カトリーヌ・ドヌーヴ/マリオン 二題 フランソワ・トリュフォー監督作品 | 俺の命はウルトラ・アイ

カトリーヌ・ドヌーヴ/マリオン 二題 フランソワ・トリュフォー監督作品

『暗くなるまでこの恋を』

La Sirène du Mississipi

暗くなるまでこの恋を

 

  La Sirène du Mississipi

 

 映画 トーキー 123分 カラー(引用映像は白黒)

 1969年6月18日 フランス公開

 昭和四十五年(1970年)二月二十五日 日本封切

 製作国  フランス

 製作  Les Films du Carrosse

             Les  Artistes Associes

  製作・脚本・台詞 フランソワ・トリュフォー

 原作 ウィアリアム・アイリッシュ(『暗闇へのワルツ』)

 撮影 ドニス・クレルヴァル

 音楽 アントワーヌ・デュアメル

 編集 アニュス・ギモ

 録音 ルネ・ルヴェール

 照明 クロード・ルーセル

 美術 クロード・ピニョ

 

 出演

 

 ジャン=ポール・ベルモンド(ルイ・マエ)

 

 カトリーヌ・ドヌーヴ(ジュリー・ルーセル

             実はマリオン・ベルガノ)

 

 ミシェル・ブーケ(コモリ)

 ネリー・ボルジョー(写真のジュリー・ルーセル et

             ベルト・ルーセル)

 

 ロラン・テノ(リシャール)

 マルセル・ベルベール(ジャルディーヌー)

 

 監督 フランソワ・トリュフォー

 

 ☆

 ウィアリアム・アイリッシュ=コーネル・ウールリッチ

 ☆

 平成二十七年(2015年)一月十七日

 神戸アートビレッジセンターにて鑑賞

 

トリュフォー ポスター

 感想文では物語の核心に言及します。未見の

方はご注意下さい。2018年2月6日発表記事・2

020年10月22日発表・2021年9月7日発表記事

を再編しています。

 ☆

 ジャン・ルノワール監督作品『ラ・マルセイエ

ーズ』の映像が映り、「ジャン・ルノワールに捧

ぐ」の献辞が示される。

 

 フランス植民地レユニオン島で煙草工場を経

営する青年大富豪ルイ・マエは写真見合いで

知った女性ジュリーと結婚することを決める。

 

 フランスからやってきたジュリーは写真のイ

メージとは大きく違い、ブロンドの華やかな美

女であった。写真見合いを不安に思い友達の

写真を送ったのというジュリーの言葉をルイは

鵜呑みにして、彼女を溺愛する。

 

 しかし、妹から知らせが来ないことを不安に

思うジュリーの姉ベルトから手紙が来る。ジュ

リーはルイの金を持ち逃げして何処かへ逃走

する。ベルトはルイを尋ね、金髪女性の写真

を見て、妹と別人と証言する。二人は探偵コ

モリに事件調査を依頼する。

 

 ルイは南仏で偽ジュリーを探すがテレビで

見たナイトクラブの映像に彼女を見つけ、そ

の宿泊先を調べ、部屋に忍び込み、彼女に

銃を突きつけ、真相を詰問する。

 

 金髪女性はジュリーの名を騙ったことを認

め、マリオン・ベルガノという本名を告げた。

 

 マリオンは孤児院で育ち、ならず者男性リ

シャールと知り合い、二人は共謀して本物

のジュリーを殺害し、マリオンが彼女になり

すまし、ルイの財産を狙う計画を立て、実行

してしまったが、金もリシャールに全てを奪

われたことを正直に話した。

 

 ルイは真相を打ち明けたマリオンを許して

惚れ直し、二人は愛し合う。

 町で偶然ルイを見つけた探偵コモリはジ

ュリーの遺体は警察に発見され、調査が進

んでいることを語る。

 

 ルイは、深く愛しているマリオンを守る為

に、ジュリー殺害事件は忘れて欲しいとコ

モリに頼むが、コモリは事実探求に燃えて

いた。激論の後、ルイはコモリを殺害して

しまう。

 

 共に殺人を犯してしまったマリオンとル

イの逃避行が始まった。愛し合う二人だが、

金を受け取れぬ暮らしで、二人の心は荒れ

口論が続く。

 雪の中でルイは飲んだ飲料の中に、マ

リオンが入れた毒物があったことに気付く。

 だが、ルイは自身に毒を盛ったことも許し、

マリオンへの変わらぬ愛を確かめる。

 

 ☆怖くて綺麗ないい女 

    マリオン/カトリーヌ☆

 フランソワ

 François Roland Truffaut 

 1932/2/6ー1984/10/21

 

  フランソワ・トリュフォーは1932年2月6日に誕生

した。『暗くなるまでこの恋を』は37歳の作品である。

 

   Jean‐Paul Belmondo

   ジャン=ポール・ベルモンド

   1933/4/9‐2021/9/6

     

   Catherine Deneuve

      カトリーヌ・ドヌーヴ

   1943/10/22生まれ。現在80歳。

 

   

 二枚目スタアジャン=ポール・ベルモンドと美女

スタアカトリーヌ・ドヌーヴの二人を主演に迎えた

ヴサスペンスドラマである。

 

 男の愚かさと女の美しさ。これはジャン・ルノワ

ール映画の特徴と山田宏一・蓮實重彦との鼎談

においてトリュフォーは確かめている。本作は、ジ

ャン・ルノワールに捧げられた一本であるが、男女

問題のテーマを鮮やかに映し出している。

 

 繊細で人の良いルイにベルモンド、妖艶で華麗

な悪女マリオンにドヌーヴという配役は、シナリオ

執筆時から想定されていたのではないかと思える

程当たり役である。

 

 ルイが婚約者と出会い、写真とは別人と思いつ

つも、その美女に惹かれていく過程は、引きつけ

られる構成である。

 

 二人が愛し合う幸福な日々も暖かさがある。

 

 海・港をトリュフォーは綺麗に撮る。

 

 ベルモンドとドヌーヴが食卓で語り合うシーン

が忘れられない。

 

 暖炉でルイが心の傷から写真見合いを決め

たことを語るシーンも美しい。

 

 金髪女性が贋ジュリーで彼女を追うドラマも

緊張感豊かだ。

 

 ドヌーヴは踊り子のセクシーな衣装を着るだ

けでなく、大胆にヌードにもなっている。セクハラ

になるかもしれないが、少年時代マリオン役の

ドヌーヴのヌード写真を映画書籍で見て興奮し

た。四十七歳で劇場鑑賞を果たした時にその

頃の感覚を想い起して感慨があった。

 

 男達を魅了する美貌とセクシーさをドヌーヴ

が魅せる。

 

 ルイが、金髪美女贋ジュリーのマリオンから

真相を聞き、愛してしまうドラマが切ない。ここ

に男の愚直がある。愚直であるから純真であ

る。

 これはジャン・ルノワール・フィルムに登場す

る男達と通じ合っている。

 

 協力者だったコモリが、マリオンを守る為に

邪魔になり殺害して、自身も愛する女と同じく

殺人犯になってしまう。愛する悪女を守護し

ようとして罪の無い探偵を殺し自身も殺人鬼

になってしまうルイ。

 

 この悲劇も美しい。

 

 ミシェル・ブーケが善良中年男の悲しいドラ

マを見せる。

 

 

  だが、終盤のルイがマリオンに毒を盛ら

れて、苦しみながらも愛を語るシーンは、説

明的な印象を受けてしまい、ここに緊張感の

弛緩があった。ミステリーでは緊張感の一貫

が大事な課題になる。毒を盛られてもマリオ

ンを愛するルイの愛を強調したいという演出

意図だとは思うが。

 

 トリュフォーが1967年に撮った『黒衣の花嫁』

は同じアイリッシュの小説を映画化したもので、

ミシェル・ブーケがそこでも被害者を演じていた。

ミシェル・ブーケは後にジャン=ポール・ベルモ

ンドと共演した『ボルサリーノ』においても酷い

目に遭う役だった。それだけ存在感があるという

ことだ。

 

 『暗くなるまでこの恋を』は、ルノワールフィ

ルムを意識し過ぎて、男の愚かさと女の美しさの

説明に力が入り過ぎて、アルフレッド・ヒチコッ

ク先生から学んだミステリー作劇の緊張持続の演

出に緩みが出てしまったのではなかろうか?

 

 トリュフォーにとって、生涯の師であるジャン・ル

ノワールとアルフレッド・ヒチコックへの敬意は熱い。

 

 

 問題点を感じるが、魅力的なラヴサスペンスド

ラマであることには変わりない。惜しい秀作であ

り、名作に迫りつつある写真なのだが、その未完

成な個性も、この作品の個性なのだろう。

 

 

 ラストは『ランジュ氏の犯罪』『どん底』『大

いなる幻影』への熱きオマージュになっている。

 

 カトリーヌ・ドヌーヴのマリオンは悪女であるが

ルイの純粋さに愛を知るというところに、トリュフォ

ーの主題があるのだろう。

 

『終電車』

Le Dernir  Métro

映画 トーキー 134分 カラー

1980年9月17日 フランス封切

昭和五十七年(1982年)四月十日日本封切

製作国 フランス

製作言語 フランス語

製作 Les Flims du Carosse

   SEDIFプロダクションズ

   SFP

   TFIフィルム・プロダクション

フランス配給 ゴーモン

日本配給 東宝東和

 

製作 フランソワ・トリュフォー

脚本 フランソワ・トリュフォー

   シュザンヌ・シフマン

台詞 フランソワ・トリュフォー

   シュザンヌ・シフマン

   ジャン=クロード・グランベール

音楽 ジョルジュ・ドルリュー

 

撮影 ネストール・アルメンドロス

撮影助手 ミリオ・パキュル

     テッサ・ラシーヌ

フレーミング フローラン・バザン

美術 ジャン=ピエール・コユ=スヴェルコ

美術助手 ピエール・ゴルぺルツ

     ジャック・プレイザック

衣裳   リゼ―ル・ロゼース

編集   マルティーヌ・バラケ

編集助手 ジャン=フランソワ・ギレ

     マリー=エメ・デブリル

録音   ミシェル・ローラン

録音助手 ミシェル・メイエ

効果音  ダニエル・クト―

ミキシング ジャック・モーエン

メイク   ティディエ・ラヴァルニュ

      ティ・ロアン・エヌギエン

      フランソワズ・パン・スーサン

結髪    ジャン=ピエール・ぺロワイエ

      ナディーヌ・ルロワ

スチール写真 ジャン=ピエール・フィゼ

記録    クリスチーヌ・ぺレ

大道具   ロラン・ティノ

大道具助手 ジャン=ルイ・ゴッド・フロワ

照明    レ・ピエール・ガッシュ

小道具   シャルル・フレース

助監督   シュザンヌ・シフマン

      エマニュエル・クロッド

      アラン・タスマ

 

出演

 

カトリーヌ・ドヌーヴ(マリオン・シュタイナー)

 

ジェラール・ドパルデュー(ベルナール・グランジェ)

 

ハインツ・べネント(ルカ・シュタイナー)

ジャン・ポワレ(ジャン=ルー・コンスタンス)

アンドレア・フェレオール(アルフレッド・ギョーム)

 

ジャン=ルイ・リシャール(ダクシア)

モーリス・リッシュ(レーモン・ブールシェ)

マルセル・ベルベール(メルラン)

リシャール・ポランジェ(ゲシュタポ)

ジャン=ピエール・クラン(クリスチャン・ルグリス)

フランソワ・パスキエ(ジャコ― エリック)

ローズ・ティエリ―(ジャコ―の母)

ラズロ・サボ(ベルゲン大尉)

マルティーヌ・シモネ(マルティーヌ・セネシャル)

レナータ(グレダ・ボルグ)

エニア・ジヴ(イボンヌ)

ジャン=ジョゼ・リジェ(ルネ・ベルナルディー二)

ジェリカ・ズュグマン(ロゼット・ゴールドシュタイン)

ルネ・デュプレ(ヴァランタン)

アラン・タスマン(マルク)

ピエール・ベロ(門番)

クリスチャン・バルトーズ(ベルナールの代役)

ヤコブ・ワイズブリュット(ローゼン)

 

サビーヌ・オードゥバン(ナディーヌ・マルサック)

 

ポーレット・デュボスト(ジェルメーヌ・ファーブル)

 

監督 フランソワ・トリュフォー

 

鑑賞日時場所

昭和六十年(1985年)六月八日

京一会館

2023年10月22日発表記事を再編しています。

 ベルナール・グランジェは女性の手を占い、

「君の中に二人の女がいる」と伝える。

 

 怪奇劇場で俳優を為していたベルナールは

モンマルトル劇場に入る。

 

 時はナチス占領下時代、所はパリの物語で

ある。劇場も終電車も連日盛況であった。

 

 マリオン・シュタイナーは女優として活躍

している。

 

 夫の演出家ルカ・シュタイナーはユダヤ人

で南米に逃亡したとしていた。だが、国外逃

亡は具現しておらず、国外脱出の機会を窺っ

ていた。地下室からルカはマリオンに劇場動

向について指示を出している。

 

 劇『消えた女』を役者ジャン=ルーの演出、

主演マリオン、相手役ベルナールで上演する企

画が立てられた。ベルナールはマリオンに惹

かれる。

 

 ジャン=ルーはドイツ軍と親しい評論家ダ

グシアとも親しい関係にある。

 ベルナールはレジスタンス運動に関わって

いるようだ。

 

 『消えた女』は上演され好評で迎えられ

る。ダグシアはユダヤ的と否定する。怒った

ベルナールは思わずダグシアを殴ってしまっ

た。

 マリオンは惹かれつつあるベルナールへ

の想いが内面に萌えるが、劇場を守る為に

彼と距離を置く。レジスタンスへの参加を

決意したベルナールは身を引き劇場から出る

ことを決める。ゲシュタポが捜査を突然な

して「地下室を見せろ」と迫る。マリオンは

ベルナールを地下室に送りルカを助けた。

 

 ルカは「妻は君に夢中だ」と告げる。

 

 夜。ベルナールは「君の中に二人の女がい

る」と占ったマリオンを抱きしめる。マリオン

は応えた。二人は結ばれた。

            

 ◎魅惑のひと 

  マリオン/カトリーヌ・ドヌーヴ◎

  

  ジェラール・ドパルデュー 

  Gérard Depaldieu

  本名ジェラール・グザヴィエ・マルセル・

 ドパルデューは1948年12月27日フランスシ

 ャトールに誕生した。31歳でベルナールを

 演じた。

 

 

 カトリーヌ・ドヌーヴがヒロインで、ジェラ

ール・ドパルデューとハインツ・べネントがヒロ

インマリオンを愛する男を演じる。恋愛三角関係

と男女友愛ドラマの名匠トリュフォーが書き語り

撮る。

 

 

 カトリーヌ・ドヌーヴ et フランソワ・トリュ

フォー。

 

 

 二人の主演・監督の物語としては二回目にし

て最後になった。

 

 

 『暗くなるまでこの恋を』に続いてカトリーヌ

の役名はマリオンである。

 

 時代・場所は第二次世界大戦のナチス占領下の

パリである。ドラマの地は演劇界である。ベルナ

ールはレジスタンス、ルカは国外脱出でナチスの

横暴に抵抗する。

 

 夫ルカを愛しながらも、ベルナールの求愛に

揺れるマリオンをカトリーヌが繊細に演じる。

 

 ウィキペディアによると、ルカのモデルはル

イ・ジュ―ヴェではないかと言われている。

 

 ヴィシー政権時代にマルセル・カルネが演出

した『天井棧敷の人々』に少年フランソワ・ト

リュフォーは決定的な影響を受けた。

 

 六人の男女のドラマ『天井棧敷の人々』に感嘆

したフランソワは48歳の監督時代三人の男女の友

愛ドラマを華麗に撮った。

 

 1973年5月24日にフランスに封切られたフラン

ソワ・トリュフォー監督・出演作品『映画に愛を

こめて アメリカの夜』は『パメラ』という劇・映

画を撮るスタッフ・キャストの物語である。

 

 観客は『映画に愛をこめて・アメリカの夜』を

見聞しながら劇中劇『パメラ』にも引き込まれる。

『パメラ』のヒロイン女優ジュリーと夫役アルフォ

ンスは友愛から恋愛の関係になっていくので関心・

興味は更に熱くなる。

 

 

 

 本作においても『消えた女』の構成が絶妙であ

る。

 マリオン・ベルナール・ルカの三角関係がオーバ

ーラップするように映し出されて観客の心を離さな

いのだ。

 

 カトリーヌ・ドヌーヴの超絶的な美しさとジェラ

ール・ドパルデューの逞しさに感嘆する。二人が不倫

の恋に身も心も熱くなって行く過程に観客も緊張する。

 

 「君の中に二人の女が居る」の台詞は、『天井棧敷

の人々』におけるフレデリック・ルメートルの「恋す

る二人パリは狭しさ」を想起せしめる。

 ベルナールと抱きしめ合ってキスしたマリオンは

思わず落涙する。

 「二人の女が居るなんて言わないで」の色気に感嘆

した。

 

 少年時代に尊敬するマルセル・カルネの『天井棧敷

の人々』を鑑賞し衝撃を受け、37歳でマリオン/カトリ

ーヌのファムファタールドラマ『暗くなるまでこの恋

を』を撮り、41歳で映画世界男女の友愛ドラマ『映画

に愛をこめて アメリカの夜』を撮りフェラン監督を

演じたフランソワは、これらの歩みを確かめて演劇界

の愛の物語を優美に映し出した。

 

 

 フランソワ・トリュフォー、シュザンヌ・シフ

マンの脚本は緻密である。

 

 ジョルジュ・ドルリューの音楽は壮麗である。

 

 ネストール・アルメンドロスの撮影は濃密な色

を映し出し絵画のように秀麗な光景をフィルムに

焼き付けている。

 

 スタッフの尊い活動を得て、フランソワ・トリ

ュフォーが男女のドラマを繊細に撮った。

 

 トリュフォー作品史において珍しく商業的に大

ヒットした。セザール賞では作品賞を始め数々の

栄誉に輝いた。

 

 

 サビーヌ・オードゥバン Sabine Haudepinは

1955年10月19日に生まれた。

 1962年1月23日にフランスで封切られたフラン

ソワ・トリュフォー監督作品『突然炎のごとく 

ジュールとジム』では子役として娘サビーヌ役で

出演した。

突然炎のごとく ジュールとジム

 24歳でナディーヌ役を可愛く勤めている。

 

 ポーレット・デュボスト Paulette Dubost

は1910年10月8日パリに誕生した。

 2011年9月21日、100歳で死去した。

 

 28歳でジャン・ルノワール監督・脚本・出演

作品『ゲームの規則』でヒロインの一人小間使

いリゼットを豊かな色気で鮮やかに勤めた。

 『ゲームの規則』を熱愛・崇拝するフランソ

ワは、自作『終電車』において衣裳係ジェルメ

ーヌ役をポーレットにオファーし快諾を得た。

 

 69歳のポーレット・デュボストの風格は圧巻

だった。

 わたくしは本作鑑賞当時の1985年6月8日には

『ゲームの規則』をテレビ放送版で視聴していた。

「可愛いリゼットであったポーレットがジェルメ

ーヌで貫禄豊かなお婆様になられた」と息を呑ん

だ。

 フランソワ監督にとっても命を挙げて讃嘆して

いる師匠ジャン監督の名画のヒロインを自作にお

いて重い脇役で呼ぶことに熱き喜びがあったであ

ろう。

 

 両作品を見聞された方は気付かれると思うが、

ナディーヌ役のサビーヌ・オードゥバンはカラー

版『ゲームの規則』リゼットの可愛さを想起せし

めるイメージなのである。

 

  トリュフォーは、衣装係の役でポーレット・

  デュボストを選んだんです。私の年齢の頃

  の彼女の写真を何枚か見た時、彼女と私に

  似たところがあるのに気付きました。でも、

  彼は私に一度も話したことはありません。そ

  れは彼の秘かな夢想だったんです。

  (『シネ・アルバム115 フランソワ・ト

    リュフォー』48頁

    サビーヌ・オードゥパン インタビュ

    ー

    川竹英克編

    1985年8月28日印刷 芳賀書店)  

 

 サビーヌ自身がフランソワの心に彼女と若き日

のポーレットを照応させたいたことが窺えること

を語っている。

 

 『終電車』の魅力の中には歴史への憧れがある。

 

 

 大詰は1944年8月25日のパリ解放の日のドラマ

である。

 

 マリオン・ベルナール・ルカの女一人、男二人、

演出家夫婦と俳優の男女三人ドラマはどうなるの

か?

 

 ここでフランソワは息を呑ませる大展開をドラマ

で見せる。

 

 1985年6月8日京一会館での驚嘆は現在も強烈で

ある。

 

 男女三人の愛のドラマは「これからどうなるのか?」

という観客の心に呼び起こす。

 

 物語は観客の胸の中で果てしなく広がり、一人一人

が想像で描いてゆく。

 

 理想的なラストである。

 

 フランソワ・トリュフォーはラスト演出において無限

の美しさを見せた。

 『終電車』においてカトリーヌが勤める優しい美

女マリオンは、「二人の女が君の中にいる」と言わ

れるが、『暗くなるまでこの恋を』のマリオンとの

対応は明白であろう。

 

 『暗くなるまでこの恋を』のマリオン

 

 『終電車』のマリオン。

 

  悪女と聖女は共に美しい。

 

 「君の中に二人の女がいる。」のベルナールの

台詞が強く響いてくる。

 

 

                              

カトリーヌ・ドヌーヴ&渡辺謙

2007年2月25日 第79回アカデミー賞授賞式

 

1974年4月2日 第46回アカデミー賞授賞式

『映画に愛をこめて アメリカの夜』

外国語作品賞受賞 

フランソワ・トリュフォー監督スピーチ。

パメラ

 

 

 

 

 

  

  ☆フランソワ・トリュフォー映画鑑賞履歴☆

 

 1985年6月8日 京一会館 『終電車』

 1986年2月25日・2月27日・

 3月1日→2日(オールナイト)

 京一会館  『映画に愛をこめて アメリカの夜』

 

 

 1986年5月25日 京都大学 西部講堂 『あこがれ』

 

 1986年7月 京一会館 『日曜日が待ち遠しい!』

 

 1986年夏 三番街シネマ 『突然炎のごとく』

 

 1987年夏 三越劇場 『恋のエチュード』

 

 2000年3月11日→12日(オールナイト)

 『突然炎のごとく』

 『緑色の部屋』

 『恋愛日記』

 『トリュフォーの思春期』

 

 2000年3月25日 シネマアルゴ梅田

 『大人は判ってくれない』

 

 2000年4月1日 シネマアルゴ梅田

 『二十歳の恋 フランス編 

 アントワーヌとコレット』

 

 2000年4月5日 シネマアルゴ梅田

 『夜霧の恋人たち』

 

 2000年4月14日 シネマアルゴ梅田

 『家庭』

 

 2000年4月19日 シネマアルゴ梅田

 『逃げ去る恋』

 

 2004年2月16日 日本イタリア京都会館

 『隣の女』

 

 2004年2月28日 日本イタリア京都会館

 『二十歳の恋 フランス編 

 アントワーヌとコレット』

 『ピアニストを撃て』

  

 

 2004年3月6日 日本イタリア京都会館

 『あこがれ』

 『私のように美しい娘』

 『柔らかい肌』

 

 2014年10月12日 角川シネマ有楽町

 『野生の少年』

 

 2014年10月26日 角川シネマ有楽町

 『アデルの恋の物語』 

 『黒衣の花嫁』

 

 2015年1月17日 神戸アートビレッジセンター

 『華氏451』

 『暗くなるまでこの恋を』

 

 

 2015年2月19日 京都みなみ会館

  『恋のエチュード』

 

 

 2018年3月17日 15時30分

 京都みなみ会館

 『恋のエチュード』

 

 

 カトリーヌ・ドヌーヴのマリオン『終電車』に

始まりカトリーヌ・ドヌーヴのマリオン『暗くなる

までこの恋を』に終わっているという初回鑑賞

作品履歴に縁を感じている。

 

 『ある訪問』『水の話』の劇場鑑賞を為すと、

フランソワ・トリュフォー全作品銀幕見聞は成り立た

つ。

 ◎

 ジェラール・ドパルデューが性暴力加害の問題で

告発を受けている。事実だとしたら、悲しい。

 2023年12月17日エマニュエル・ドゥべヴェール

氏がセーヌ川に投身自殺をして命を断った。ジェラ

ール・ドパルデューの性暴力問題を告発した。

 哀悼の意を表する。

 

 

 

 勿論偉大な名優だからといって性暴力が許され

る訳ではない。

 

 だが、ジェラール・ドパルデューにも主張がある

だろう。

 

 彼の性暴力問題は現在司法調査中で推移を見たい。

 

 作品には罪はない。

 

 

 少年時代からジェラール・ドパルデューの名演

を映画館で見ている。

 ◎

 ベルナールとルカに愛され手を繋ぐひと。

 

 マリオン・シュタイナー/カトリーヌ・ドヌーヴの

絶世の美しさに一乗寺京一会館銀幕で出会えた事は

17歳のわたくしにとって大いなる出来事であった。

 

 

                        合掌

 

 

                             

 

                       セブン