新必殺仕置人 夢想無用 | 俺の命はウルトラ・アイ

新必殺仕置人 夢想無用

『新必殺仕置人』「夢想無用」

(『新・必殺仕置人』「夢想無用」)

 テレビ映画 トーキー 

 54分  カラー(一部白黒)

 昭和五十二年(1977年)八月十九日放送

 製作国 日本

 製作言語 日本語

    ◎

 

 オープニングナレーション

 

 のさばる悪を なんとする

 天の裁きは 待ってはおれぬ

 この世の正義も あてにはならぬ

 闇に裁いて 仕置する

 南無阿弥陀仏

 

 

 

 正八と恋人おたみは海岸で逢瀬を楽しむ。
 
 おたみは舟宿清舟で働いている。板前の仁
吉はおたみに厳しい注意をする。
 
 小舟で商人達は仁吉が作った料理を食べる。
おたみは仲居として同乗している。商人達は

食中毒で苦しみ、あるものは急死し、ある者

は倒れ、ある者は川に飛び込んだ。

 
 
 南町奉行所は毒殺事件と見る。
 
 青年文吉は被害者の高利貸が借用証文を書
いたことから疑われ捕縛される。
 
 文吉の母は息子の無実を訴え、清舟主人善
兵衛に申し開きを頼むが、善兵衛の力をもって
しても奉行所は聞いてくれなかった。
 
 文吉は処刑される。
 
 真の下手人は仁吉であった。仁吉の仲間の侍
磯島重兵衛と竜九三郎は多額の借金を高利貸に
しており、金を借りた相手を抹殺する為に料理
人仁吉に毒を入れさせた。その罪を文吉に着せ
磯島・竜は上機嫌であった。
 
 寅の会では下手人仁吉を割り出し、句を虎が
書き、吉蔵が詠んだ。
 
 鉄が競り落とした。
 
 おたみは正八の子供を妊娠した。海岸で正八
はおたみの実家に帰って百姓をしたいと夢を語
った。おたみは歓喜する。
 
 絵草子屋の会議で正八は仲間の念仏の鉄・鋳
掛屋の己代松・中村主水に足を洗いたいと申し
出た。三人は厳しく断った。鉄は逃げても虎の
追求はかわせねえと指摘し、この稼業に入った
ら足を洗えねえと注意する。
 
 正八の決意は固い。
 
 「女、俺が捻り殺してやる」と鉄が述べた。
 
「何、この野郎!」と正八は激怒し鉄に挑む。
鉄は正八を殴り倒した。松が鉄を制止した。
 主水と松は正八の心が真の愛であることを
感じた。
 
 中村家で主水は「産ませてあげたい」とお
たみを想って語る。りつは主水が愛人の女を
懐妊させたと思い込み怒る。
 
 せんは「りつ!婿殿は種なしかぼちゃ。子供
が生まれる筈はありません!」と愛娘を注意す
る。
 
 主水はりつに愛人の女はいないと述べる。
 
 仁吉は町でおたみを見て声をかける。おた
みは飲みに誘われ断る。
 
 正八は仁吉の怪しさを感じており、おたみ
に近付くべきかなと相談する。「私は嫌い」
とおたみは警戒の心を告げた。
 
 仁吉は毒を盛る瞬間をおたみに見られた
かもしれないと磯島・竜に相談する。仁吉
の後をつけた正八は彼が入った賭場に入る。
磯島と竜は正八に注意する。
 
 仁吉はおたみの口封じを決めた。
 
 正八はおたみを労わる。短い時間のみ正
八が家を出た。仁吉はその隙を見逃さない。
おたみを襲い致命傷を与えた。
 己代松はおたみの悲鳴を聞き逃げる仁吉
を追うが取り逃がす。戻った正八は懸命に
おたみを看護するが、彼女は亡くなる。
 
 「俺が女捻り殺してやる」と語った鉄の
言葉を想起した正八は刃物を持って鉄を襲
う。鉄はかわす。己代松がかけつけ、正八
を諫め、仁吉が逃げるところを見たと報告
する。
 鉄は匕首を渡し、「これだけは譲れねえ
だろ」と正八にとって仁吉殺しの課題を問
う。正八は匕首を受け取る。
 「一度人を刺したら二度と足は洗えねえ」
と鉄は正八に釘を刺し意志を確認した。仁吉
仕置に正八は改めて名乗りをあげる。
 
 賭場で磯島と竜は鉄と主水に仕置される。
 
 正八は仁吉に対し匕首で迫る。
 
 己代松は正八の援護の為竹鉄砲を掲げる。
 
 仁吉と正八はもみ合う。
 
 正八の持った匕首が仁吉を刺し致命傷を
与える。仁吉は息絶えた。正八は情報屋だけ
でなく殺し屋としても仕置人となった。
 
 海岸で正八はおたみと共に用意した夫婦
茶碗を捨てた。
 

 キャスト

 

 

 藤田まこと(中村主水)

 

 

 中村嘉葎雄(巳代松)


 

 

 火野正平(正八)

 

 

 

 河原崎建三(死神)

 

 

 津田京子(おたみ)

 

 

 倉石功(仁吉)

 マキ(屋根の男)

 

 

 

 藤村富美男(元阪神タイガース)(元締虎)

 

 

 五味龍太郎(磯島重兵衛)

 小野川公三郎(文吉)

 下元年世(竜三九郎)

 

 志摩靖彦(善兵エ)

 三浦徳子(おきぬ)

 玉生司郎(同心榊)

 

 近江輝子(文吉の母)

 堀北幸夫(船頭)

 伊波一夫(古着屋)

 北村光生(吉蔵)

 

 

 

 藤沢薫(闇の俳諧師)

 原聖四郎(闇の俳諧師)

 沖時男(闇の俳諧師)

 秋山勝俊(闇の俳諧師)

 遠山欽(闇の俳諧師)

 

 

 菅井きん(中村せん)

 

 

 白木万理(中村りつ)

 

 

 山崎努(念仏の鉄)

 

 

 スタッフ

  

 

 

 制作      山内久司(朝日放送)

         仲川利久(朝日放送)

         桜井洋三(松竹)

 

 脚本      保利吉紀

 

 

 音楽      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路

 

 

 

 撮影      藤原三郎

 製作主任    渡辺寿男

 

 

 

 

 美術      川村鬼世志

 照明      中島利男

 録音      木村清治郎

 調音      本田文人 

 編集      園井弘一

 

 

 助監督     服部公男

 装飾      玉井憲一

 記録      野口多喜子

 進行      佐々木一彦

 特技      宍戸大全

 

 

 装置      新映美術工芸

 床山結髪    八木かつら

 衣装      松竹衣裳

 小道具     高津商会

 現像      東洋現像所

 

 

 

 殺陣      美山晋八

         布目眞爾

 題字      糸見渓南

 

 ナレーター   芥川隆行

 

 

 

 オープニング 

 ナレーション作     早坂暁

 

 

 主題歌     あかね雲

 作詞      片桐和子

 作曲      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路

 唄        川田ともこ

 東芝レコード

 

 

 制作協力     京都映画株式会社

 

 

 監督       高坂光幸

 

 

 制作      朝日放送 

         松竹株式会社

 ◎

 藤田まこと=はぐれ亭馬之助

 

 中村賀津雄→中村嘉葎雄

 

 二瓶康一→火野正平

 

 

 中尾ミエ=中尾ミヱ

 

 河原崎建三=河原崎健三

 

 

 マキ=真木勝宏

 

 白木万理=松島恭子=白木マリ

 

 山崎努=山﨑努 

 

 

 山内久司=松田司

 

 野口多喜子=嵯峨忍

 

 平尾昌晃=平尾昌章

 

 ◎

 早坂暁はノークレジット

 ◎

 念仏の鉄 山崎努

 

 この字幕は起こしで表示される。

そのムードを想い、大きな活字で

表記してみた。

 ◎ 

 第三十話「夢想無用」は正八メインのドラマ

である。

 火野正平は昭和二十四年(1949年)五月三十

日に東京都に生まれた。

 本名・旧芸名は二瓶康一(にへい・こういち)

である。

 中学生・高校生時代に大阪で暮らした。火野

正平は東京・大阪の言葉を自在に語れる名優で

ある。

 正八同様演者火野正平もプレイボーイと言わ

れている。

 

 

 津田京子は昭和二十三年(1948年)二月十四

日に誕生した。本名は助川京子である。

 声優としては、『刑事コロンボ』「野望の果て」

日本語吹替版において、上院議員候補を愛する秘書

リンダ・ジョンソン(テイシャ・スターリング)を

繊細に語った。

 

刑事コロンボ 野望の果て

 本作においては正八を包み込むおたみの無償の

愛を暖かい演技で現した。

 平成二十二年(2010年)十一月一日、津田京子

は六十二歳で死去した。

 

 モテモテ正ちゃんの浪漫が語られる。おたみ

の愛に目覚め真剣に所帯を持ち堅気の男として

妻と生まれてくる子供を育てようと正八は決意

する。

 

 だが、仲間達は許さない。

 

 鉄・己代松・主水は闇の稼業仕置人として手

を染めた正八は堅気になれないと注意する。

 

 保利吉紀シナリオと高坂光幸はこの後、情報

屋仕置人であった正八が、殺し屋仕置人となる

道を重厚に描く。

 

 火野正平が体当たりで正八の悲しみを演じる。

 

 倉石功は冷酷な仁吉を鮮やかに表した。

 

 小野川公三郎は褌姿で榊に殴られ嬲られ罪を

着せられる文吉の悲しみを探求した。

 

 近江輝子の文吉の母は凄みが豊かだ。

 

 出番は短いが、藤村富美男の風格と河原崎建

三の迫力にも震える。

 

 五味龍太郎と下元年世の悪役コンビは憎た

らしさが光っている。

 

 愛するおたみと彼女のお腹の中の子供を

殺され、正八は激怒し復讐に燃える。

 

 匕首を持った正八が下手人と思い込んだ

鉄を襲撃するシーンに高坂光幸のアクション

演出が冴え渡る。

 

 火野正平と中村嘉葎雄と山﨑努の渾身の

熱演に震える。

 

 おたみとその子の下手人ではないことが

明かされた鉄が匕首を正八に渡し、「譲れ

ねえこと」であるかどうかを問う。復讐に

燃える正八は匕首を受け取る。

 

 『必殺仕置人大全』によると保利吉紀の

脚本では正八が仁吉を刺し、主水・鉄が磯

島・竜を仕置する展開だったそうである。

 

 高坂光幸は、正八の仁吉殺しを大詰に位

置付ける。己代松の殺しが無いドラマとも

なった。

 

 仇討ちで仁吉を刺殺した正八は、殺し屋

仕置人となり、後戻りできない道を歩み始

めた。

 

 ラストにおける海岸で孤独を感じる正八

を火野正平が繊細に表した。

 

 

             南無阿弥陀仏