カサンドラ・クロス | 俺の命はウルトラ・アイ

カサンドラ・クロス

『カサンドラ・クロス』

The Cassandora Crossing

映画 トーキー 126分 カラー

 

1976年12月18日 イタリア・日本封切

1977年2月9日 アメリカ合衆国封切

1977年3月31日 西ドイツ・イギリス封切

1977年6月15日 フランス封切

 

製作国 西ドイツ イタリア

    イギリス フランス

    アメリカ合衆国

 

製作言語 英語 フランス語

     スウェーデン語 ドイツ語

 

製作 カルロ・ポンティ

   リュー・グレード

 

原案 ロバート・カッツ
   ジョルジュ・パン・コスマトス

 

脚本 トム・マンキーウィッツ

    ロバート・カッツ
   ジョルジュ・パン・コスマトス

 

撮影   エンニオ・グァル二エリ

音楽  ジェリー・ゴールドスミス

編集  ロベルト・シルヴィ
    フランソワ・ボネット

 

出演

 

ソフィア・ローレン(ジェニファー・リスポリ・チェンバレン)

 

リチャード・ハリス(ジョナサン・チェンバレン)

 

エヴァ・ガードナー(ニコール・ドレスラー)

 

マーティン・シーン(ナバロ・サンティーニ)

 

O・J・シンプソン(ハリー)

 

アン・ターケル(スーザン)

レイモンド・ラブロック(トム)

ライオネル・スタンダー(マックス)

ルー・カステル(エクランド)

 

ジョン・フィリップ・ロー(スターク少佐)

 

アリダ・ヴァリ(チャドウィック婦人)

 

リー・ストラスバーグ(ヘルマン・カプラン)

 

イングリッド・チューリン(エレナ・シュトラドナー)

 

バート・ランカスター(スティーヴン・マッケンジー)

 

監督 ジョルジュ・パン・コスマトス

 

ジョルジュ・パン・コスマトス=ジョージ・パン・コスマトス

鑑賞日時場所

令和六年(2024年)一月二日

京都シネマ シネマ3 H1

 テロリストがスイスジュネーヴ国際保健

機構本部に潜入した。警備員の働きでテロ

リスト一人は射殺され、もう二人は銃撃戦

で壊れた瓶から液を浴びた。一人は捕らえ

られ、もう一人のエクランドは逃走した。

 

 アメリカ陸軍マッケンジー大佐とスタック

少佐は病に苦しみだしたテロリストから彼の

仲間の逃走先を探る。テロリストが浴びた液体

は、強い感染力を持つ病原体が入っていた。

 この細菌の開発をアメリカ政府が為している

ことが露見することをマッケンジーは恐れる。

エクランドと会った人は伝染する可能性が高

い。テロリストが細菌により病死する。マッ

ケンジーはエクランドは列車に乗ったと推理す

る。

 

 

 大陸横断特急には小説家のジェニファー、

彼女の前夫医師チェンバレン、西ドイツ兵器

製造業者夫人のニコール、その愛人サンティー

二、ユダヤ人セールスマンカプラン、黒人神父

ハリーが乗る。

 

 この列車にエクランドは逃げ込んだ。

 

 列車内でジェニファーとチェンバレンは相手

の近況を確かめ合う。ジェニファーのヒット作

のモデルは前夫のチェンバレンである。

 

 エクランドは体調が苦しくなる。

 

 マッケンジー少佐と国際保健機構女性医師シ

ュトラドナーは特急内のチェンバレンに連絡を

取る。

 

 チェンバレンはエクランドを発見する。

 

 エクランドは亡くなる。

 

 マッケンジーは列車をニュルンベルグに行かせ

防護服を着た医療チームを同乗させる。

 1000人の乗客たちはマッケンジーの放送で列車

がテロリスト達の陰謀で爆弾を仕掛けられたと聞き

動揺する。

 

 カプランは妻子を殺された記憶が呼び起こされ

逃走しようとするが防護服を着たチームに手を銃

で撃たれ、車内に入れられる。

 

 マッケンジーは「カサンドラ・クロス」と呼ば

れる危険な鉄橋に特急を導き、列車を落下させて

全乗客の口を封じようと狙う。

 

 サンティーニは愛人ニコールに怒り銃を向け、

列車の主導権を自身に渡すように車掌に要求す

る。チェンバレンがサンティーニを叱り飛ばす。

サンティーニは打って変わってジェニファーに

「ニコールを頼みます」と託す。

 

 チェンバレンはマッケンジーが全乗客を殺す

計画であることを知った。全乗客を救うことは

難しいが、二両編成のうち一両だけでも切り離し

止められないかとチェンバレン・ジェニファーは

模索する。

 

 列車はカサンドラ・クロスに向かって突進

する。

 

 ◎オールスタア 電車パニックドラマ◎

 

 ソフィア・ローレン Sophia Lorenは

1934年9月20日にイタリアに誕生した。イ

タリア映画の大スタアである。

 本作のプロデュ―サーカルロ・ポンティは

夫である。世界のスタア・名優達が結集した

オールスタア豪華配役の列車ドラマのヒロイン

をソフィアが鮮やかに魅せた。

 

 リチャード・ハリス Richard Harrisは

1930年10月1日アイルランドに誕生した。

45歳でチェンバレン医師の果敢さを熱く表現

した。

 2002年10月25日、72歳で死去した。

 

 アン・ターケル  Ann Kathryn Turkel

は1946年7月16日アメリカ合衆国に誕生し

た。

 1976年、リチャード・ハリスとアン・タ

ーケルは夫婦であった。

 

 エヴァ・ガードナーAva Lavinia Gardner

は1922年12月24日に誕生した。アメリカ映画

の大スタアである。54歳で若い恋人と列車旅行

をする中年女性ニコールを演じた。

 サンティーニに銃口を向けられても彼を包む

優しさの表現が素敵だった。

 

 

 バート・ランカスター Burt Lancasterは

1913年11月2日に誕生した。アメリカ映画・イ

タリア映画の大スタア・大名優である。1994年

10月20日、80歳で死去した。

 

 『カサンドラ・クロス』はかなり前に深夜の

テレビ放送で日本語吹替版を視聴した。

 

 オールスタアの列車パニックドラマは緊張感

があり、引っ張られた。

 

 午前十時の映画祭14上映によりスクリーンで

見聞する機会を得た事は有難い出来事であった。

 

 乗客は列車に幽閉される。列車は墜落必至の

地に向かって進む。カサンドラ・クロスが列車の

走行には耐えられない。落下事故確実の進路を余

儀なくされた列車に乗る人々はどのように抵抗し

て逃げるか?

 

 この展開は観客の心をぐいぐいと引く。緊張感

は豊かだ。

 

 ヒロインジェ二ファーチェンバレン医師は昔夫婦

で別れた関係だが、列車転落を防ぐ作戦で共に協力

し合い愛情が再燃していく。このドラマは見応えが

あった。

 スタアソフィア・ローレンとリチャード・ハリス

が大人の愛を鮮やかに表してくれた。

 

 しかし、ところどころに「うん?」と首を傾げて

しまう箇所がある。

 

 防護服の男達に銃で撃たれたカプランが立ち上が

って撃たれた腕の傷の手当をするが、激痛だったと

思うだが凄く落ち着いているのだ。これは何故かと

疑問に思った。

 

 ニコールを人質に取り銃で脅し、車掌達を脅した

サンティーニは、チェンバレンに叱責されると急に

罪悪感を呼び起こされたのか、ジェニファーに「ニ

コールを頼みます」と真面目な言葉を語ったりする。

勿論人間には性格や思考の激変が起こることもある。

リアリズムで映画を見聞する気はないのだが、不思議

には思った。

 

 防護服を着て拳銃を発射するスタッフ達は、マッ

ケンジーの命令に全て服従する立場であったことは

察するのだが、カサンドラクロスに行き乗っている

列車が落ちるという未来に抵抗や恐怖感があったと

思われる。この辺りは描いて欲しかった。

 

 疑問点を感じたが、これだけの名優・スタアが一

作品に集うたことは画期的であり、大プロデュ―サー

カルロ・ポンティの豪腕によって為された快挙であ

ろう。

 

 ジョルジュ・パン・コスマトス監督にとっても、

スタア達に見せ場を作られなばならなかったこと

だろう。

 

 バート・ランカスターとアリダ・ヴァリは『19

00年』と同時期の作品である。

 

 イングマル・ベルイマン作品やルキノ・ヴィスコ

ンティ作品でヒロインを演じたイングリッド・チュ

ーリンが乗客の命を助けようとするエレナを熱く演

じる。

 

 ヴィスコンティ作品二本に主演したバート・ラン

カスターが老獪で冷酷なマッケンジーを重厚に演じ

る。

 

 バート・ランカスターとイングリッド・チューリン

のヴィスコンティ作品での共演は実現しなかった。本

作で実現したことは大きい。

 

 冷酷なマッケンジーだが、彼も又アメリカ政府から

見れば監視対象というラストは怖かった。

 

 繊細さを持つ悪役マッケンジーを大スタアバート・

ランカスターが演じる事で「壁」の巨大さが表された

と見ている。

 

 カサンドラ・クロスの列車通過シーンのアクション

は、やはり、スクリーンで見聞すべきである。銀幕で

ないと怖さと興奮は実感できない。

 

 いくつか疑問点を挙げたが、総じて緊張と興奮を

覚えた事は確かであり、ジョルジュ・パン・コスマ

トスはアクションで冴えを見せる監督だと感じた。

 

 

                    合掌