ウルトラセブン ノンマルトの使者 | 俺の命はウルトラ・アイ

ウルトラセブン ノンマルトの使者

『ウルトラセブン』「ノンマルトの使者」

テレビドラマ 30分 トーキー カラー

昭和四十三年(1968年)七月二十一日放送

 

製作国 日本

製作言語 日本語

放送局  TBS系

 

監修 円谷英二

 

プロデューサー 末安昌三

脚本 金城哲夫

 

撮影  永井仙吉

美術  岩崎致躬

照明  新井盛

音楽  冬木透

 

録音  松本好正

効果  西本定正

編集  柳川義博

助監督 山本正孝

制作主任 高山篤

 

特殊技術

撮影 鈴木清

美術 池谷仙克

操演 平鍋功

照明 小林哲也

光学撮影 中野稔

助監督 円谷粲

製作主任 熊谷健

 

東京現像所 

キヌタ・ラボラトリー

TBS映画社

 

出演者

 

中山昭二(キリヤマ隊長)


森次浩司(モロボシ・ダン)
菱見百合子(友里アンヌ)


石井伊吉(フルハシ・シゲル)
阿知波信介(ソガ)
古谷敏(アマギ)  

 

二瓶正也(カマタ)

野中マリ(真市の母)

町田勝紀(真市)

佐竹弘行(海底基地係員)

毛利幸子(先生)

 

宮川洋一(マナベ参謀)

天草四郎(校長)

 

西京利彦(ガイロス スーツアクター)

上西弘次(ウルトラセブンスーツアクター)
浦野光(ナレーター)

 

特殊技術 高野宏一

 

監督 満田Kazuho.svg

 

制作 円谷プロダクション

    TBS

 ☆

 森次浩司→森次晃嗣

 

 菱見地谷子→菱見百合子→ひし美ゆり子

 

 石井伊吉→毒蝮三太夫

 

 満田Kazuho.svg=清瀬かずほ=満田かずほ

 ☆

 台詞の引用・ストーリーの要約・

シーンの考察は、研究・学習の為

です。

 円谷プロ様・TBS様におかれまし

ては、何卒ご寛恕・ご理解を賜り

ますようお願い申し上げます。

 ☆

 シーホース号は海底開発基地センターの

の船上基地として海底で活動している。船内

の窓から神秘的な海底が窺える。

 

 海底基地隊員カマタは同僚から大食を注意

される。

 

 隊員の一人は海底の魚と見つめ合い、「刺身

にして食っちまうぞ」と威嚇の言葉を魚に語る。

カマタは「相手だって、お前さんを人間バーベ

キューにして食いたいと考えているかもしれな

いぜ。」と指摘する。隊員達は笑い合った。

 

  ナレーター「海底。それは我々人類の第二

        の故郷である。」

 

 豊かな地下資源と食糧が無限に隠されている

海底の開拓に人類は着手している。宇宙開発と

共に大事な課題だ。

 

 

  ナレーター「理想都市や海底牧場が生まれ、

        地上よりも素晴らしい世界都市

        が出来上がるだろう。」

 

 海岸において友里アンヌは首まで埋まって、

砂浜を楽しんでいる。

 

 少年が近付き、「お姉ちゃん」と語ってアン

ヌに呼びかけた。

  

 アンヌがウルトラ警備隊隊員であることを知

っている少年は、シーホース号の海底開拓中止

を強く求める。

 

 「あれがどうかしたの?」と海上のシーホース

号を砂に塗れたアンヌは問う。

 

 「止めさせないと大変な事になる」と警告した

少年は走り去る。

 

  モロボシ・ダンがアンヌの元にやってきて、

「どうしたんだい?」と問う。シーホース号が

大変なことになるという少年の警告をアンヌは

恋人ダンに伝える。ダンは海底開拓は宇宙開発

よりも身近なテーマであることを確かめる。

 

 突然沖のシーホース号が爆発炎上した。

 

 ダンとアンヌは驚愕する。

 

 ビデオシーバーでダンは地球防衛軍作戦室の

キリヤマ隊長に連絡する。

 キリヤマはシーホース号炎上を聞き驚く。フル

ハシはハイドランジャーで出動する。

 

 アンヌは少年が海岸でシーホース号変事を予告

した事をキリヤマに報告する。キリヤマは顔を覚

えているかとアンヌに問う。アンヌは少年の左の

頬に黒子があったことを告げ、漁師の子供と予測

する。

 

 アンヌはダンと共に漁師に聞き込みをする。

 

 

 

 地球防衛軍作戦室においてマナベ参謀は、子

供から妙な電話がかかってきたことを告げ、カ

セットテープレコーダーで録音した会話を再生

する。

 

 少年は海底はノンマルトのものと述べた。ノ

ンマルトとは何だいとマナベは問うた。

 

  「人間が侵略してきたらノンマルトは断然

   闘うよ。」

 

 少年は明確にノンマルトという生物が人間に

侵略されたら戦うと語った。海底はノンマルト

のものだから侵略しないでと重ねて頼んで電話

を切った。

 

 アンヌはテープに録音された声を聞き、海岸の

少年が語った声と同じと確かめる。

 

 

 ダンは故郷M78星雲においては地球人のことを

ノンマルトと呼んでいる事を想起する。

 

 学校を尋ねたアンヌとダンは校長先生に協力

してもらい、左頬に黒子がある少年に集まって

もらう。だが、いずれの児童・生徒も海岸で事

故を予測した少年とは別人であった

 

 

 ポインターで走っていたダンとアンヌは海岸

の岩場でシーホース号変事を予測した少年を遂に

発見した。

 

 アンヌは少年に名前を問う。

 

 少年は真市と名乗った。

 

 

 アンヌは何故海底開発センターが壊れたのかと

問う。真市少年はノンマルトが怒ったからだと答

える。なぜノンマルトは怒るのとアンヌは聞く。

 海底はノンマルトのものだからさと真市少年は

根拠を明かした。

 

 

  アンヌ「ノンマルトって何なの?」

 

  真市「本当の地球人さ」

 

  アンヌ「地球人?」

 

  真市「ずっとずっと大昔、人間より前に地球に

     住んでいたんだ。でも、人間から海に追

     いやられてしまった。人間は今では自分

     たちが地球人だと思い込んでいるけれど

     も、本当は侵略者なんだ。」

 

 アンヌは驚く。「君、ノンマルトなの」という彼女

の問いに真市は「人間は狡い」と厳しく言い放つ。真

市君は人間であり、人間が人間の事を考えるのは当然

であり、海底は私達人間にとって大切な資源と力説す

る。真市はノンマルトにとってはもっと大切と告げる。

 

 ダンが岩陰から現れる。

 

 真市は「人間がやるんなら、ノンマルトもやるよ」と

警告し海に飛び込んだ。

 

 キリヤマは城南大学の海底探検部の船が襲われた

事をダン・アンヌに伝え二人を呼び寄せる。

 蛸と亀を合わせたような怪獣が船くろしお丸を

襲う。

 ホーク1号に乗ったウルトラ警備隊隊員が怪獣

を攻撃する。

怪獣は海底に逃げる。

 

ハイドランジャーが怪獣を追跡する。

 

 怪獣はハイドランジャーから攻撃を受ける。

 

 地球防衛軍作戦室ではアマギが海底怪獣ノン

マルトを生け捕りにして水族館に持っていけば

一儲けできたと惜しむ。

 

 マナベ参謀は怪獣はガイロスという名でノン

マルトとは別の存在であると指摘した。

 

 行方不明であった原潜グローリア号が現れ、

ノンマルトの指示に従って人類に対し攻撃姿勢

を見せ、ホーク1号に攻撃を開始した。

 

 ガイロスは倒されておらず、再びその姿を現

した。

 

 ウルトラ・アイを取り出してウルトラセブン

に変身しようとしたダンの前に真市少年が現れ、

攻撃を止めてと重ねて頼む。

 

 ダンは懸命に訴える真市の言葉に心を揺さぶ

られるが、ガイロスと戦う決意は固かった。

 

  真市「ウルトラ警備隊の馬鹿!」

 

 ダンは真市に戦わなければいけなんだと課題

を語り、ウルトラセブンに変身する。

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 海の中でウルトラセブンに変身したダンは

ガイロスと激しく戦う。

 アイスラッガーによってウルトラセブンは

ガイロスを攻撃する。

7 20

 ハイドランジャーはグローリア号を追跡す

る。

 

 ミサイルがハイドランジャーから放たれる。

グリーリア号にミサイルは命中する。ノンマル

ト達は倒される。

 

 キリヤマ隊長を始めとする防衛隊員はノンマル

トの海底都市を発見し攻撃を決定する。

 

 海中決戦においてウルトラセブンはアイスラッ

ガーでガイロスを斬殺した。

 

 ノンマルトの海底都市はキリヤマ隊長指揮の

ハイドランジャー攻撃で壊滅した。キリヤマは

勝利を宣言する。

 

 ダンの心に「ウルトラ警備隊の馬鹿」と糾弾

した真市の声が響く。

 

 アンヌと共にダンは海岸を歩む。

 

 女性が墓標に花を供えている。

 

   「この土地に避暑に来て息子を亡くした者

    です。今日が命日なものですから。」

 

 墓標には「真市安らかに」と書かれていた。

 

 ダンとアンヌは驚愕する。

 

  ナレーター「それにしても、ノンマルトは地

        球の原住民だったのでしょうか?

        全てが消滅してしまった今、そ

        れは永遠の謎となってしまった。」

 

 

 ◎金城哲夫における悲の探求◎

 

  真市少年の叫びは重い。

 

 「ウルトラ警備隊の馬鹿」の糾弾の声は視聴者

 のこころにも痛切に響く。

 

 地球を侵略者から守る為にウルトラセブンとウ

ルトラ警備隊は奮闘している。だが正義に見える

戦いであっても倒される存在は命を踏みつぶされた。

 

 他者から侵略され防衛する。この事を基盤に踏

まえて『ウルトラセブン』の物語は語られ書かれ

描かれて来た。だが、第42話「ノンマルトの使者」

はウルトラセブンやウルトラ警備隊が防衛戦と思い

こむ戦いが、地球先住民であるかもしれないノンマル

トを殺傷する侵略かもしれないと問う。

 

 問題作の中の問題作であり、重厚な主題は視聴者

の心の中に嗚咽がこみあげてくるかのような衝撃を

呼び起こす。

 

 金城哲夫が二十九歳で書いた脚本は不滅の輝きを

放っている。

 重く深く悲しい物語であるが、全編に詩情が溢れて

いることも確かめたい。

 

 金城哲夫(きんじょう・てつお)

 脚本家・作家。

 昭和十三年(1938年)七月五日生まれ。沖縄県島

尻郡南風原町出身。玉川大学卒業後の昭和三十八年

(1963年)円谷プロダクションに入社。

 『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』

の企画において活躍し、数多くの脚本を執筆する。生

命の尊さを源にして、神秘的で幻想的な大傑作を、緻

密な構成のシナリオで発表する。

 第一期ウルトラシリーズを牽引したスタッフである。

 昭和五十一年(1976年)二月二十六日事故により死

去。満年齢三十七歳。

 

 満田かずほ(みつた・かずほ)

 本名・旧芸名 満田Kazuho.svg

 別名義 清瀬かずほ

 映画監督・作詞家・プロデューサー・俳優・声優。

 昭和十二年(1937年)八月二十日長崎県生まれ。

 早稲田大学・TBSアシスタントディレクターを経て、

 昭和三十九年(1964年円谷特技プロダクション)

 に入社。

 『ウルトラQ』「宇宙指令M774」で初監督を担当し

 ウルトラシリーズにおいて数々の大傑作を発表する。

 

 市川森一は昭和十六年(1941年)四月十七日に長

崎県に生まれた。

 平成二十三年(2011)年十二月十日に死去した。

『ウルトラセブン』脚本家であった市川森一は、N

HKの番組で「ノンマルトの使者」に金城哲夫の沖縄

の悲しみが表されたと解説していた。

 

 

 

 上原正三は昭和十二年(1937年)二月六日、沖縄県

に生まれた。別名義に泉崎敬太・木原光がある。

 令和二年(2020年)一月二日死去。八十二歳。

 

 

 「北海道から沖縄まで遺骨を収集団としてやってきた

母親が息子の死に様を戦友たちに聞いてまわるという話」

(『語れ!ウルトラマン』2012年 KKベストセラーズ)

である『収骨』で芸術祭第一公募脚本に入選する。

 

 円谷一は上原の脚本を演出することを確約し、円谷に

おける脚本活動が始まる。

 

 盟友金城哲夫の視点については、「反戦とかそういう

次元にはいなくて、金星あたりに」あったと前掲書『語

れ!ウルトラマン』のインタビューで語っている。

 

  金城はね、ことさらに戦争のことを口にしない男で

  したよ。それをいかにも反戦の旗手みたいに採り上

  げる傾向は、僕は嫌ですね。(中略)

  「ノンマルト」で反戦を語るのは、金城に対して失

  礼だと思うんです。金城の書くものは、僕なんかが

  書く反戦とは全然次元が違いますよ。

  (19頁)

 

 上原正三は「ノンマルトの使者」で反戦を語るのは金城

哲夫に対して失礼であると述べている。

 

 満田かずほは小中和哉から「金城さんの沖縄問題」と絡

めて語られる事が多い第42話に「監督としてはその時点で

はそういう意識は無かったですか」(『ウルトラセブン研

究読本』10頁)と問われて、「全くない」(前掲書)と明

確に答えている。

 

 

 市川森一と上原正三・満田かずほの意見が正反対である

ことは興味深い。

 

 金城哲夫・市川森一・上原正三は亡くなったが、残された

作品と言葉は限りない重さを以て現代に迫ってくる。

 

 沖縄の悲痛さを番組の主題に金城哲夫が尋ねたかどうか?

 

 これは分からない。

 

 エンディングの浦野光のナレーションにある言葉「永遠の

謎」が改めて響いてくる。

 

 答えを特定することは無理だろう。

 

 金城哲夫における海底の神秘への深い関心はしっかりと

窺える。

 

 ダンとアンヌにノンマルトの悲しみを訴える少年真市は

死者だった。

 

 「死者の悲しみ」を忘れないという事柄が主題であるこ

とは間違いないと思われる。

 

 町田勝紀が真市の悲しみを熱演した。

 

 真市の母が亡き息子の墓標に参る大詰には胸が熱くな

る。

 

 『ウルトラマン』においてイデ隊員役で大活躍した二

瓶正也が大食漢のカマタ隊員を鮮やかに演じている。

 

 シーホース号は炎上するからカマタは殺傷されたか

重傷を負っていることが予測される。ショッキングな

設定ではある。

 

 菱見百合子後のひし美ゆり子の水着映像が映る。

貴重なエピソードである。ひし美ゆり子は「『セブ

ン』で一番好き」(『ダンとアンヌとウルトラセブ

ン』91頁)と確かめている。

 

 ダンとアンヌが恋人どうしとしてデートを海辺で楽

しんでいる。

 

 満田かずほは最終回に向けての伏線であることを

解説している。

 

 海底に暮らす先住民ノンマルトは地球人に滅ぼさ

れる。金城哲夫が物語において、命を踏みにじるこ

とへの悲しみを語ったことは確かであろう。

 

 悲痛さのドラマでありつつ全編に詩情が溢れている

ことも確かめたい。

 

 満田かずほが、海中におけるウルトラセブンとガイ

ロスの激闘をダイナミックな演出で映した。

 

 金城哲夫が悲の心を探求し、満田かずほが詩的

情趣を見せた「ノンマルトの使者」は、切なさの

ドラマとして不滅の輝きを放っている。

 

 

                     合掌

 

 

                  南無阿弥陀仏

 

                     セブン