新必殺仕置人 宣伝無用 | 俺の命はウルトラ・アイ

新必殺仕置人 宣伝無用

『新必殺仕置人』「宣伝無用」
(『新・必殺仕置人』「宣伝無用」)

テレビ映画 トーキー 54分
カラー(一部白黒)
昭和五十二年(1977年)九月二十三日放送

製作国 日本

製作言語 日本語

    ◎

 

 オープニングナレーション

 

 のさばる悪を なんとする

 天の裁きは 待ってはおれぬ

 この世の正義も あてにはならぬ

 闇に裁いて 仕置する

 南無阿弥陀仏

 

 

 浜田屋平蔵・ゆみ親子は能登から江戸へ

やってきた。輪島塗漆器を広めることを課

題にしている平蔵は血の繋がらない兄宇之

吉を尋ねる。

 

 真面目で優しい平蔵に対して兄宇之吉は

賭博で身を持ち崩した遊び人で気性も激し

い。

 

 おゆみは鉄と親しくなり、「泥棒のおじちゃ

ん」と呼ぶ。

 鉄はおゆみと遊びつつ、本来大人の男の自分

とおゆみちゃんが遊ぶことはおかしいことで、

「あと十年くらいたってこのへんがぷくっと

ふくらんできたら遊んであげる」と少し危ない

未来への願望を語る。危ない未来への言葉を語

りつつ、幼いお弓に鉄は父性愛を感じる。

 

 沈金彫の輪島塗を見た宇之吉は唐木屋市兵衛

と図り事を巡らす。

 

 巳(み)の会の仕置人伝八は白昼に平蔵を襲

って仕置する。おゆみは父の死を深く悲しむ。

 

 黒幕宇之吉は義理の弟平蔵の死を嘆くふりを

して輪島塗漆器を宣伝し売って儲ける。儲けた

い宇之吉は能登の浜田屋に向かう。

 

 鉄は平蔵殺しの下手人が伝八で黒幕が宇之吉

であることを察知していた。おていは鉄の指令

で唐木屋の財布を掏った。その金を頼み料とし

て鉄は寅の会に宇之吉仕置を頼み自ら落札する。

 

 おゆみは宇之吉のもとから逃げて鉄のもとに

身を寄せた。

 

 

 鉄とおゆみは能登に向かう。

 

 能登において宇之吉は義父浜田屋弥左エ門や

平蔵の未亡人しずを苦しめる。

 

 鉄と伝八は顔を合わせ、決闘を為す。

 

 

 

 キャスト

 

 

 藤田まこと(中村主水)

 

 

 中村嘉葎雄(巳代松)


 

 

 火野正平(正八)

 

 

 中尾ミエ(おてい)

 

 

 河原崎建三(死神)

 

 

 信欣三(浜田屋弥左エ門)

 

 

 

 有川博(宇之吉)

 伊沢一郎(唐木屋市兵衛)

 

 

 藤村富美男(元阪神タイガース)(元締虎)

 

 

 小林尚臣(浜田屋平蔵) 

 桑垣浩子(おゆみ)

 

 

 徳田実(伝八)

 志乃原良子(おしず)

 

 マキ(屋根の男)

 北村光生(吉蔵)

 

 北見唯一(菊屋主人)
 飯田覚三(店の客)
 石原須磨男(職人)
 松尾勝人(瓦版屋)
 
  

 藤沢薫(闇の俳諧師)

 原聖四郎(闇の俳諧師)

 沖時男(闇の俳諧師)

 秋山勝俊(闇の俳諧師)

 遠山欽(闇の俳諧師)

 堀北幸夫(闇の俳諧師)

 

 

 菅井きん(中村せん)

 

 

 白木万理(中村りつ)

 

 

 

 山崎努(念仏の鉄)

 

 

 スタッフ

 

 制作      山内久司(朝日放送)

         仲川利久(朝日放送)

         桜井洋三(松竹)

 

 脚本      村尾昭

 

 

 音楽      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路

 

 

 撮影      藤原三郎

 製作主任    渡辺寿男

 

 

 

 

 美術      川村鬼世志

 照明      中島利男

 録音      木村清治郎

 調音      本田文人 

 編集      園井弘一

 

 

 助監督     服部公男

 装飾      玉井憲一

 記録      野口多喜子

 進行      佐々木一彦

 特技      宍戸大全

 

 

 装置      新映美術工芸

 床山結髪    八木かつら

 衣装      松竹衣裳

 小道具     高津商会

 現像      東洋現像所

 

 

 

 殺陣      美山晋八

         布目眞爾

 題字      糸見渓南

 

 ナレーター   芥川隆行

 

 

 

 オープニング 

 ナレーション作     早坂暁

 

 

 主題歌     あかね雲

 作詞      片桐和子

 作曲      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路

 唄        川田ともこ

 東芝レコード

 

 協力     輪島塗総本家浜田屋

        輪島御陣乗太鼓保存会

 

 制作協力     京都映画株式会社

 
 監督      高坂光幸
 
 

 制作      朝日放送 

         松竹株式会社

 ◎

 藤田まこと=はぐれ亭馬之助

 

 中村賀津雄→中村嘉葎雄

 

 二瓶康一→火野正平

 

 

 中尾ミエ=中尾ミヱ

 

 河原崎建三=河原崎健三

 

 徳田実→徳田興人

 

 マキ=真木勝宏

 

 

 白木万理=松島恭子=白木マリ

 

 山崎努=山﨑努 

 

 

 山内久司=松田司

 

 村尾昭=但島栄

 

 野口多喜子=嵯峨忍

 

 平尾昌晃=平尾昌章

 

 ◎

 早坂暁はノークレジット

 ◎

 念仏の鉄 山崎努

 

 この字幕は起こしで表示される。

そのムードを想い、大きな活字で

表記してみた。

 ◎ 

 鉄対伝八

 ◎

 第三十五話「宣伝無用」は村尾昭脚本第

六作である。

 「阿呆無用」は父親が血の繋がらない娘を

強姦する物語であった。「宣伝無用」は兄が

血の繋がりのない弟を殺しその業績であった

輪島塗漆器で儲けようとするドラマである。

 

 血のつながりはないとはいえ、家族を欲望

の為に犠牲にする悪党の強欲を村尾昭は鋭く

探求する。

 

 初見の際に「伝兵衛可哀相、宇之吉悪いやっ

ちゃなあ」と実感した。

 

 小林尚臣は不実な兄に尽くして裏切られ殺さ

れる平蔵の純真を鮮やかに表した。

 

 有川博は昭和十五年(1940年)十一月二日、

鹿児島県に誕生した。

 平成二十三年(2011年)十月十六日、七十

歳で死去した。

 俳優座・劇団雲・劇団円に所属した。昭和四

十八年(1973年)のフジテレビ系時代劇『新選

組』においては沖田総司を颯爽と演じた。

 一方で宇之吉のような冷酷非情な男も鋭い芸

で明かした。

 

 短気でよく深いが悪知恵には長けているという

宇之吉の人間像を有川博はダイナミックに示した。

 

 宇之吉役が配役に影響したのかどうかは分から

ないが昭和五十四年(1979年)のNHKの時代劇

『日本巌窟王』では悪の首魁神谷十太夫を憎たら

しさいっぱいに演じた。

 平成二十二年(2010年)六月二十二日封切『F

LOWERSーフラワーズー』(小泉徳宏監督)にお

いては白黒篇で老人役を穏やかなムードで勤めた。

 

 

 桑垣浩子はおゆみの無垢を鮮やかに明かした。

 

 鉄とおゆみの心の交流に視聴者の胸は熱くな

る。かなりやばい願望を語った鉄っあんだが、お

ゆみを真剣に守る。

 

 信欣三は愛する息子を義理の息子に殺され、

下手人宇之吉に脅される父弥左エ門を重厚に

勤めた。

 

 「阿呆無用」では徳島ロケが行われ、阿波踊り

の迫力は圧巻だった。

 

 『必殺仕置人大全』によると本作「宣伝無用」

においては石川県ロケは行われず、京都や滋賀

で撮影が行われたという。

 輪島御陣乗太鼓の芸を得てドラマの緊張感は

強烈なものとなっている。兵庫県出身のわたくし

が先入観で意見を申すのは早計で、「生意気言う

な」とお叱りを受けるかもしれないが、近畿で撮

っても「能登」を石川県を石川の人々に感じて頂

けるものになっているのではなかろうか?

 

 藤田まことの妻の実家は浜田屋だそうである。

 

 巳の会の仕置人伝八を徳田実後の徳田興人が

凄み豊かに演じた。

 

 徳田実(とくだ・みのる)は昭和十年(1935

年)十月六日大阪府に誕生した。本名も徳田実で

ある。後に徳田興人(とくだ・こうじん)に改名

した。

 平成十八年(2006年)十二月十八日、七十一

歳で死去した。

 四十二歳で演じた伝八役には野獣の魅力が光

っている。

 

 ドラマでは能登を場として鉄と伝八が獣性を

剥き出しにして戦う。

 村尾昭脚本と高坂光幸演出は、芸対芸の激突

を殺し屋二人の決闘という最も盛り上がる形で

確かめ尋求し映し出した。

 

 

 山﨑努と徳田実の鉄対伝八の決闘は日本テレ

ビ映画史に輝く名場面である。

 

 

               南無阿弥陀仏