新必殺仕置人 夢想無用
『新必殺仕置人』「夢想無用」
(『新・必殺仕置人』「夢想無用」)
54分 カラー(一部白黒)
昭和五十二年(1977年)八月十九日放送
製作国 日本
製作言語 日本語
◎
オープニングナレーション
のさばる悪を なんとする
天の裁きは 待ってはおれぬ
この世の正義も あてにはならぬ
闇に裁いて 仕置する
南無阿弥陀仏
食中毒で苦しみ、あるものは急死し、ある者
は倒れ、ある者は川に飛び込んだ。
キャスト
藤田まこと(中村主水)
中村嘉葎雄(巳代松)
火野正平(正八)
河原崎建三(死神)
津田京子(おたみ)
倉石功(仁吉)
マキ(屋根の男)
藤村富美男(元阪神タイガース)(元締虎)
五味龍太郎(磯島重兵衛)
小野川公三郎(文吉)
下元年世(竜三九郎)
志摩靖彦(善兵エ)
三浦徳子(おきぬ)
玉生司郎(同心榊)
近江輝子(文吉の母)
堀北幸夫(船頭)
伊波一夫(古着屋)
北村光生(吉蔵)
藤沢薫(闇の俳諧師)
原聖四郎(闇の俳諧師)
沖時男(闇の俳諧師)
秋山勝俊(闇の俳諧師)
遠山欽(闇の俳諧師)
菅井きん(中村せん)
白木万理(中村りつ)
山崎努(念仏の鉄)
スタッフ
制作 山内久司(朝日放送)
仲川利久(朝日放送)
桜井洋三(松竹)
脚本 保利吉紀
音楽 平尾昌晃
編曲 竜崎孝路
撮影 藤原三郎
製作主任 渡辺寿男
美術 川村鬼世志
照明 中島利男
録音 木村清治郎
調音 本田文人
編集 園井弘一
助監督 服部公男
装飾 玉井憲一
記録 野口多喜子
進行 佐々木一彦
特技 宍戸大全
装置 新映美術工芸
床山結髪 八木かつら
衣装 松竹衣裳
小道具 高津商会
現像 東洋現像所
殺陣 美山晋八
布目眞爾
題字 糸見渓南
ナレーター 芥川隆行
オープニング
ナレーション作 早坂暁
主題歌 あかね雲
作詞 片桐和子
作曲 平尾昌晃
編曲 竜崎孝路
唄 川田ともこ
東芝レコード
制作協力 京都映画株式会社
監督 高坂光幸
制作 朝日放送
松竹株式会社
◎
藤田まこと=はぐれ亭馬之助
中村賀津雄→中村嘉葎雄
二瓶康一→火野正平
中尾ミエ=中尾ミヱ
河原崎建三=河原崎健三
マキ=真木勝宏
白木万理=松島恭子=白木マリ
山崎努=山﨑努
山内久司=松田司
野口多喜子=嵯峨忍
平尾昌晃=平尾昌章
◎
早坂暁はノークレジット
◎
念仏の鉄 山崎努
この字幕は起こしで表示される。
そのムードを想い、大きな活字で
表記してみた。
◎
第三十話「夢想無用」は正八メインのドラマ
である。
火野正平は昭和二十四年(1949年)五月三十
日に東京都に生まれた。
本名・旧芸名は二瓶康一(にへい・こういち)
である。
中学生・高校生時代に大阪で暮らした。火野
正平は東京・大阪の言葉を自在に語れる名優で
ある。
正八同様演者火野正平もプレイボーイと言わ
れている。
津田京子は昭和二十三年(1948年)二月十四
日に誕生した。本名は助川京子である。
声優としては、『刑事コロンボ』「野望の果て」
日本語吹替版において、上院議員候補を愛する秘書
リンダ・ジョンソン(テイシャ・スターリング)を
繊細に語った。
本作においては正八を包み込むおたみの無償の
愛を暖かい演技で現した。
平成二十二年(2010年)十一月一日、津田京子
は六十二歳で死去した。
モテモテ正ちゃんの浪漫が語られる。おたみ
の愛に目覚め真剣に所帯を持ち堅気の男として
妻と生まれてくる子供を育てようと正八は決意
する。
だが、仲間達は許さない。
鉄・己代松・主水は闇の稼業仕置人として手
を染めた正八は堅気になれないと注意する。
保利吉紀シナリオと高坂光幸はこの後、情報
屋仕置人であった正八が、殺し屋仕置人となる
道を重厚に描く。
火野正平が体当たりで正八の悲しみを演じる。
倉石功は冷酷な仁吉を鮮やかに表した。
小野川公三郎は褌姿で榊に殴られ嬲られ罪を
着せられる文吉の悲しみを探求した。
近江輝子の文吉の母は凄みが豊かだ。
出番は短いが、藤村富美男の風格と河原崎建
三の迫力にも震える。
五味龍太郎と下元年世の悪役コンビは憎た
らしさが光っている。
愛するおたみと彼女のお腹の中の子供を
殺され、正八は激怒し復讐に燃える。
匕首を持った正八が下手人と思い込んだ
鉄を襲撃するシーンに高坂光幸のアクション
演出が冴え渡る。
火野正平と中村嘉葎雄と山﨑努の渾身の
熱演に震える。
おたみとその子の下手人ではないことが
明かされた鉄が匕首を正八に渡し、「譲れ
ねえこと」であるかどうかを問う。復讐に
燃える正八は匕首を受け取る。
『必殺仕置人大全』によると保利吉紀の
脚本では正八が仁吉を刺し、主水・鉄が磯
島・竜を仕置する展開だったそうである。
高坂光幸は、正八の仁吉殺しを大詰に位
置付ける。己代松の殺しが無いドラマとも
なった。
仇討ちで仁吉を刺殺した正八は、殺し屋
仕置人となり、後戻りできない道を歩み始
めた。
ラストにおける海岸で孤独を感じる正八
を火野正平が繊細に表した。
南無阿弥陀仏