バベットの晩餐会 | 俺の命はウルトラ・アイ

バベットの晩餐会

『バベットの晩餐会』

Babettes gæstebud

Babette's Feast

映画 トーキー 102分 カラー

 

1987年8月28日 デンマーク封切

平成元年(1989年)二月十八日 日本封切

 

製作国 デンマーク

製作言語 デンマーク語 スウェーデン語

     フランス語

製作会社 パノラマフィルムA/S

              Det Danske Filminstitut
             Nordisk Film
             Rungstedlundfonden

 

原作 アイザック・ディネーセン

脚本 ガブリエル・アクセル

 

製作 ボー・クリステンセン

製作総指揮 ユスツ・べツァー

 

音楽 ペア・ノアゴー

撮影 へ二ング・クリスチャンセン

編集 フィン・ヘンリクセン

 

出演

 

ステファーヌ・オードラン(バベット)

 

ビルギッテ・フェダースピール(マーチーネ)

ヴィ―ベケ・ハストルプ(若き日のマーチーネ)

 

ボディル・キュア(フィリパ)

ハンネ・ステンスゴー(若き日のフィリパ)

 

ポウエル・ケアン(牧師)

ヤール・キューレ(ローレンス・レーヴェンイエルム)

グドマール・イーヴェソン(若き日のローレンス・レーヴェンイエルム)

ジャン=フィリップ・ラフォン(アシ―ル・パパン)

 

ナレーター ギタ・ナービュ

 

監督 ガブリエル・アクセル

 

アイザック・ディーネセン=カレン・ブリクセン

            =イサク・ディーネセン

鑑賞日時場所

令和六年(2024年)一月五日

京都シネマ シネマ1 F列1番

 19世紀デンマークユトランドの漁村において

マーチーネとフィリパの姉妹は暮らしている。

 老年期の姉妹二人は牧師をしていた亡き父親

の教えに学び、村の老人たちに食事を届けて善

行を施している。

 

 若き日のマーチーネとフィリパは美女姉妹で

あった。男性たちが心をときめかせ憧れた存在

であった。

 

 士官ローレンスは家庭の指令で漁村において

謹慎していたが、マーチーネの美貌に感動し恋

するが片想いであった。

 

 フランスにおいて人気を博した歌手アシ―ル・

パパンが漁村に滞在しフィリパの歌声に感動し

歌唱指導を為し彼女を愛するが、この恋も片想い

となった。

 

 マーチーネ・フィリパは心身を挙げて神に仕

えていた。

 

 フランス人女性バベットはパリ・コミューン

で夫と子供を殺され、アシ―ル・パパンの紹介

でマーチーネ・フィリパ姉妹を尋ね家政婦として

雇って頂きたいと懇願する。

 

 「私達の収入では貴方を雇えません」と姉妹

は断る。バベットは捕まれば殺される身で、お

給料は諦めるので置いて頂けませんかと頼む。

姉妹は家政婦としてバベットを雇う決心を固め

る。

 

 バベットはフランスで料理店で勤務していた

経験があり、料理の腕前は見事であった。姉妹

と協力して漁村の人々を長く支えた。

 

 姉妹の父親である牧師が亡くなり、村の人々

の信仰の在り方を案ずるマーチーネ・フィリパ

姉妹は父の生誕百年記念に村の人々を招待する

事を計画する。

 

 フランスからの郵便でバベットは1万フランの

宝くじを当てたという情報が入る。姉妹はバベッ

トは巨万の富を得たのでフランスに帰るのではな

いかと心配する。

 

 バベットは村人を招待する晩餐会の費用を自分

が出すから料理も作らせて欲しいとマーチ―ネ・

フィリパに頼む。

 

 ◎バベットの無償の優しさ◎

 

 ステファーヌ・オードランのバベットは暖かい。

窮地の自己を助けてくれたマーチーネ・フィリパ

姉妹の恩義に報い、村人達に美味しさを実感して

欲しいという心からフランス料理晩餐会を企画す

る。

 

 

 ステファーヌ・オードラン Stéphane Audran

は1932年11月2日に誕生した。本名はColette Suzanne 

Dachevilleである。2018年3月27日、85歳で死去

した。

 55歳でバベットを演じた。

 

 ビルギッテ・フェダースピールとボデイル・キュ

アは上品で清楚なおばあ様である。その品格に感嘆

した。老女の香を学んだ。

 お二人のアップにの直後にヴィ―べケ・ハストル

フとハンネ・ステンスゴーの若き美女二人の姉妹の

アップが映る。

 

 現在から過去への鮮やかな歩みをガブリエル・ア

クセル監督は映し出す。

 若く美しいキリスト者姉妹のマーチーネ・フィリパ

姉妹は人柄も優しく男性からもモテるが、生活の全て

を信仰に捧げており、独身生活を選ぶ。

 

 若き髭の軍人ローレンスのマーチーネへの想いと

太った歌手アシ―ル・パパンの片想いが切ない。

 

 グドマール・イーヴェソンは渋い。

 

 ジャン・フィリップ・ラフォンの歌唱は豪快で逞

しい。

 

 ポウエル・ケアンの父牧師は重厚であった。

 

 姉妹とバベットの長き友情に心を打たれた。

 

 バベット役はステファーヌ・オードランが一人一

役で演じる。

 

 村人たちは年老いて集会で口論が絶えない。

 

 姉妹とバベットは老いた男女になった信徒の村人

達一人一人を友として包み込む。

 

 バベットはパリレストラン料理長であった経験

から一万フランの巨費を投じて大夕食会を企画し

豪華な食材を購入し完璧な料理法を為す事を決める。

 

 ステファーヌ・オードランの料理は美味しそう

で見ていて感嘆する。

 

 牛の頭や豚の頭もはっきり映される。料理は動物

を屠殺しその肉体を綺麗に調理する営みであること

を改めて学んだ。

  

 姉妹と村の老いた信者たちの計12人に豪華な食事

を食べて欲しい。

 

 バベットの無償の愛に心の底から打たれた。

 

 老将軍となったローレンスがマーチーネに語る想い

に男の道を学んだ。

 ヤール・キューレが渋い。

 

 

 本作との出会いはNHK教育テレビ後のNHKE

テレの『世界名画劇場』放送版の視聴であったと記

憶している。

 

 デンマーク漁村に暮らす女性三人の友愛と優しさ

に心を深く打たれた。

 

 当時自分は二十代か三十代であったと思う。

 

 五十六歳になりスクリーンで鑑賞する縁を獲得

した。

 

 姉妹マーチーネ・フィリパの老年期と若き日の

対応に息を呑んだ。

 老将軍ローレンス若き日の自己に語り掛ける場

面にも胸が熱くなる。

 

 京都シネマの鑑賞においてテレビ放送版初視聴

の時期を想起して様々な感慨があった。

 

 現在と過去は照らし合って呼応している。

 

 姉妹と村の人々の美味しい食事を味わって欲し

いという気持にバベットは自身の全ての力を傾注

し取り組む。

 

 ガブリエル・アクセル監督はバベットの清らか

な心を映し出す。

 

 わたくしは自己の汚さを痛感した。

 

 2024年の真冬厳冬においても、バベットの優し

さは観客の心も暖めてくれた。

 

 

                    合掌