新必殺仕置人 阿呆無用 | 俺の命はウルトラ・アイ

新必殺仕置人 阿呆無用

『新必殺仕置人』「阿呆無用』」
(『新・必殺仕置人』「阿呆無用」)
テレビ映画 トーキー 54分
カラー(一部白黒)
昭和五十二年(1977年)九月二日放送

製作国 日本

製作言語 日本語

    ◎

 

 オープニングナレーション

 

 のさばる悪を なんとする

 天の裁きは 待ってはおれぬ

 この世の正義も あてにはならぬ

 闇に裁いて 仕置する

 南無阿弥陀仏



 おみつは血の繋がらない義父利助を深
く愛していた。利助は妻のぶと血の繋が
らない娘みつと阿波で暮らしている。
 
 利助は御禁制の藍密売の容疑を問われる。
これは豪商阿波屋伊兵エの犯行であった。利
助は濡衣を着せられた上殺された。
 
 おのぶは亡き利助の無実を訴えるが藍方
奉行石神伝蔵によって握り潰される。悲し
みのおのぶは病気で亡くなる。
 
 おみつは江戸にやって来た。
 
 無念の死を遂げた利助とのぶの恨みを晴
らすために寅の会に藍密売事件で父に罪を
着せた半兵エ一党を仕置したい。この夢に
おみつは全てを賭けて金を稼ぐ。
 
 おみつはおていの掏摸現場を目撃し分
け前を要求する。正八には「私買わない?」
と十両で身体を提供することも厭わなか
った。
 
 正八はおみつから事情を聴く。
 
 父母の無念を晴らそうとするおみつの一
途な気持に心を打たれた正八は寅の会に伊
兵エ一党の仕置を依頼する。
 
 伊兵エは死んだと思われた利助と語り
合う。この光景を正八が見た。江戸におい
て利助はまさという女と所帯を持って暮ら
していたのだ。
 
 おみつが利助と再会する。親子は再会を
喜ぶ。利助は罪を着せられ殺された男は、
自身と別人で、顔を潰されて殺害された
ことを告白した。
 
 仕置人達の秘密の会話をおみつは聞いて
しまった。
 
 正八はおみつの口封じ殺害を厳しく命じ
られる。
 
 おみつは最愛の義父利助の長屋を尋ねる。
父が伊兵エと組んでいるとはおみつには信じ
られない。
 
 伊兵エが現れた。おみつは驚愕する。伊
兵エはおみつに平手打ちを食らわす。美し
い彼女を見て欲望を覚えた伊兵エは強姦す
る。
 おみつは深い悲しみを覚えた。
 
 阿波屋伊兵エに利助は頼みごとをする。娘
みつとの再会に驚いたことがあったのだ。
 
  「しばらく見ねえうちに、めっきり女っぽ
   くなりやがって」
 
 血の繋がらない娘みつを見て発情した利助
は、強姦魔伊兵エに許可を乞う形でおみつを
犯す。
 
 母を苦しめた伊兵エに犯され、信じ尊敬し
ていた義父利助に騙され犯されたおみつは、
舌を噛みきって自殺する。
 
 正八はおみつを助けに行こうとするが、己
代松に制止される。
 
 伊兵エは身の危険を感じ阿波に戻る。
 
 江戸で利助は、己代松に竹鉄砲で射殺され
る。
 
 阿波踊りが盛大に行われる。
 
 伊兵エは機嫌よく踊っていた。
 
 正八と鉄も群衆に紛れて踊る。
 
 鉄と伊兵エは踊りながら顔を合わせ微笑み
あった。
 
  

 キャスト

 

 

 藤田まこと(中村主水)

 

 

 中村嘉葎雄(巳代松)


 

 

 火野正平(正八)

 

 

 中尾ミエ(おてい)

 

 

 河原崎建三(死神)

 

 
 川合伸旺(阿波屋伊兵エ)
 小島三児(利助)
 
 
 

 藤村富美男(元阪神タイガース)(元締虎)

 

 
 小坂知子(おみつ)
 木村元(石神伝蔵)
 
 マキ(屋根の男)
 唐沢民賢(源吉)
 小野朝美(おまさ)
 
 
 宮本幸子(おのぶ)
 松尾勝人(役人)
 北村光生(吉蔵)

 

 藤沢薫(闇の俳諧師)

 原聖四郎(闇の俳諧師)

 沖時男(闇の俳諧師)

 秋山勝俊(闇の俳諧師)

 遠山欽(闇の俳諧師)

 

 

 菅井きん(中村せん)

 

 

 白木万理(中村りつ)

 

 

 

 山崎努(念仏の鉄)

 

 

 スタッフ

  

 

 

 制作      山内久司(朝日放送)

         仲川利久(朝日放送)

         桜井洋三(松竹)

 

 脚本      村尾昭

 

 

 音楽      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路

 

 

 撮影      藤原三郎

 製作主任    渡辺寿男

 

 

 

 

 美術      川村鬼世志

 照明      中島利男

 録音      木村清治郎

 調音      本田文人 

 編集      園井弘一

 

 

 助監督     服部公男

 装飾      玉井憲一

 記録      野口多喜子

 進行      佐々木一彦

 特技      宍戸大全

 

 

 装置      新映美術工芸

 床山結髪    八木かつら

 衣装      松竹衣裳

 小道具     高津商会

 現像      東洋現像所

 

 

 

 殺陣      美山晋八

         布目眞爾

 題字      糸見渓南

 

 ナレーター   芥川隆行

 

 

 

 オープニング 

 ナレーション作     早坂暁

 

 

 主題歌     あかね雲

 作詞      片桐和子

 作曲      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路

 唄        川田ともこ

 東芝レコード

 

 

 制作協力     京都映画株式会社

 

 

 監督       高坂光幸

 

 

 制作      朝日放送 

         松竹株式会社

 ◎

 藤田まこと=はぐれ亭馬之助

 

 中村賀津雄→中村嘉葎雄

 

 二瓶康一→火野正平

 

 

 中尾ミエ=中尾ミヱ

 

 河原崎建三=河原崎健三

 

 

 川合伸旺=河井信旺

 

 

 小板チサ子→小坂知子→久永智子

      →仁和令子

 

 マキ=真木勝宏

 

 

 白木万理=松島恭子=白木マリ

 

 

 山崎努=山﨑努

 

 

  山内久司=松田司

 

 村尾昭=但島栄

 

 野口多喜子=嵯峨忍

 

 平尾昌晃=平尾昌章

 

 ◎

 早坂暁はノークレジット

 ◎

 念仏の鉄 山崎努

 

 この字幕は起こしで表示される。

そのムードを想い、大きな活字で

表記してみた。

 ◎ 

 微笑みの悪魔利助

 ◎

 村尾昭(むらお・あきら)は昭和八年

(1933年)五月十六日、兵庫県に誕生し

た。

 平成二十年(2008年)十一月五日に七

十五歳で死去した。

 東映において数々の任侠映画の傑作シナ

リオを書いた。凄惨で残酷な物語を熱い筆致

と緻密な構成で描いた。作品は惨たらしい

流血を打ち出すことで逆説的に命の尊さを

明かしている。現代ギャング映画『ギャング

対Gメン』は但島栄名義でシナリオを書いて

いる。

 

 『必殺仕置人大全』によると国弘威雄の

紹介で『助け人走る』から村尾昭は「必殺

シリーズ」に参加した。

 

 『新必殺仕置人』は七作品のシナリオを

担当した。いずれも凄惨・残酷で強烈な印象

を与えてくれる。惨たらしくて痛ましい。

 ドラマを見聞した視聴者は、村尾昭筆残酷

物語に出会い、ただ一度の人生の尊さと今こ

の瞬間生命を生きている事の有難さを痛感す

る。

 

 第三十二話は美しい娘みつの悲劇である。

母親想いで義父を敬愛するおみつは、母が

亡くなり義父も殺されたと思い、復讐の為に

阿波から江戸へ来て金を稼ぐ。

 

 死んだと思っていた義父利助は生きていた。

 

 だが、利助は恐るべき悪党であった。

 

 小坂知子は昭和三十三年(1958年)一月十

七日に大阪府に誕生した。本名は小坂知佐子

である。佐藤隆と結婚し佐藤知佐子となった。

 小板知佐子の芸名でデビューし後に小坂知子

・久永智子・仁和令子に改名した。おみつ役を

十九歳で勤めた。懸命に生きて裏切られ無残に

レイプされ命を絶つ。悲しみのヒロインみつを

小坂知子後に仁和令子が演じきった。

 平成三十年(2018年)七月五日、仁和令子

は六十歳で亡くなった。

 ご訃報を聞いた時にみつの美しさを思い起こ

した。

 

 小島三児(こじま・さんじ)は昭和十四年
(1939年)一月一日に東京府に誕生した。

 平成十三年(2001年)四月十六日に、六十

二歳で死去した。

 三十八歳で演じた利助役の名演は輝いてい

る。冷酷非情・極悪非道を徹している利助の

巨悪は凄い。

 余りの憎たらしさに、視聴者は本気で怒る

という感情をも超えて、恐ろしさで顔が引き

つって笑いが起きてしまう。これは面白おかし

くて笑うのではない。怖くてビビって笑うの

だ。

 おみつの美貌と肉体と色香に欲情して強姦

させて欲しいと笑顔で頼む利助の嫌らしさと

狡猾さと残忍さに、小島三児の至芸が輝いて

いる。

 悪役芸の美が極りを示している。

 

 この時期に舞台『オセロー』を上演し、小島

三児にイアーゴーを勤めて頂きたかった!

 

 阿波踊りのシーンには高坂光幸監督の重厚な

演出が輝きを示す。

 

 鉄が笑顔で伊兵エと視線を合わせ微笑みを

確かめ合って骨はずしで仕置する。

 

 悪役名優川合伸旺は『必殺仕置人』「賭けた

命のかわら版」鳴海屋、『新必殺仕置人』「元

締無用」猫の勘兵エに続き三度目の念仏の鉄

物語への出演となった。

 憎たらしさ溢れる名演は凄まじい。三度と

も鉄の骨外しで仕置されるというクライマックス

を演じた。

 

 観客・視聴者を本気で怒らせ怖がらせ震撼

せしめる。

 

 村尾昭脚本・小島三児至芸・川合伸旺名演は

このことを教えてくれている。

 

               南無阿弥陀仏