして暴れ回るこ

とから大いなる喧嘩相手を探しに行く。

 

 戦争の足音が響いてくる時代状況を鈴木清順は

静かに鋭く描写する。

 

 東京行の列車に乗った南部麒六の視線は厳しい。

 

 高橋英樹の眼光は鋭い。

 

                    合掌